40話『ガンナイフ』と教師たちの激闘


 1月22日、昼12時。温泉小の職員室では40人の教師たちが太い木やハンマーなどを持ち待機していた。

 亮介は美月と一緒に音楽室に入り、ドラムをたたきながら『ガンナイフ』の男10人に向かって熱唱、絶叫する。美月の静かで力強い熱唱に、妻と死別後7歳の息子を育てる30代の一人が号泣しながら床に座り込んだ。


 職員室前では鷹野と温水が40代の5人を床に押さえ込み、バールを机の上に置く。寺の境内で絵馬に青いペンキをかけていた一人に腰を強打され、床に倒れ込む鷹野。

「鷹野先生!」駆け寄って来たジュードに着ているコートの襟をつかまれ、コミミズクのクローディアにあごひげと靴紐を引っ張られた青ペンキ男は階段から転倒し、温泉小から出て行った。



 「鷹野‼」「亮介。10人の『ガンナイフ』が号泣してたぞ」鷹野は亮介と美月に笑みを見せ、温水から渡された湯気の立つレモネードを飲む。

 「『青ペンキ男』に腰を強打されたのか。おそがい(恐ろしい)な」と言い、亮介は貼るカイロをリュックサックから2枚出して鷹野に渡した。


  


 大阪の梅本家ではイチゴ大福5個とミカンの餡入りまんじゅう4個を女性客に渡し終えた道也が「兄ちゃん‼『ガンナイフ』が温泉小内にいるって速報が入った‼」と27歳の兄、瞬一に大声で言っている。

 「源泉中や銭湯高校にも来てるって直美ちゃんが言うてた。最悪やな」と瞬一。テレビの画面に、バールをハンマーで割りながら音楽室で熱唱する亮介と美月が映った。

 「亮介さんや!美月さんもおる‼」「カラオケ店で会った人か?」「うん」道也は兄と一緒に梅干し、青ネギ入りのさぬきうどんを食べながら速報を見続けていた。



 源泉中では40人の教師と肩まである髪を紅しょうがと青のりの色に染めている30代女性教師の大木梅子や鷹野の祖父陽介が、20~70代の5人の腰を強打する。梅子は『ガンナイフ』の男たちに恐れられる女であり、5人は冷や汗をかきながら無言になっている。


 ―――午後5時。陽介は源泉中職員室前のソファーに座り込んだ20人の肩をたたき、「スマホやSNSを使わず過ごせ」と言って20台のスマホを秋次郎に渡す。「息子や娘がいじめられないよう、まっとうに生きなな」梅子が言うと、号泣する声が響いた。

 20人はインターネットやラインなどを使い誘拐した女性たちに鎌倉警察署で会って謝罪した後、ライブハウスやカラオケ店の清掃員やソウワー(服を縫い作る人)、鎌倉市の警察官として秋次郎や明人たちと働くことになった。


 

 亮介は温泉小内で池の前を鷹野と走っていた。長靴で池に入り、氷を割っていたマオと森子が二人に手を振り、階段前に積もった雪で一緒に雪だるまを作る。校庭の新雪でドラムと槍も作り、雪だるまに持たせた。

 

 

 


 

 

 


 

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