32話『リート新聞』と感想を書くメモ用紙
「美月。『リート新聞』にメモ用紙がついてるぞ」温泉小の職員室でサケのおにぎりを食べ終えた亮介が妻に言うと、「読んでくれた人に感想を書いてもらうの」と答えメモ用紙の『リート新聞 感想・紹介してほしい曲のタイトルと歌手記入欄』を亮介に見せる。
「かっこに入りきらないくらい長い文を書く人もいて、水色や黄色、緑のメモ用紙が10枚ついてたこともある」美月は去年5月の『リート新聞』についていた緑色のメモ用紙を机の上に置いた。
いきものがかりの曲『熱情のスペクトラム』について『小4の時に同級生10人から『アメリカに帰れ‼』と大声で笑いながら言われ続け、教室で一人で過ごしていた時に聴き号泣。
いじめを受けつらい気持ちになっている小中学生と『子ども食堂 キンモクセイ』で話した後、一緒に聴いている。 源泉中マラソン部、15歳男子』と書かれていた。
「愛読者は何人いるんだ?」「300人。温泉小や源泉中、銭湯高校や東京、横浜にある他の小中学校や高校にも貼りに行くから、キャスィーや他の女性教師たちと温泉小の職員室に泊まって印刷することもある。
陽介さんが『演歌を入れてほしい』って言ってたから、賢と一緒に『紫いもタルト』のライブハウスに置いてあるCD聴こうかな」と美月。
驚く亮介に、「ライブハウスの2階から、賢がCDプレイヤーに入れている演歌が流れてくるよ。父親の倉田陽さんが演歌好きって言ってた」と言い、職員室で使っている長机の棚から黄色と緑、水色のメモ用紙を出してクリップで留める。
源泉中のマラソン部で秋花や他の女子5人と校門の周りを走り終えた180センチでチョコレート色の目を持つ男子中学生が、美月と亮介に向かって手を振りながら笑みを見せた。
「彼は『リート新聞』を自宅でもお父さんや11歳の弟と愛読していて、源泉中での漢字テスト後に感想を書いてくれたの。
お母さんが日本のアニメやマンガ、小説好きで自宅の棚には300冊の小説とマンガ、100本のDVDがあるんだって」
「銭湯高校で行われるマラソン大会にも、強一や鷹野たちと出るらしい」亮介は
メモ用紙を見ながら妻に笑みを見せた。
カウンセリングルームでジルと一緒に再試験を終えた小学4年と5年、6年の男の子の話を聞き終えた温水が「雨降って来たぞ。泉二郎や父さんと自宅で作ってるジャガイモが流されて泥がつく」と二人に言い、ため息をついた。
亮介と美月は傘立てに入れていた紺と赤の傘を持ち、校門を出た。鎌倉駅に着くと、『横須賀線、雨で10分の遅れが出ています』と駅員のアナウンスが流れている。
二人はそれぞれ水筒に入れていた湯気の立つ緑茶をフタに入れて飲み、足踏みをしながら15時15分に駅に来た横須賀線の電車に乗って帰宅した。
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