すみれの花よ、満開に
「すみれ、お前にはプロを目指してもらいたい。この意味がわかるな?」
「……はい、お父さま」
食事中、お父さまがふと本音をこぼした。ずっと伝える機会を待っていたかのように。あたしはステーキを細かく切りながら、お父さまの方には目を向けずに答えた。
あたしはお父さまのことを尊敬していた。馬術の世界でトップに君臨するその姿を。だから昔は、お父さまやお母さまみたいになりたいと思っていた。
「お母さんは馬場馬術で、お父さんは障害馬術で日本トップの成績を誇っている。だからお前も、そのどっちかで……あるいは両方で活躍してもらいたいと思っている」
「わかっています。この家に生まれた時から、あたしの運命は決まっているようなものですから」
「ははっ、頼もしいな。がんばれよ」
「承知致しました」
そう、この家に……両親が二人とも馬術の世界で活躍する家に生まれた時から、あたしの運命は決まっていた。あたしにも、乗馬を強要することを。
昔ならそれでよかった。心の底から楽しめていたから。馬が好きだから。両親のおかげでちやほやされるのも、昔は心地よかった。
でも、時が経つにつれて、あたしは期待に応えなきゃという思いでいっぱいになっていた。プレッシャーを感じ始めた頃も両親はなにも言わなかったが、態度や表情でそれとなく期待をかけているのはわかっていた。だって、プロ二人の一人娘だから。
「では、失礼します」
お父さまがそのことを口に出したことで、食事は喉を通らなくなってしまった。ステーキを一口か二口食べたくらい。それでもこれ以上この場にいたくなくて、あたしは席を外した。
みんな、あたしに期待をかけているのが嫌になってくる。
☆ ☆ ☆
一晩経っても、お父さまに言われたことが頭にこびりついて離れない。その記憶だけどこかに取り出せはしないかと本気で考えた。そんなことできるわけもないんだけど。
「はぁ……今日もあるのね」
休みの日はいつも乗馬クラブに来ている。乗馬用のキュロットは、ぴっちりと脚のラインがはっきりみえる。あたしはそれが中学に入った時くらいから気になり始めていた。……ちょっぴり、ほんのちょっぴり太ってきたから。
お父さまの言葉と服装とで、あたしは乗馬クラブに向かうだけで憂鬱になっていた。馬は好き。でも、それは馬とふれあうことが好きなだけで、馬に乗るとなると別だ。馬に乗れば、自然とキラキラしたあこがれの視線を送られることになる。それがあたしの気分を曇らせる。
「着きましたよ、お嬢様」
「……ありがとう」
両親は忙しく、雇われた運転手がいつもあたしの送り迎えをしてくれている。お嬢様扱いされるのはそこまで好きじゃない。そのお嬢様扱いこそが、あこがれの視線を向けられ続けることの一つの原因になっているから。でも、お嬢様なことは事実だから、それが嫌だなんて言い出せるわけもなかった。
運転手にお礼を言って、あたしはいつも通り女子更衣室に向かう。荷物を置いたり着替えたりしなくちゃならない。またあたしが一番に到着したみたいで、どこにも人気がない。いや、馬の世話のために先生は朝早くに来ているだろうから、先生が一番なんだろうけど。会員の中ではあたしが一番みたいだった。
「これじゃあ、張り切ってるみたいに思われても仕方ないわね……」
実際、「いつも早くてえらいわね」と大人会員の人に褒められたことがある。でも、えらくなんかない。いつも早いのは、親が早く行けと言ってくるから。ただそれだけなのだ。
「よっ、すみれ。おはー」
「あら、おはよう。今日は早いのね」
あたしより一つ年下の子がコンコンとノックして更衣室に入ってくる。この子はよくあたしにからんでくる。社交的な性格のようで、だれにでも分け隔てなく接している印象だ。あたしだけに特別なわけではない。べつに、特別じゃなくてかまわない。あたしに特別な人はいらない。
「じゃあ、またあとで」
着替えも終わったから、最低限のあいさつだけすませて出ていく。人の視線……今日は感じないといいな、なんて祈りながら。
☆ ☆ ☆
そんなあたしの願いなんて神様は聞き入れてくれるはずもなく、今日もたくさんの視線があたしに向かう。もうお昼が近づいてきた時間帯だから、子どもも大人も集まっている。すごい、ステキ、わたしもぼくもこんなふうになりたい、一人だけレベルが違う、才能があるってうらやましい。そんなような視線は、あたしにとってプレッシャーでしかなかった。
