一日目夜「ってことは同衾決定だね♪」

/ドア開閉音


紗矢さや

「ただいま」


波矢はや

「おかえりなさーい」


/チャック開く音


紗矢

「……ん、荷物は問題なしね」


/チャック閉じる音


波矢

「紗矢ちゃん、部屋に帰ってきて早々バッグの確認されるの嫌なんだけどなぁ」


紗矢

「あんたに漁られてないかの確認は必須じゃない。特に下着とか……いくら洗濯済で――」


波矢

「紗矢ちゃん」


紗矢

「あ、流石のあんたでも下着には手を出さな――」


波矢

「洗濯済みのブラとかパンツにそこまで価値ないよっ、脱ぎたてじゃないと!」


紗矢

「んなアホなこと力説してんじゃない! ド変態!」


波矢

「失敬な!」


紗矢

「日頃の行いのせいでしょうが!」


波矢

「……むー」


紗矢

「いやーキッツイわ……こんな変態と相部屋まではまぁ、幼馴染として我慢できるけど、なんでベッドがひとつなのよ?」


波矢

「元々が個室だからじゃないかなぁ」


紗矢

「それは朝聞いたからいいわ……はぁ、諦めるしかないのか」


波矢

「そういえば紗矢ちゃんって予備の布団とかが無いか聞きに行ってたんだよね?」


紗矢

「……駄目だったわ……なんで合宿場なのに予備の布団が無いのよ……」


波矢

「ってことは同衾決定だね♪」


紗矢

「随分と嬉しそうね……私はあんたと本当に同じベッドで寝ることになりそうで気が滅入ってるのに」


波矢

「当たり前だよぉ、紗矢ちゃん最近じゃすっかり同衾してくれないんだもん。久しぶりだよねぇ、同衾するの」


紗矢

「同衾って言うのやめなさい。あんたが言うといかがわしいから。それに布団はないけど……ほら、そこの椅子に座って机に突っ伏して寝ればいいじゃない。むしろ私はそうするからベッド一人で使っていいわ」


