19話 小町通りマラソンとキャスィーの実況
11月15日、午前11時。小町通りには赤や黒など番号入りの10色のタスキを肩にかけた秋花や強一、泉二郎など10人の参加者と亮介や大貴たちDJポリスが集まっていた。
長机の上にはゼリー飲料やお茶の入ったペットボトルなどが置かれ、午後1時までに鎌倉駅に到着した1位から3位までの3人にメダルが渡される。
『みなさん、おはようございます。小町通りマラソンの実況は源泉中の国語・音楽教師の私、キャスィー・ブルーフラワーです。
参加者はタスキ番号31番で赤の清水秋花さん、27番で緑の高見強一くん、42番黄色の篠崎信也くんと55番黒の滝泉二郎先生。
33番紺でアメリカ出身のアーノルド・ラブズジャパンさん、白10番で温泉小4年野球部の伊勢崎マオくん、5年で青11番の佐原博人くん、紫16番で銭湯高校ラップ音楽部の白波空音さん、オレンジ12番で温泉小6年の佐々木アリアさんと銀42番でたい焼き屋の鯛太郎さんの10人です』
『42番』と黒い糸で書かれた黄色のタスキを肩にかけた信也は「(金メダルを弟の陽に見せる)」と心の中で言い、息を吐く。パン、という音が響き、10人が走り始めた。
『赤いタスキ、秋花さんが強一くんに抜かれた‼アイスクリーム屋を通り過ぎ、鎌倉駅へと向かっています‼』
亮介や大貴、秋次郎たちが長机に清涼飲料水のペットボトルや保冷剤入りのタオルを置き終え10人に手を振る。
「(強一さんには負けられない!)」信也は大貴から渡されたゼリー飲料を持ち、保冷剤入りのタオルで顔やあごからしたたり落ちる汗を拭き走る。
銀色のタスキをかけた鯛太郎が後ろから来て抜かれそうになったが、「信也!走り切れー!」「お兄ちゃん‼」と赤い羽を持ち一緒に暮らすオスのインコ、トウガラシと温泉小テニス部で11歳の異父弟、陽の絶叫でまんじゅう屋の前を疾走する。
『信也くん、アイスクリーム屋を通り過ぎ先頭に出ました‼後ろからは泉二郎先生と空音さん、アーノルドさんが来ています‼』キャスィーが、音楽の授業で室内や廊下まで響く声で絶叫する。
「ビール‼」「汗だくだ!」泉二郎とマオがお茶を飲んで雑貨屋の前を通り、地面に座り込みそうになりながら鎌倉駅へと向かった。
―――午後1時。信也は汗を吸った黄色いタスキを秋次郎に渡し、金メダルを首にかけてもらう。「1位、篠崎信也、2時間15分!」陽が駆け寄ってきて、兄に嬉しそうな笑みを見せる。
「2位、高見強一、2時間20分!」強一は銀メダルを首にかけてもらった後、「やり切った」と小声で言い地面に倒れ込んだ。
「3位、アーノルド・ラブズジャパン、2時間40分!」アーノルドはメダルを娘の梅と妻の聡美に見せ抱き合う。
10人への大きな拍手は、20分間続いた。
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