どこかから金木犀の香りがただよってくる。ここに金木犀の木ってあったっけ。まあ、どうでもいいか。あたしはあまり気にせず、フラワーシャワーの手綱をあらためて強く握った。そうでもしないと、あたしはフラワーシャワーの背から転がり落ちてしまうのではないかと不安になったから。気を抜くと、その視線に力を奪われそうになる。
昔はその視線を向けられても嫌な感じはしなかった。むしろ誇らしかった。わたしにも両親と同じような才能があるんだと、嬉しく思った。でも、年を経るごとに苦痛でしかなくなっていった。みんなの期待に応えなきゃとか、できて当たり前というみんなの認識がこわくて、失敗できなくなっていたから。少しでもミスをすると、みんなは過剰に反応する。どうしたどうしたとよってたかって心配そうに見つめられる。……それがどうにも嫌だった。もう、あたしのことは放っておいてほしい。
「ん……?」
またもや視線を感じる。全員がそれぞれのやることを優先しだした矢先のことだから、妙に目についた。一人の視線があたしにそそがれている。見学の子だろうか。見ない顔だ。
ミディアムヘアで少しくせがある。人当たりのよさそうな、大きくてクリクリした目とやわらかい表情。ちらっと見ただけでじっくり観察したわけじゃないから合っているかわからないけど、だいたいそんな感じだと思う。あたしは興味がなくてすぐに目をそらしたけど、その子はずっとあたしのことを見ていた。穴があくほど熱心に。そんなにじっくり見てもなにも出ないというのに。あたしが馬に乗って操っているのを見てなにが楽しいんだろう。いや、もしかしたら他に馬に乗っている人のことを見ているのかもしれないけど。どうにもその子の視線が自分に向けられている気がしてならない。自意識過剰なのかもしれないな。
自分の考えと他人の視線を振り払うようにして、あたしは先生に指示された通りに動く。障害馬術……競技場内に設置された13~15個くらいの障害物を決められた順番通りに正確に飛び越して、より早くゴールすることを競う競技。どれだけミスをせずにゴールするかというのが鍵になる。ようするに一番目に跳ぶもの、二番目に跳ぶもの……というふうに障害物の順番が決められていて、その順番通りに跳べなかった時点で失権となってしまう。落馬したり馬が二回、もしくは三回障害を跳ばなかったりしても、その時点で跳ぶ資格がなくなってしまうんだけど。障害物は高飛びに使うような形のものを使う。その横棒をバーと言って、バーを落とすと減点になる。バーだけでなく、障害物がくずれるほど壊しても同じ減点対象になる。障害物はそれほど強度がないため、馬が突進すると簡単にくずれてしまう。強度があると逆に馬がケガをしてしまう恐れがあるから、そうなっているのだ。
障害馬術は奥が深い。馬とのコンビネーションが試される。馬と息が合わないと、ミスを連発してしまうことも多い。でも、馬と息が合うと、パズルのピースがピッタリはまった時のような快感がある。だからこそ、昔は楽しかった。大会に出て何度も一位を取ってきたことがある。いつからだろう、乗るだけで苦痛になってきてしまったのは。いつからか、先生に言われた通り淡々と障害を跳んでいくだけになった。こんなあたしをまだあこがれてくれる人がいるなんて、正直バカげている。
「はぁ……っ!」
あたしはどこからわいてきたのかわからない怒りを鎮めるようにして、フラワーシャワーと一緒に空を跳んだ。全部の障害を飛び越えた時、見慣れない顔の子はもうどこかにいなくなっていた。
……と思ったら、馬に乗っているようだ。あの真っ黒な馬はムーンフラワーだろうか。つばきが引いていて、優雅に歩いている。いつもムチを入れられて無理やり走らされる馬たちは、いつものんびり歩きたいとか考えているんだろうか。走ると疲れるし、そう考えている子も多そうだ。ムーンフラワーがのんびりしたいと思っているのかは知らないけど。
「へっ……ひゃぁぁぁぁぁ!」
ムーンフラワーのことを考えていると、そのムーンフラワーが黒いたてがみをなびかせて一直線にこちらに向かってきた。明らかに初心者にはトラウマを与えるであろうスピードで。でも、それがわかってもあたしにはなにもできない。せめて乗っている子が振り落とされないよう祈ることしか……
