26話 明人とハサミを持ち笑う女子高校生
12月26日、昼12時。亮介や美月たちと一緒にライブの案を出し終えた明人が『紫いもタルト』のライブハウスから出てくると、背中まで伸ばした茶髪をラムネのビンの形の髪留めで結んだ銭湯高校1年で15歳の白波空音がハサミを持って後ろから走って来た。
「うわぁ―――‼」と冷や汗をかきながら絶叫する明人。空音が大声で笑いながらハサミを彼の頭に当てようとした時、秋次郎と一緒に駅の見回りを終えたヘビの源次郎が尾で空音を地面にたたきつけた。
「明人‼」絶叫を聞いた亮介や賢たちが駆け寄ってくる。空音の兄でレスリング経験者、黒い短髪の白波猛雄が「空音‼」と片足から出血しスニーカーが脱げた妹に怒鳴り、包帯を巻き終えてから5人に向かって頭を下げた。
「空音は13歳の時、他校の女子と付き合っていた同級生の男子を自分の彼氏にしたことがあり、彼女からは今も憎まれています」
「空音。『好きな人と付き合えなかった』後に殺人事件が起こることもある」賢が怒りを込めた声で言うと、空音は冷や汗をかきながら持っていたハサミを地面に置いて地面に座り「ごめんなさい」と明人に頭を下げた。
「みそ汁と漬け物にする大根、10本持たせる」猛雄は『子ども食堂 キンモクセイ』にも来る農家の男性から『おいしく食べて』と渡された太い大根を入れた水色の風呂敷を妹に持たせ、「落とすなよ」と肩をたたきながら言った。
「クリスマスライブ、空音と見に行きました!亮介さんの早着替えと美月さんとの熱唱、勇樹さんがスケッチブックに描いたムートの絵を見た後、佑樹とマオたち野球部が踊ってました」
「ライブ後、ドラムとマイクを一緒にライブハウスの倉庫まで持って行ってくれてたな。ありがとう」と賢が言い、猛雄に笑みを見せた。
「レスリングは何歳からやってるの?」真に聞かれ、「8歳から10年間です」と答える。
「横須賀線の電車内で、横浜の高校に通う16歳のウクライナ人の肩を触ろうとした男性を転倒させ、床に押さえ込んで秋次郎さんに渡しましたね。彼女から『ありがとう』って言われた後ほおにキスされ、ラップ部とレスリング部の男子20人が歓喜の絶叫をしてました」
猛雄が話し終えると、源次郎が「凶器にするなよ」と言いながら地面に置かれていたハサミを尾で空音に渡した。
「空音。ロンドンに行ってみないか?」猛雄は駅に置かれていた小冊子をリュックサックから出し、空音に見せる。
「ビッグベンや映画館、抹茶カフェに行ったり、広場で熱唱もできる」「抹茶カフェで、パンケーキにイチゴとブルーベリー乗せて食べたい」と空音が答えると、「2023年の2月に佑樹と行く」と言って亮介たちに手を振り、冬用ブーツや日記帳などを買いに駅前の百貨店6階へ向かった。
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