22話『子ども食堂 キンモクセイ』と手作りのベスト
温泉小で6時間目の漢字テストと音楽室での熱唱を終えた美奈と博人は『子ども食堂 キンモクセイ』に入る。入り口にはキンモクセイの花が置かれ、賢や強一たちが机を拭き豚汁を作っていた。おにぎりやサンマの塩焼きなどが多いが、ハンバーグやカレーなども出る。
「こんにちは」「美奈、博人。小皿と塗り箸を出してくれ」美奈と博人は強一と一緒にサンマの絵が描かれた青い小皿と紺の塗り箸を出して、賢が拭いた机の上に置く。
青のブラウスと緑のワイシャツの上に『Meal』と書かれたエプロンを着けたジルとジュードが店内に入って来て、サンマの塩焼きとカブのスープを作り始めた。
亮介は紙袋に入っているジャガイモ40個の皮と芽を取り、フライパンで焼いて塩を振りチーズをかける。
「受験勉強が嫌なんですよね。文の要約が、時間内に書ききれないんです」豚汁を食べながら美奈が言う。
「俺も高校の時、要約の問題で5回再試験になったな。文を短く書くのが苦手なんだ」と明人が笑い、賢が「『紫いもタルト』のライブで、明人は15分かけて渡される色紙やタオルに文を書く。
ライブに来た31歳の男性が渡したタオルに、『熱唱』の『唱』を『商』と書いたことがあって慌てた。男性はそのタオルを今も持ってるらしい」とため息をついた。
海子と秋花の弟で小6の勇人、『ビーヘイバー』で出会った紺色の髪の5人の男子大学生が店内に入って椅子に座り、サンマの塩焼きを食べ始める。
「海子ちゃん。こんにちは」強一が声をかけると、海子は「……こんにちは」と小声で言った。『うろつき男』に蹴られ続けていたので、男を見ると『怖い』という気持ちになってしまう。(ジュードや滝温水、泉二郎とは話せる)。
養父母の北見夫妻と暮らし始めて2週間、温泉小のカウンセリングルームでジルや温水と一緒に児童書を読んだり九九の暗記をしながら過ごすことが多い。
真がリュックサックからセキセイインコのタルトやマメルリハのグリーンティーが
胸元に描かれた水色や緑、赤のベスト20着を出し、海子や勇人たちに渡す。
「着てみて」海子たちはベストを着て「かわいい」「ありがとうございます‼」と
満面の笑みを見せる。
「海子ちゃんはどれがいい?」佑樹に聞かれ、海子が青色のベストを指さすと
佑樹がボタンを留めてくれた。
「ありがとう」と恥ずかしそうに言った海子の肩に手を置き、「青色が好きなんだ」と笑みを見せる。勇人は赤とベージュ、美奈と博人は緑色のベストを持ち帰った。
「海子は勇人とも話せるようになる」「ああ」賢と明人、亮介はキンモクセイの花4本を青のポットに入れて入り口にある長机に置き、店内で英会話をしている強一と美奈に手を振って『紫いもタルト』のライブハウスへと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます