24話 明人のライブハウス紹介と、賢たちとの案出し


 ドラマーで児童書も書いている俺、明人が『紫いもタルト』のライブハウスについて紹介するぞ。

 1階では勇樹が太い筆と紫、黄色と黒の色鉛筆で描いた、にっこり笑う紫いもタルトの絵を見ることができる。倉庫にはドラムやギターなどの楽器が置いてあり、ボルダリングもできるようになっている。(亮介はライブ後に毎日1時間やり続け、腕力を上げている)。

 

 2階は台所と休憩所で、亮介と直美の愛読書20冊が棚に入っている。賢が使っていた勉強机もあり、直美は学校で渡されるプリント30枚のかっこを15分で埋めてしまう。


 3階には風呂と更衣室があり、浴室にはミカンの香りのシャンプーが置かれている。浴室の壁や床を洗うのは俺と亮介、賢だ。

 更衣室には真が縫った40着のコートやジャケットが置かれていて、ライブでは5着をそれぞれ着てから熱唱する。

 階段を上がると、屋上から小町通りが見える。まんじゅう屋やたい焼き屋、アイスクリーム屋の写真をスマートフォンで撮り『子ども食堂 キンモクセイ』で児童書を書く時に使う。



 


 ―――12月22日、午後5時。ライブハウス1階では亮介たち5人がクリスマスライブの案を出している。「亮介。美奈は映画館も苦手と博人から聞いた。絶叫の少ない曲を歌ったほうがいい」

 「2曲か。歌う時に俺の絶叫が入る曲が多いしな」亮介が小皿に入った塩せんべいとイチゴ大福を食べ終え、緑茶を飲み言った。

 

 「勇樹。ライブに来る20人に見せるスケッチは描き終えたか?」「はい。古本屋で机に止まっているムートを見ながら描いてきました」勇樹は13歳から使い続けているスケッチブックの下書きを4人に見せる。くちばしを開けて笑ったような顔を見せるムートが鉛筆で描かれていた。


 「使う色鉛筆と筆は決めてるのか?」亮介に聞かれ、「黒、茶色、白、黄色と太い2本です」と答える。

 「亮介さんが着るコートも、縫って来たんです‼」真が、ビニール袋から胸元に黒い革表紙の本が描かれた銀と青のコートを出して机の上に置きながら言う。

 「俺が着るのか」と亮介。「2曲を歌い終わって、オレンジ色のフリースからこのコートへと早着替えし20人を驚かせるんです‼」「何分くらいで?」明人に聞かれ、「1分です!」と答える真。

 「……賢と一緒に、早着替えを4分やってくる」亮介はコートを持って3階の更衣室に入り、20回オレンジ色のフリースと銀と青のコートを脱ぎ着した。



 早着替えを終えた亮介が更衣室から出てくると、美月が実家から送られたカブとホウレンソウを入れたスープと、賢が作ったニンジンとジャガイモ入りの豚汁を深皿に入れていた。

 「ママと一緒に明日のライブ、見に行くね」「ああ」亮介は娘の髪をなでて笑みを見せ、スープと豚汁を食べ始めた。


 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る