35話 源次郎と『ガンナイフ』の男たちの過去
午後4時に美月が『リート新聞』を持って寺に来ると、和室にいた小中学生や高校生たちが「歌姫‼」と嬉しそうな顔を見せ手を振って来た。
落ち葉をビニール袋に入れていた僧の男性に『リート新聞』を渡し終えると、賽銭箱の上にいた源次郎が「美月。俺と『ガンナイフ』の男たちの過去について話そう」と言い石段の上に置いた紺色のパイプ椅子の上に首を乗せた。美月は源次郎と向かい合い、木の椅子に座っている。
「俺の3年前の飼い主は、東京の6階建てマンションの一室で20匹のヘビと暮らす金髪に紫色の爪で20歳の女だった。ヘビを首に巻いてはスマートフォンで撮った写真をSNSに送り、夜11時まで日本酒を飲んでいた。
俺は同じ家で暮らしていた無毒で茶色い体と黒い目を持つオスのヘビ、ドーンと一緒に女のマンションを出た後『ビーヘイバー』でも使われた砂浜でビニール袋を持ってジュースやビールの缶、雑誌などのゴミ拾いをした後にブルーシートの中で暴力団『ガンナイフ』についての新聞記事を読み過ごした。
大学受験に失敗し自宅から出ることなく過ごし続けている者や、連れ合いを病気で亡くした経験のある20~80代までの男たちがメンバーになっていたんだ。
鷹野の父方の祖父陽介もその一人で56歳の時に6歳上の妻を亡くし、大阪の一軒家で孫の陽二を育てたが、他者を傷つける人には激怒していた。
俺とドーンは温泉小の校門前で盾や緑色の網を持った鎌倉警察署の男たちに捕まりそうになったが、小学5年生だった男子と肩までの黒髪で父親と一緒に暮らす14歳の女の子が『この2匹は温泉小の校門前で、ハンマーを持った『ガンナイフ』の男から僕を守ってくれました!』
『砂浜に置かれているビールやジュースの缶、ラムネのビンなどをビニール袋に入れて収集車の男性に渡しています‼』と絶叫し、網を持った警察官たちに向かって頭を下げたんだ。
警察官たちは砂浜にゴミが落ちていないことに驚いていたが、俺とドーンに警察署で感謝状を渡した。寺で僧の男性や小中学生、高校生たちと暮らすようになってからも、砂浜でのゴミ拾いは続けている。
14歳だった女の子―――本間麗子は紫の短髪になり、銭湯高校マラソン部で秋花や強一たちと一緒に走っている。11歳だった黒髪の男子は小町通りの古本屋や『便箋と封筒の店 高見』にも来ている佑樹だ」
源次郎が話し終えると、座布団の上にいた茶色く長い体と尾、黒い目を持つオスのヘビドーンが石段の上で足踏みをする美月にカイロを渡す。
「ありがとう」ドーンは恥ずかしそうに美月と源次郎を見てから「ビニール袋に6枚入れます。お持ち帰りください」と小声で言った。美月はカイロ入りのビニール袋を片手に持ち、亮介が来るのを待っていた。
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