41話『ガンナイフ』の男たちと飲食店員のその後
渋谷のカラオケ店1階では30代の男性店員二人が緑茶とオレンジジュースを肩まである金髪の女子高校生二人に渡し、空いている個室の清掃をする。
「206室、お客様3名です‼」「はい‼」二人はペッパーをかけたチキンレッグとウーロン茶をおぼんに乗せて206室に入り、熱唱する3人に「ごゆっくりお過ごしください」と一礼して4階へと向かった。
『子ども食堂 キンモクセイ』では60代の3人が小中学生と高校生に豆腐とネギ入りのみそ汁やからあげを作りながら、困っていることを聞いていた。
「お母さんと交際相手で22歳の男に殴られてる」と号泣する9歳の女の子に水色のハンカチと日記帳を渡し、「嬉しかったことを書いてみるといいよ」と言うと嬉しそうな笑みを見せ「ありがとう」と答え帰って行った。
30代で黒い短髪、青色のダウンコートを着た一人は息子を連れ、函館市で妻の墓参りに来ていた。ラベンダーの花を墓の上に置き、息子と一緒に手を合わせる。「ママ。パパはCDショップで働きながら、DJポリスもやってる」
「カブのスープやトマトとチーズ入りピッツアも、作るようになった」涙があふれ出し、「ごめん」と言いながら8歳になった息子の健一を抱きしめる。
「パパ。今日はフォカッチャとようかんが食べたい」と言う健一の頭をなで、一緒に駅へと向かった。
20代の4人は『紫いもタルト』のライブハウス2階で本棚の埃を取り、タルトにエサをあげていた。
「俺、休日には双眼鏡を持って鳥を見に行くことが多くてさ。自宅にも鳥の写真集があるよ」紫の短髪の一人がタルトの羽を人差し指でなでると、水色と紺の羽を振って踊り始めた。
「タルト、面白い‼」3人がデジカメで動画を撮っていると、直美が2階に上がってきて「こんにちは!」と笑みを見せた。
「直美ちゃん。本棚の埃、取ったから」緑の短髪の一人が言うと「ありがとうございます!」と答え児童書を読み始めた。
15歳の時、美月に青いペンキをかけた飲食店員の3人は寺に来て、源次郎に「日本酒や焼き鳥を用意しても、なかなか客が来ないんです」と言いタオルで涙を拭う。
「8歳の息子と6歳の娘を育てなきゃいけないのに、収入がない‼」と絶叫した緑のダウンコートを着た男性が僧から渡された湯気の立つ抹茶を飲み、息を吐き出す。
「息子と娘はこの寺に来て、『お父さんの作るサケの塩焼きやラーメンはおいしい』って嬉しそうな顔で言っていたぞ」と源次郎。「聡一、絵美。ありがとう」と泣き出した男性の肩をもう一人がポンとたたき、僧がタオルを渡す。
「つらくなったら相談に来てくださいね」「ありがとうございます」3人は源次郎と僧に笑みを見せ、絵馬に『お客さんが戻りますように』と書いて鎌倉駅へと向かった。
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