祈る前に、ムーンフラワーはあたしの目の前で止まった。ムーンフラワーがフラワーシャワーのことを好きなのは知っているけど、まさか初心者の子を乗せて暴走するなんて。あとできつく叱っておかないと。もふもふなでなでしながら。
「あなた、大丈夫?」
ムーンフラワーの上に乗っている子は、すごく怯えきっているようでなかなか顔を上げない。急に駆け出されるとびっくりするもんね。あたしは慣れてるけど、冷や汗かくくらい肝が冷えるし。馬にはじめて乗る子なら、あたしの倍以上はこわいだろう。これでこの子が乗馬クラブに通わないことを決めたとしても、あたしには関係のないことだ。でも、せっかく乗馬クラブに来たのに、一度馬に乗っただけでやめるのはもったいないと思う。だって、馬はこんなに可愛いのに。
そんなことを考えていると、やっとその子は顔を上げた。最初は怯えた表情をしていたけど、すぐにパッと顔色が明るくなった。まるで、あたしに会えて嬉しいみたいな。いや、それこそ自意識過剰だ。でもなんでかわかんないけど、そう見えてしまったのは事実だ。
「あの、ほんとに大丈夫?」
「えっ、あっ、はい! 大丈夫ですっ!」
あたしが再び問いかけると、その子はバッと起き上がって姿勢を正した。なにをそんなに慌てているのだろう。別にあたしこわい顔とかしてないつもりなんだけどな。
「それはよかった。でもなんでこの馬がいきなりあたしのところに……ん? この子、ムーンフラワー?」
一応馬の確認をしてみる。色や模様が似ている子も多いから、もしかしたら違う子かもしれないと思って。でも、黒一色の馬体はムーンフラワーしかいない。黒い毛色の子は他にもいるけど、脚に白色があったり額や鼻になにかしらの白い模様があったりする。わかりきってきたことだが、やっぱりムーンフラワーだった。
あたしは大きなため息をつく。ムーンフラワーを引いていたつばきだってここに長くいるんだから、フラワーシャワーがいる時にはだれが乗っていようとお構いなしに飛びついてくることはわかっているだろうに。初心者の子になんて体験をさせてるんだ。つばきもこっちに向かってきているのが見えたから、あたしは怒りをぶつけずにはいられなかった。
「……つばき。なんであたしがフラワーシャワーに乗っている時にムーンフラワーを出したの。こうなることはわかるじゃない」
「仕方ねーだろ。先生にそいつを出せって言われたんだから」
つばきはだれに対しても反抗的だ。まあ、別にそれくらいなら大したことはないんだけど、今のあたしは虫の居所が悪かった。ついついそんなつばきにつられて怒りがヒートアップしてしまう。
「先生に言えばいいじゃない! 先生だってフーちゃんとムーちゃんの関係知ってるんだから!」
「んなこと言えるか! だいたい、他の馬はもう一回運動終わってんだから疲れさせるわけにいかないだろ!」
「だからって初心者の子を危険な目にあわせる方がおかしいわよ!」
「危険かどうかなんてムーンフラワーが駆け出すまでわかんねぇよ!」
つばきの言うことも一理ある。それを頭ではわかっている。でも、どうしても怒りの矛先がつばきに向いてしまう。あたしはただつばきをにらみつけるように見る。すると、おろおろとあたしとつばきの顔色をうかがうように見ていた子が、唇をふるわせながら口を開いた。
「え、えっと、あの、ちょっといいですか?」
あたしには顔を元に戻すよゆうがなくて、ついその子のこともにらみつけてしまった。その子は一瞬怯えた表情をしていたけど、勇気を振り絞るようにぎゅっと拳を握ったのがわかった。
「あの、この子……ムーンフラワー? が駆け出した理由ってなんなんですか?」
「そんなの簡単よ。あたしが乗ってるこのフラワーシャワーに好意があるから」
「えっ」
「まあ、ムーンフラワーがフラワーシャワーを姉のように慕ってるってことよ。自分たちのことを姉妹だと勘違いしてるんじゃないかしら」
実際、こういう場面は何度かあった。そのたびにこういう説明をしているから、もう慣れた。頭で考えなくても、スラスラと言葉が出てくる。
あたしの役目は終わりだという意味をこめてつばきに目配せすると、つばきがこっちに気づいて頭をかく。
「そういうことだ。まあ、悪かったよ。お前を危険な目にあわせて」
「えっ、いや、べつにいいけど……」
「じゃあ、そろそろ降りてくれ。そいつを手入れしなきゃいけないから」
つばきは素っ気なく言い放つと、初心者の子が降りたあとにムーンフラワーを引いて去っていく。ちゃんと伝わったようでよかった。
あたしもフラワーシャワーを休ませるべく降りようとすると、フラワーシャワーが興味深そうに初心者の子を見ていることに気づいた。そして、フラワーシャワーは突然その子にちょっかいを出した。
「うわっ! え、フラワーシャワー? だっけ? って、ちょっと、くすぐったいって」
フラワーシャワーは器用に鼻先だけを左右に動かして服の上からその子のことをくすぐっている。実際にくすぐろうとしているのかは、あたしにもわからないけど。でも、なついている人にしかやらないであろうその仕草は、あたしに嫉妬の念をいだかせた。
「……っ、や、やめなさい、フラワーシャワー。困ってるじゃない」
あたしは手綱を引っ張って、その子から引きはがす。なにに引っかかったのかわからないけど、初心者の子はポケットからスマホを取り出してなにやら熱心に見ている。あたしのやっていることに疑問を持ったのだろうか。まあ、どうでもいいか。
あたしはフラワーシャワーから降りて、どうしようと頭をかく。あたしのこの行動については説明できなかった。というよりも、説明したくなかった。あたしがこの子に嫉妬しているなんて、あたしも認めたくなかったから。ここは話をそらしてみるか。
「えっと、その……そうだ。名前、聞いてなかったわね。あたしはすみれよ」
「あ、わたしはさくらって言います。その……わたし、べつにそこまで困ってなかったんですけど……」
「そ、そう? で、でも、あのままされ続けるわけにもいかないでしょう?」
「あー……それはたしかに。ありがとうございました」
初心者の子……さくらは素直に頭を下げた。なんなんだこの子は。あたしはポカンと目を丸くしたあと、ふっと思わず笑ってしまった。悪い子ではなさそうだ。
「ようこそ、花園乗馬クラブへ。歓迎するわ。と言っても、あたしが代表ってわけでもないけれど」
そう挨拶したけど、もう最低限しか関わらなくなるだろうと思った。だって、あたしは人付き合いが苦手だから。それと、さくらも他の子たちと同じような視線を向けてくるから。あたしはあんまり関わりたくないと思った。
☆ ☆ ☆
……妙な子になつかれた。さくらと挨拶をかわしたあの日から、あたしの乗馬クラブでの生活が変わってしまったのかもしれない。いや、確実にそうだ。あたしの後ろをついてまわっているこのさくらがおかしくしたのだ。
さくらのことをみんなと同じだと評価したけど、それはまちがいだった。みんなよりもあたしへのあこがれが強いみたい。本当に、なんでこうなってしまったんだろう。
「よっ、すみれ。お供を連れてどこ行くんだ?」
「ただブラブラしてるだけよ。それと、この子は勝手についてきてるだけだから」
「ふーん、嫌なら断ればいいのに。それをしないってことはまんざらでもないんじゃね?」
「……断るのがめんどくさいだけよ」
さくらと同い年くらいの男の子が声をかけてくる。というか、本人が近くにいるのになにをしゃべっているんだろう。話しづらいじゃん。
あたしをからかいたかっただけなのか、男の子はすぐにどこかへ去っていく。少ししか話していないのに疲れてしまった。すると、少しのことでも気になってしまう。
「……いつものことだけど、どこまでついてくるの……」
「すみれさんのいるところになら、どこまででもついていくよ!」
「うーん、微妙に話が噛み合ってない気がするわ」
いつものことだけど、さくらはなにを考えてしゃべっているんだろうか。他の子と話すよりも疲れてしまう。でも、つめたく突き放すこともしたくない。もし泣かれでもしたら、あたしが悪いことしたみたいになりそうだから。
あ、そうだ。この際だし、聞きたかったことを聞いてみようかな。
「さくら、あなたは……動物に好かれやすいの?」
「へ? なんで?」
不意に冷たい風が厩舎の中を吹き抜ける。本格的に冬が始まろうとしているのがわかる。あたしはそれに負けじと、一歩踏み出す。
「だ、だって、さくらが水やりする時に駆け寄って来ない子はいないし、どんなに気性が荒い子だってさくらが近づくとおとなしくなるし、好かれやすいんだとしか思えないわよ!」
「きゅ、急にまくし立てられた……」
さくらは「そう言われても」と言いたげな顔をしている。それもそうだろう。あたしだって急にそんなこと聞かれても困ってしまう。
「動物に好かれてるかどうかなんて、自分じゃわからないよ。すみれさんってわたしより年上だし乗馬クラブにも長くいるって聞いたから、なんでも知ってるもんだと思ってたけど……」
