43話 ルークとアイリーンの結婚式


 ―――1月30日、午後1時。鎌倉市にある教会内で、ルークとアイリーンの結婚式が行われていた。壁には濃い緑色の布がかけられている。

 紺色のタキシード姿のルークと、緑の栞の形をした髪留めで茶髪を結びピンクのウエディングドレスを着たアイリーンが教会内に入ると、布が床に落ち壁に飾られている20個の緑と白のリボンに『結婚おめでとうございます』と金色のペンで書かれていた。驚く二人に大きな拍手が上がり、スーツを着た大貴と強一がマイクを持って階段の前に立った。


 『ルークさん、アイリーンさん。俺たちは秋次郎さんや亮介さんたちと一緒に、結婚式に向け準備をしていました。

 亮介先生や美月先生たちと教会内の壁に緑と白のリボンを結んだのは、俺の案です』強一が言うと、銀色のスーツを着た秋次郎が「長さを5センチにするのに、4日かかった」と答え、亮介と鷹野が噴き出した。


 『僕たちの結婚式に来てくれてありがとう。嬉し涙が出てきた』ルークが大貴から渡されたハンカチで涙を拭きながら言うと、アイリーンも『ロンドンで同じ劇団員として7歳から一緒に過ごし続け、相思相愛の人と夫婦になれて嬉しい。ありがとうございます』と一礼し、亮介たちに満面の笑みを見せた。


 『壇の上に上がってください!』二人は壇を上がって栞をくちばしにくわえたフクロウの像の前に立ち、腕を伸ばして抱き合う。大きな歓声と拍手が上がり、胸元から足元まで隠れる白のドレスを着たリーナと青のスーツ姿の白波猛雄が顔を赤くした。


 ―――午後2時。賢と和食店の男性店員たちが、教会内で作ったカブのスープとミネストローネ60杯が入っている鍋と皿に乗せられた梅干し入りのおにぎり70個を運んできた。肉や魚を食べない参加者が多いため、用意したのだ。

 「こちらにお並びください」賢と司会を終えた大貴、強一がミネストローネとカブのスープを深皿に入れ、参加者に渡していく。

 ルークとアイリーンがカブのスープをスプーンで飲み、「おいしい」と賢たちに笑みを見せる。照れくさそうに「嬉しいです」と言う賢の肩を、男性店員二人と明人が

嬉しそうにたたいた。


 丸い机の前では清太とマオ、佑樹があんバターやチーズとソーセージ入りのパンを

秋次郎や美月、鷹野たちに渡していた。

 「うめえ」とチーズとソーセージ入りのパンをかじる鷹野に、「喉につまらせるなよ」と秋次郎と亮介が小声で言った。 


 

 2月1日。ルークとアイリーンに、娘のリルが生まれた。両目は父と同じ緑色、

髪は母と同じ茶色で色白だ。

 真から渡された黄色の冬用パーカーとブーツを着て知子の古本屋に行くと、机の上に止まって寝ているムートの頭を小さな手でなでながら父や母、直美たちに児童書を読んでもらい満面の笑みを見せている。

 

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