第3話:【プロローグ・side:イシェリカ】②

 三日後私達は複数のパーティ、騎士と共に再度洞窟に潜った。


 討伐は分岐毎に幾つかのグループに別れ最奥を目指す方針となった。私達のパーティは魔術師『レナリス』を加え一番広い洞窟を奥へと進む。洞窟に入り三・四時間が経過した頃に最後のパーティと別れ奥へと進む。


「イシェリカ、今日は装備が違うんだね…」


 私の装備を見てシエルが問いかけてくる。


「今日はレナリスが松明を持ってくれるから…」


 その問いかけに何か含みを感じ、そう答える。今の私はショートソードより短いがナイフよりは長い細身の緩い曲線を描く剣を左右の手に持ち、腰には予備を下げている。出会ってから初めて見るスタイルだがこれまでで一番様になっている。


(これがイシェリカの本来のスタイル…この前も出し惜しみせずにいてくれればあんな事にはならなかったのに…)仄暗い感情がシエルを捉える。前回の探索時にイシェリカは松明を持っており、斥候の役割を兼任していた為、二刀を扱う事が出来ない状況ではあったのだがトレールの事も有り『全てイシェリカが悪い』そう思い込んでしまっているシエルは後ろ暗い感情を膨らませていく。


◇ ◇ ◇


 それから私達は二つの分岐を探索し最奥の開けた場所に出た。


「此処は人の手が入っている様に見えますね」


 レナリスが石柱の様に見える鍾乳石を杖で指す。


 私はこの石柱の並びに見覚えがあった。ただ、あまり良い思い出では無い。


「以前、同じ様な並びをした場所で怪しげな儀式をしていた集団がいました。ただ、詳細は分からないのですが…」


 周辺の街から多くの女性が消息を絶ったという事での調査であったのだが私達が捜索の後に辿り着いた時には女性を救う事はできず、その集団も抵抗が激しく詳細な情報を得る事が出来ないまま、私はその街で臨時加入していたパーティに調査を任せ街を離れた。こちらの支部長経由で、その後、調査の進展は無く、調査が打ち切りになった事を伝えられた。一つところに長く留まる事の出来ない私にとってはとても苦い思い出だ。


「そうですか…その時に何か陣を見ませんでしたか?」


「いえ、私達が着いた時には何も無かったと思います」


 レナリスは石柱や床、シエルは壁を調べている。私は周辺の警戒を行う。


「何も見当たらないね。レナリス、イシェリカ何か見つかった」


「此方は何も見つかりません」


 レナリスは答え、私は首を振り何も無い事を伝える。


「イシェリカ、あそこを見て」


 中央の天井を指差しシエルが促してくる。私とレナリスは天井を見上げるが此処からでは影になり何かがある様には見えない。


 私達は中央に集まりシエルの指さす所を見上げる。目を凝らして見上げてみるが私には何かがある様には見えなかった。


「シエル、何処なの、っ痛」


 首筋に痛みが走り私は意識を失った…


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拙い文章ですがお読み頂き有難うございます。

♡も頂き、大変嬉しく思います。


今後ともどうぞよろしくお願いします。

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