……この子、あたしのこと全知全能の神様だとでも思っているのだろうか。尊敬されてあこがれられていることは知っているけど、さすがにあたしのことを神と祭り上げるのはなんか違うんじゃないかと思う。その思いが、顔にも出たような気がしないでもない。
「あなたね……あたしのこと神様かなんかだと思ってるの? なんでも知ってるなんて、大人でも無理があるわよ」
「そうなんだね……」
「え、本気で言ってたのかしら。この子ほんとにいろんな意味で大丈夫なの?」
さすがに言いすぎたかな。でも、さくらのバカさ加減にはあきれてしまった。さくらと一緒だとため息しか出ない。……いや、それは家にいても同じか。
「はぁ……まあいいわ。そういう人って、実際にいるのね」
「そういう人?」
「動物に好かれやすい人よ」
「え、わたしって好かれやすいのかな?」
さくらの問いかけに、あたしは答えなかった。もう相手にするだけの気力がない。あたしははやく帰りたいと、めずらしく思ったのだった。
☆ ☆ ☆
さくらが馬に乗っている間でだけ、日課の〝アレ〟ができる。さくらがまとわりついている時にすると、まあ……いろいろと問題があるから。さくらが来てからその時間が減ってしまった。やっぱり、「あたしの後ろをついてまわるのはやめてほしい」と言うべきだっただろうか。でも、いまさらそんなこと言えない。一度受け入れてしまったものは仕方ない。これはあたしのミスだ。
頭の中では自分を責めるも、顔は〝アレ〟への期待でゆるみきっていたと思う。すれ違う人たちに二度見されたし。でも、それも仕方ない。だって楽しみすぎるから。
「フーちゃん、来たわよ」
あたしはフラワーシャワー……フーちゃんの馬房の中へ足を踏み入れる。掃除をしにきたわけではない。乗るために出しにきたわけでもない。ではなぜあたしがここにきたかというと……
「可愛いね~! あったかーい! おにくぷにぷにで触り心地サイコー!」
フーちゃんから癒しをもらいにきていたのだ。フーちゃん以外の子にも定期的にやっているけど、なぜかフーちゃんが一番落ち着くというか癒される。自分の相棒みたいになっているからだろうか。先生がいつもフーちゃんに乗れというから最初は謎だったけど、今となってはフーちゃんじゃないとしっくりこない。
フーちゃんは生粋の暴れ馬で、最初はあたしが乗っても暴れてばかりいた。馬の性格によって違ってくるからなんとも言えないけど、あたしは暴れ馬というのは元々が繊細で臆病だから攻撃的になるんじゃないかと思っている。だから長い時間かけて一緒にいれば、その人にはなつくんじゃないかという願望に近い思いがある。あたしがいつもしつこくもふもふし続けていると、最初は嫌がっていたフーちゃんがいつの間にか折れてくれていた。あたしはそれが嬉しくて、受け入れてもらえた気がして嬉しかった。あたしが乗ってもだんだんあばれなくなってきたし、フーちゃんに認めてもらえたような感じがした。フーちゃん、あたしの相棒はあなただけよ。
「ふふふ……もふもふ……」
「……お前、よく飽きないよな」
「いいじゃない。あたしの唯一の楽しみなんだから」
突然声をかけられたのは驚いたけど、あたしのことを『お前』と呼ぶのは一人しかないからすぐにだれなのかわかった。つばきには散々この場面を見られているから、いまさらどうってことはない。ない……けど、いまだに心臓がバクバクと大きく脈打っている。他の人にこの場面を見られたら、恥ずかしさで死んでしまうかもしれない。
つばきは小四で、あたしに比べたらまだまだ子どものはずなのに、異様に大人びている。あたしがこうしてひっそりと馬とイチャイチャしているところを見ても、からかったりバラしたりしてこないし。だからこそ調子がくるうんだけど。
「で、なにか用?」
「話がはやくて助かる。ちょっとこっち来てくれ」
つばきは洗い場の方を指さしている。なんで場所を変えなきゃいけないんだろう。フーちゃんと離れたくないんだけど。でも、なんとなくつばきに従った方がいいような気がした。自分でも理由はわからないけど。
そうしてつばきのあとについていくと、妙なことに気づいた。さくらの気配がない。さくらがあたしにくっついて来ないからてっきり馬に乗っているもんだと思っていたけど、違うのかな。……いや、まて、つまりは……そういうことなのでは?