波矢

「……まさか紗矢先輩は合宿中に体力の回復を妨げるどころか風邪を引きかねない寝方をするんですか?」


紗矢

「二人っきりのときに敬語使われるのムズムズするんだけど」


波矢

「朝はちゃんづけで呼ぶなって言ってたよね?」


紗矢

「違和感あるって答えたはずだけど」


波矢

「もしかして照れちゃうのかなぁ?」


紗矢

「はぁ……なんであとは寝るだけって段階になってこんな疲れるのかしら」


波矢

「そうだねぇ」


紗矢

「波矢……私相手だからって自由すぎない?」


波矢

「ところで紗矢ちゃん、聞いても良い?」


紗矢

「露骨に話題変えるわね……で、何よ? どうせ碌でもない事でしょ」


波矢

「……紗矢ちゃん、その格好で寝るの? いくら避暑地にある合宿所の夜とは言っても上下長ジャージは絶対に暑いと思うんだけど」


紗矢

「そうね暑いわ。もっと言えばうちの高校の指定ジャージって紺色だから気分的にも暑い」


波矢

「なら脱ぎなよ……わたしと同じく普通に体操服でいいよね? 半袖ハーフパンツ。だいぶ違うと思うけどなぁ」


紗矢

「あんた半袖ハーパンって言ってるけどシャツは肩が出るまで袖を捲ってるどころか、裾も胸の下で結んでお腹丸出しだし、ハーパンも限界までたくし上げてるからね……」


波矢

「だって暑いんだもん。それにこんな格好だけど見るのは紗矢ちゃんくらいだし別にいいかなぁって。だからジャージ脱ご?」


紗矢

「嫌」


波矢

「同じベッドで寝るんだよ? わたしまで暑くなりそうだし脱いでほしいなぁなんて」


紗矢

「本音は?」


波矢

「折角密着できるのに肌の触れ合う面積が少なすぎるよぉ! せめて下は脱いでください! お願いします!」


紗矢

「怖い怖い怖いっ! そんな土下座しそうな勢いで頼み込んで来るなっ」


波矢

「土下座してもいいよ!」


紗矢

「同性にジャージを脱げって土下座する幼馴染とかドン引きなんだけど!」


波矢

「でも真面目な話、ジャージは勘弁してほしいかなぁって。見てるだけで暑いから」


紗矢

「ん? ……あーあんたってばかなりの暑がりだったわね……わかったわよ、ジャージ脱げば良いんでしょ」


/衣擦れの音2回


波矢

「スタイル良いなぁ。体操服姿だと手足がスラッとしてるのよくわかるし、おっぱいも普通にあるもんねぇ」


紗矢

「胸に関してはあんたのが大きいでしょうが……って、見すぎ! 変なことしたら怒るからっ」


波矢

「変なことするなら怒られるの覚悟でってことだね♪」


紗矢

「は?」


波矢

「ごめん、本気でイラッとしてるのわかったから今の発言は撤回するね」


紗矢

「はぁ……アホなこと言ってないで寝ましょ」


波矢

「うん」


紗矢

「ベッド……私、手前が良いからあんたが壁際ね」


波矢

「逆のほうがいいと思うけどなぁ」


紗矢

「なんで私が壁側なのよ。嫌なんだけど」


波矢

「わたしが何かしても逃げられないから?」


紗矢

「わかってるじゃない、その通りよ」


波矢

「ぇ……わたしそこまで信用ないの? 結構ショックなんだけどぉ」


紗矢

「だからそのわざとらしく語尾を伸ばすのやめなさいってば。そしてどうして信用されないのかは自分の胸に手を当てて考えれば思い当たるフシはいくらでもあるでしょうに」


波矢

「そうだけどぉ……でもさ、紗矢ちゃん」


紗矢

「なによ?」


波矢

「シングルベッドをふたりで使うんだよ? 紗矢ちゃんの寝相だと……壁側にしとかないと落ちるよね?」


紗矢

「……失礼な、そんなわけないでしょうが!」


/ベッドが軋む音


波矢

「そう言いながら壁側に行く紗矢ちゃん好きだよ?」


紗矢

「うっさい」


波矢

「紗矢ちゃんって照れるとすぐ背中向けて顔を隠すからわかりやすいよねぇ」


紗矢

「……」


波矢

「わたしも寝よっと。お隣失礼しまーす」


/ベッドが軋む音


波矢

「ねえ、こっち向いてほしいなぁ」


紗矢

「……」


波矢

「紗矢ちゃーん」


紗矢

「電気消して」


波矢

「りょーかい」


/ピッとリモコンの音


紗矢

「……」


波矢

「紗矢ちゃん、後ろからおっぱい揉んでもいい?」


紗矢

「嫌」


波矢

「お尻撫でるのは?」


紗矢

「嫌」


波矢

「むー、なら何ならしてもいいの?」


紗矢

「何もしないでさっさと寝るって選択肢はないわけ?」


波矢

「同じベッドで寝てるんだよ? あると思う?」


紗矢

「さっさと寝なさい」


波矢

「じゃあ、脚を絡めるのは?」


紗矢

「………………それで黙って寝るならいいわ」


/モゾモゾ音


波矢

「えへへ、ありがとぉ」


紗矢

「っ、暑がりのくせに密着してくるな」


波矢

「紗矢ちゃんの太ももスベスベで気持ちいいよ」


紗矢

「しょっちゅう触ってるでしょうが」


波矢

「いくら触っていても飽きが来ないってことだよぉ」


紗矢

「幼馴染の女の子に言われても嬉しくないんだけど」


波矢

「お礼にわたしのおっぱいの感触楽しんでね」


紗矢

「こら、抱きついてくるなっ」


波矢

「でも紗矢ちゃんってわたしのおっぱい好きだよね」


紗矢

「……ノーコメント」


波矢

「おやすみなさい、紗矢ちゃん」


紗矢

「……ったく、おやすみ。波矢」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る