37話 タルトの日課と寺で怒鳴る男


 わたくしは濃い水色と紺の羽を持つ、セキセイインコのタルト。温泉小音楽教師の亮介をドラムの音で起こし、直美が帰宅してから一緒にテストに向け居間で九九や漢字の暗記をしながら過ごします。

 (亮介たちのライブハウスに入るとドラムの音と熱唱に合わせ、羽を振りながら踊ります)。

 先週の金曜日には寺で源次郎さんと『駅前や改札口などで怒鳴る人』について話しました。


 「鎌倉駅の券売機3台にひびが入っていると、きっぷを買って通学している猛雄やマオたちが言っていました」「ひびを入れた男は逮捕されたが、秋次郎に暴言を吐き蹴ろうとした。中古車店の店員だったが、去年失職し自宅から出ずに過ごしていたらしい。

 怒りをこらえられずに人を殴ったりする人は『むしゃくしゃしてやった』って言うことが多いな」

 

 源次郎が言った時、「俺は仕事がないのに、お前たちは学校で過ごせるんだな‼」と境内で怒鳴り声が聞こえ、背中まである紫の髪に黄色の半袖シャツとズボン姿の30代の男が石段の前で小中学生や高校生たちに向かって木の棒を振り回し始めた。

 「夕方になるとこの寺に来て怒鳴り始めるんだ」と源次郎。和室にいた高校3年生の男子が「俺が小4の時に作ったものなんです」と机の上に置いていたゾンビのお面

を源次郎とタルトに見せてから顔につけ、男に近づく。


 「まっとうに働け~‼」目から流れる茶色や赤の線が絵の具で描かれ、黒い顔のゾンビのお面をつけた男子高校生に「あ―――!!!」と絶叫した男は源次郎に太い尾で腰を打たれ、石段の上から転がり落ちて失神した。


 お面を取った男子高校生は肩に止まったタルトの羽をなで「あごまでマスクを下げて、和室で勉強している僕や他の子にも『帰宅しろ‼』って言ってきたんです。

 帰宅すると父親の再婚相手で無職の40代女性に、ノートにタバコの吸い殻を落とされるんですよね。

 僕が小学2年生の時に一緒に暮らし始め、腕や背中をたたかれることが多かったんです」と源次郎に言い、渡されたタオルで首から流れる汗を拭く。

 

 「父親や母親、その再婚・同居相手に殴られたり蹴られたりして息子や娘が死んだという事件が多いな」「海子ちゃんの母で36歳の冬子さんも小学2年の時、52歳の父親と同居相手の30代女性から殴られていたそうです。

 刑務所で『海子に謝りたい』と号泣しながら言い続けていると秋次郎さんから聞きました。冬子さんは66歳、海子ちゃんをベルトと一緒に水の入っていない洗濯機に入れた『うろつき男』は75歳まで刑務所から出られないそうです」

 男子高校生は「僕の父親とその再婚相手は30匹の女王バチに腕を刺され、下痢と背中の激痛で絶叫しています」とため息を吐き、小学4年の女の子と一緒にイチゴ大福をかじった。

 

 

 


 

 

 

 

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