「お前さ、もう少し考えて動いた方がいいぞ。知られたくないことならよけいに」
「……あんた、まさか……知ってて……」
嫌な予感しかしない。もし、もしさくらが馬に乗っていなくて、あたしの近くにいたとしたら。あたしにわざわざ声をかけてきたつばきは、それを知っていたということになる。
「すみれが勘違いしてただけだろ。ぼくはたださくらが近くにいるのに気づかずに癒しをもらいに行ったすみれを放っておいただけだ」
「ちょっとぉ! つばきあんたなにしてくれてんのよ!」
信じられない。つまり、あたしがフーちゃんとイチャイチャしているところをさくらに見られたかもしれないのに、つばきはそれを知っていて放置したということらしい。あたしの声は知らず知らずのうちに大きくなっていく。馬がその声におどろくほどに。
少し前までイチョウやらモミジやらが生い茂っていたのに、もう木に葉っぱは一つもついていない。それほどまで気温が下がってきたというのに、あたしの体温はどんどん上昇していた。主に怒りで。
「あーっ、もう! つばきのアホ! バカ!」
怒りで我を忘れて、言葉選びが子どもっぽくなる。つばきのそばにいたくなくて、あたしは力強く足を踏み込んで厩舎に戻る。
「やってらんないわ」
「すみれさん」
「わひゃぁっ!?」
「え、あ、ごめんなさい。驚かせるつもりじゃ……」
まさかのご本人登場で、思わず奇声を発してしまった。ウワサをすればなんとやらというやつなのか。というか、声だけが聞こえて姿が見えないから、馬が話しかけてきたようにしか見えない。まあ、さくらは声が特徴的だからすぐにわかるんだけど。
「馬房からいきなり声かけられたらびっくりなんてレベルじゃないわよ……馬が話しかけてきたのかと思った」
そこまで言って、空気を変えるためにかるく咳払いする。
「ゴホン、今の悲鳴は忘れなさい。あれはあたしの悲鳴じゃないわ」
「え、でも、目の前にはすみれさんしかいないし……」
「そんなことはいいのよ! ところで、なんで話しかけてきたの?」
さくらにかっこ悪いところを見られた恥ずかしさで、つい強引に話を進めようとしてしまう。でも、さくらはあんまり気にしてなさそうだ。
「なんでって……それはつばきと話しているのが聞こえたから気になって」
「えっ、まじ?」
「まじ」
次の瞬間、あたしは膝から崩れ落ちた。なんてことだ。あたしの見られたくないところばかり見られている。いや、多分つばきとの言い争いは見ていないだろうから、聞かれたくないことを聞かれたという感じか。
「あぁぁぁぁ……聞かれてたのね。くっそ恥ずかしいわ」
「すみれさんって意外とそういう言葉遣いもするんだね」
「もうこの際さくらに言ってやろうかしら」
「へ? わたし?」
もうこれが最後の砦だ。正直聞きたくないけど、聞かずにはいられなかった。もし、フーちゃんとのイチャイチャを見られていなければ、あたしにも救いはある。
「さくら、つばきからあたしのことなんか聞いた?」
「え? どういうことを? いろいろ聞いてるけど」
「あー、そうよね。もうハッキリ言うわ。あたしが馬とイチャイチャしてるってこと言ってた?」
さくらの返答次第では、あたしはまだ生きていられる。見られていたら、恥ずかしすぎて今すぐにでも死んでしまいたい。
「うん、実際フーちゃんとイチャイチャしてるとこも見たよ。いつものすみれさんじゃないみたいで可愛かった!」
……あ、もう死のう。あたしはさくらから笑顔を向けられて、人生に絶望した。顔が赤くなったことをさくらに悟られないように、うつむいて頭を抱える。
「もう無理。いっそ死にたい。いや、穴掘って地面に埋まりたいわ。できれば奥深くまで」
「すみれさんも穴掘りするんですね」
「そういう意味じゃないわよ!」
ツッコミと見られたくないところを見られたショックで、どっと疲れてしまった。フーちゃんとのイチャイチャの時間もうばわれたし、今日は最悪だ。
たころで、さくらはムーちゃんの馬房でなにをしていたんだろう。もしかして、あたしと同じことを? いや、それはないか。
「もうどうにでもなればいいわ。イチャイチャしても、さくらにはどうせ敵わないし」
「え?」
その言葉は独り言のつもりだったけど、予想以上に大きくて聞こえてしまったようだ。首を傾げてこちらをじーっと見つめてくる。なんか、圧がすごい。
「今は話せないわ。場所はあの森……木が一番生えてるところで話しましょう。つばきがヒマそうだったらその時に一緒に来て。待ってるから」
☆ ☆ ☆
やっぱり、冬の風はつめたいんだなと改めて思い知らされる。風をさえぎってくれるものは木とか岩くらいしかないから、そう思うのも無理はないのだろうか。
それにしても、寒すぎる。身体がガクガクと意識していないのに震えてしまう。厚手のコートとか着てこればよかったな。
「はぁぁ……」
「あー! さくらちゃんたちどこ行くの? わたしも連れてってよー」
一人で白い息をはくことを楽しんでいると、人懐っこそうな明るい声が聞こえてきた。さくらちゃんたち、ということはさくらとつばきがこっちに向かってきてるってことか。その声の主を呼んだつもりはないんだけどな。
「いいじゃんいいじゃん。なに? もしかしてデートだったり?」
「そんなわけないよ。すみれさんに呼び出され」
「ヒヒーンッ!」
その子の言葉を一刀両断したのは、おそらくさくらだろう。さくらが言い終わる前に、馬の鳴き声が聞こえてきた。なんだか嫌な予感がする。馬がこうして鳴き声をあげるのは、興奮した時だけだ。エサの時間帯は特にうるさい。
いや、そんなことはどうでもいい。エサやりの時間帯でもないのに馬が鳴くということは、脱走とか暴走とかしている可能性がある。そうなると、他の馬や人を傷つける可能性も出てきてしまう。
「さくら……! つばき……!」
「止まってくれたんだ……ハナアラシ」
「ブルルッ」
あたしが森を出ようとすると、ハナアラシがさくらの前で止まっているのが見えた。さくらとはじめて出会った時のフラワーシャワーみたいに、鼻先を器用に動かしたり舌で舐めたりしている。
ハナアラシは気性が荒くてあたしでも近づくことが難しいのに、さくらの前では母親を前にした子馬みたいになっている。やっぱり、さくらには敵わないんだな。そうやって馬がみんな甘えるのはさくらなのだ。あたしの方が長くここにいて、さくらよりも断然乗馬のスキルも身についているのに、どうしてあたしじゃないんだろう。どうしてさくらなんだろう。
「もう、どうでもいいか……」
あたしはとぼとぼと森に戻った。さくらが大勢の人からチヤホヤされている声を聞きながら、さくらになりたいななんて考えていた。いや、考える間もないうちに、さくらが全力疾走でやってきた。
「すみれさん、ごめんなさい! わたし、すみれさんとの約束すっぽかしちゃって……」
「いいのよ。聞こえていたわ。ハナアラシの暴走を止めてたんでしょ? いいことしてたのね」
「あ、あの、すみれさん……」
さくらは申し訳なさそうに、あたしの顔色をうかがっている。つめたくしすぎているとわかっていたが、いつも通りに接するなんてできなかった。だって、あたしが持っていないものをさくらが持っているのだと思い知らされてしまったから。あたしがずっと望んでいて手に入れられなかったものがさくらにはあるんだと気づいたら、羨ましくて妬ましくて心が汚いものでいっぱいになってきたから。
……ところで、つばきはどこに行ったんだろう。どさくさ紛れで逃げやがったかな。ずっとあたしの背中を獣のように追いかけてきているつばきにも、あたしの気持ちや背負っているものを聞かせたかったんだけど……まあいいか。
さくらは他の人よりあたしに人一倍あこがれていて、つばきは実力のあるあたしのことを追い越そうと必死になっている。キラキラした視線が苦手なあたしにとっては、つばきと話している時だけ自然体でいられる気がした。だけど、人一倍キラキラした視線を送ってくるさくらにも、いつしか同じようなことを感じていた。あたしがさくらといて自然体でいられたのは、あたしもさくらにあこがれていたからなのだといまさら気づいた。
「あたし……あたしだって、馬に好かれたいのに……っ!」
「……へ?」
でも、だれかにあこがれの念を抱くなんて両親以外でははじめてだから、どうしていいかわからない。抑えていた感情が、一気に溢れ出してしまう。
「どうしてあなたなの。どうしてあたしじゃないの。ムーちゃんもフーちゃんもハナちゃんも! なんであなたになつくのよ! なんであたしじゃダメなのよ!」
あたしは涙を流しながら大声で叫んだ。顔をぐちゃぐちゃにして、声が枯れそうなくらい泣き叫んだ。年下の子の前で泣き叫ぶなんて恥ずかしいとは思ったけど、さくらにはあたしの恥ずかしいところばかり見られているから、もうどうってことなかった。
そんなあたしをなだめるように、さくらが口を開いた。
「……すみれさん。わたし、すみれさんにあこがれています」
「は? 急に改まってなに? 知ってたけど?」
「えへへ、だよね。最初は見た目が綺麗で障害馬術をすごく上手にこなすところにあこがれた。わたしもこんな風になりたいって」
あたしはわけもわからずポカンと口を開けるも、さくらはそのまま続ける。
「でもね、それだけじゃないの。すみれさんの落ち着いたところも、乗馬に真剣なところも、つばきと言い争ってるところも」
「ちょっと待って、最後のってなんかちが」
「全部、大好きなの。全部キラキラして見える。すみれさんがわたしのあこがれだってことは、ずっと変わらない」
真っ直ぐな瞳。ただひたすらに、さくらはあたしだけを見つめてくれる。それが嫌だったはずなのに、どうしてあたしは安心しているんだろう。
「すみれさんは、わたしの光。だから、わたしがすみれさんの影になる! ずっと輝いていてほしいから! すみれさんがなにか悩んでいるなら、それを全部わたしが引き受けるよ! わたしがすみれさんの足りない部分を持っているっていうのなら、全部あげる。だから、もう泣かないで?」
さくらの言葉は、あたしを優しく包み込んでくれる。さくらの言葉は一言一言、あたしの胸にスっと届く。あたしの涙は、いつの間にか嬉し涙になっていた。
あぁ、だから馬はみんなさくらになつくんだ。さくらの瞳や声はとてもやすらぐから。この人なら、自分のことをなにがあっても受け入れてくれると思えるから。
