20話 『ちゃん』『くん』づけ、あだ名禁止といじめ
11月30日。長机やホワイトボードが置かれ、温泉小や源泉中よりも広い銭湯高校の会議室には亮介やジル、キャスィーなど3つの学校の教師20人が集まっていた。
室内に入ってきた静人が『小学校での『ちゃん』『くん』づけ禁止』とホワイトボードに書き、「賛成、反対の意見とその理由を述べてください」と言った。
鷹野が手を上げ「俺は反対。SNSやゲーム内で知り合った人に、連れ去られないようにすることのほうが大事だろ。
同級生や後輩を『ちゃん』や『くん』、あだ名で呼んできた小中学生や高校生が困ってる」と言うと、300万円の首飾りをつけた源泉中の40代女性教師が激高し「わたくしは賛成です!『さん』づけで呼ばせるようにしてから、いじめは起きていません‼」と絶叫した。
ジュードがリュックサックからデジカメを出し、小学4年で10歳の女の子が他の小学校の男子5人に蹴られている動画を見せた。
「彼女は鎌倉駅で5人を『さん』づけで呼んだことで蹴られ、腕に重傷を負いました。動画を見た20人の小学生が登校拒否になり、『子ども食堂 キンモクセイ』や知子さんの古本屋で過ごしています」とジュード。
「『同級生を『ちゃん』や『くん』づけで呼びたい』って彼女が言うと、あんたは激高し「『さん』づけで呼びなさい‼」と怒鳴り自宅の壁を蹴る。
彼女は『お母さんなんて大嫌い‼』って職員室で泣きながら俺に言ってきた」と鷹野がため息をついた。
「いじめは起きていません!!!」「お静かに」静人の低く怒りのこもった声に、女性教師は黙り込む。
静人が青と黄色の付箋を渡し、「ホワイトボードに貼ってください」と呼びかける。青は賛成、黄色は反対だ。
「青1、黄色19。小学校で『ちゃん』『くん』づけで呼んでもいいということを朝の会や授業後に小学生たちに話します。いいですね?」
亮介たちが「はい」と答えた直後、女性教師が入り口の椅子を蹴り倒し、廊下まで響く音を立てて会議室から出て行った。
―――6時間目の授業後。「昨日の会議で、同級生への『さん』づけやあだ名の禁止に反対意見が多く出た。『ちゃん』や『くん』をつけて相手を呼んでいい。
あだ名は相手に呼ばれたいものを聞いて意見を出し合い決めること」5年1組の教室で亮介が黒板に黄色と赤のチョークで書きながら言うと、小学生たちが抱き合って「やったー‼」「フー‼」と歓喜し泣き出した。
「先生、ありがとうございます」小学4年生の女の子が温泉小の職員室前で亮介や鷹野、静人に満面の笑みを見せる。
「源泉中や銭湯高校の子たちからも、感謝の手紙が何通も届いてる」鷹野が『親しい子と『まーちゃん』『ドラマー』と呼び合っています』とボールペンで書かれた水色の便箋を読み、笑みを見せた。
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