第9話:【帰路と拾った女性】①
彼女も沢を降る間には
『
彼女の足元は足首で固定する皮のサンダルだと言うのに、トレッキングシューズを履いた俺よりも危なげなく歩いて行く。明らかにこう言った所を歩き慣れている。そう思っていた時に訊ねられたので少し
「あ、あぁ、難しい事ではないよ。喫茶店を開いているんだけどその店を手伝って欲しいんだ」
(依頼ねぇ、彼女は冒険者なのかなぁ。ラノベだねぇ)
馬鹿な事を考えながら答える。
「まぁ、まずは言葉が通じないと始まらないから日本語を覚えてもらう事からになるけどね」
『日本語というのは
「いや、この国の言葉で、他の国に行けばまた違った言葉になるよ、共通言語と断定出来るものはこっちにはないかな」
人によっては英語を共通言語と捉えているかも知れないが英語を話す事の出来ない俺の認識では共通言語はない。無いったら無いのである…
「殆どのお客さんも日本語じゃないと会話が出来ないからね」
そんな会話を続けながらも車の所まで戻って来た。
◇ ◇ ◇
ワ○ンRのテールゲートを開け荷物を積み込む。
『引いている獣がいないと言う事は魔道力車…この世界の魔力は少ない筈…』
「これは自動車と言ってこの世界の乗り物の一つ、用途によって色んな種類の物があるよ」
ざっくりとした説明の後、ドアノブの操作方法を説明し彼女を助手席に座らせ、俺は運転席に乗り込み、シートベルトの装着方法を説明していく。
「上からのベルトは鎖骨の上を通過して、下のベルトは腰骨の上を巻く様に、最後に此処に差し込んでカチって音がすると完了。外す時は此処を押し込むと金具が外れる。ベルトが捻れてなければ此処まで巻き取られる様になっている」
説明を受け窮屈そうにベルトを装着する彼女を眺める。締め付けにより見た目より大きい事がわかった胸元に一瞬視線を止めてしまうが、直ぐにベルトが正しく固定されているか確認を済ませる。
「このシートベルトは万が一事故にあった際に人体の損傷を軽減するものだから、車に乗りドアを閉めたら直ぐに着用するように」
彼女が頷くのを確認したのち俺もシートベルトを着用しエンジンを始動する。
ゆっくりと未舗装の道を進み本線側へと続く道を進んでいく。時折、
彼女は助手席から見える景色、木々の間から時折除く渓流を眺めている。程なくして先程まであった突き上げが収まり正面を向いたイシェリカは息を呑む、道が継ぎ目なく舗装されている光景が目に入ったのである。
『継ぎ目の無い舗装路…』
彼女の呟きが聞こえた。これが石畳であれば彼女も此処までの反応を示す事は無かったであろう。初めて目にする継ぎ目の無い舗装路に驚きを隠せないようだ。俺にとっては当たり前の事が彼女にとっては驚くべき事であったようだ。
『こんなにも広い範囲をどうやって継ぎ目なく舗装しているのか…』
「イシェリカさんの住んでた所だと舗装は石畳だった?」
『そうですね、私の住んでいた所では大きな街の中は石畳を敷き詰めていましたが殆どの町や村、それと主要な街道は土を押し固めていました。この様に整備の行き届いた道は見た事がありません』
「この辺りは梅雨時期から秋口まではまとまった雨が降る事が多くてね、この道も最近補修されて綺麗になったんだ。もう少し
彼女に答えながらも脇道から国道へと合流する。彼女に告げたように山間の国道にありがちな程度には痛んだ路面を制限速度まで加速する。
ちらりとイシェリカの様子を窺うが速度が増した事には大して驚いた様子も見えない。驚いた表情が見えるかと思っていたのでちょっと残念。
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