「わたしが、すみれさんの影に……黒に……ダークホースになるよ。それなら、すみれさんの肩の荷が少しは下りるかな?」
さくらがそう言ったあと、辺りはシンと静まり返った。本来の森の静寂につつまれる。それもそうだ。だって、あたしは声を出せないでいたから。さくらはもう言うことないという様子で、あたしのことを見つめている。
というか、ダークホースって意味をわかって言っているんだろうか。もともとは力や人気のある馬を差し置いて一番になる穴馬のことだった。そこから転じて、実力はわからないけど強いだろうと予想できる競争相手というふうになったと言われている。馬のことならなんでも勉強したから、ダークホースの意味もわかっていた。それなのに、あたしの欠点(穴)を埋めるという意味で使うだなんて、予想外だ。
「ふふっ、あははっ。あなたなにを言っているの? 意味がわからなさすぎて笑えてきちゃったわ」
本当に、この子はダークホースなのかもしれない。さくらはあたしより強くなるかもしれない。乗馬は馬とのコンビネーションが大切だから、馬に好かれるさくらはすぐにあたしに追いつくかもしれない。でも、それもいいか。競い合うライバルは、つばきくらいしかいなかったから。
あたしは立ち上がってさくらの手を取った。崩れ落ちていたヒザが、さくらのおかげで感覚を取り戻していたようだ。
「あたしの影になるって言ったけど、ほんとにいいの? あたしの悩み、重いわよ?」
「かまわないよ! どんなに重くても、みこしのように担いじゃうんだから!」
「ふふっ、なんだかよくわからないけど……頼もしく思えるわ」
あたしは「悩んでいるのがバカらしくなってくるわね」と笑い飛ばした。さくらのおかげで、大切なことを思い出せた気がする。
「まあ、悩みを肩代わりさせるなんてことはできないから……あたしの影……ダークホース……親友? うん、親友がいいわ。親友として悩み相談くらいは乗ってもらおうかしら」
「うん、いいよ……って、親友!? そんな恐れ多いよ!」
「恐れ多いって……じゃあこういうのはどう? あたし友だちいないのよ。さくらがあたしのはじめての友だちっていうのは?」
「すみれさんの……はじめての友だち……」
さくらの答えはもう決まっていたようで、すぐに太陽のような笑顔で声を弾ませた。
「うん! はじめての友だち! えへへ、すごくいい響き」
「親友は恐れ多くて友だちはオッケーなの、よくわからないわ……」
さくらについて知らないことだらけだけど、これから知っていけたらいいなと思った。友だちになれたんだし。
「おい、お前らここにいたのか。ハナアラシがまた機嫌悪くなってる。ちょっと手伝え」
突然声をかけてきたつばきは森への入口のところで立っていて、洗い場の方を指さしている。「ここにいたのか」って、最初はつばきも呼び出したんだから場所を知ってるはずだけど。まあ、つばきのことだから、空気読んで二人きりにしてくれたんだろうな。
あたしはさくらと一緒に、つばきのところへ向かった。お互い、満開の笑顔を浮かべながら。
☆ ☆ ☆
「お父さま、お話があります」
「ん? どうした?」
あたしは震える身体を抑えながら、お父さまと対峙する。あたしからなにかを物申すのははじめてかもしれない。ずっと、これがあたしの運命だと思っていた。だけど、さくらのおかげで心が軽くなった。ぐっと拳を握りしめて、ゆっくり深呼吸する。
「お父さま。あたし、お父さまたちと同じようなプロになるつもりはありません」
「……なに?」
あたしが真剣な顔でそう言うと、お父さまの顔がこわばったのがわかった。それも当然だろう。プロである自分の娘もプロになるんだという暗黙の了解みたいなものが、お父さまの中にはあっただろうから。なんで家族は、他人は他人で自分は自分という考え方ができないのだろう。家族だって、しょせんは他人の集まりなのに。
家族なんかにしばられたくない。あたしはあたしの人生を生きたい! あたしの人生はあたしのものなんだから!
「あたしは、好きなように生きます! だから……いつかお父さまを超えるプロになってみせます! 二世としてじゃなく、ちゃんと一個人で認められたいんです。その上でお父さまを超えてみせます。絶対に」
「……そうか。そういうことなら止めはしない。お前が乗馬の世界から逃げ出したいとかだったら、それはわからなかったが」
「いえ、もう逃げたいとは思いません。ダークホースもできたので」
「は?」
お父さまはすごく混乱しているようで、ポカンと口を開いている。目も点になっているし、すごくマヌケな顔だ。思わず笑いが込み上げてくるくらいに。
あたしのこの言葉はウソじゃない。逃げたいと思っていた時もあったけど、今はさくらがいてくれるからそんなことは思わない。むしろこれからのことが楽しみにすらなっている。あたしにとってはじめての友だちと過ごす時間は、とてもステキなものになるだろうという予感があったのだった。
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