14話 ひなたとひかりの謝罪
午後3時。温泉小の教室に、ひなたとひかりが入って来た。ひなたは茶色と白のブラウスに黒タイツとスニーカー、ひかりは濃紺の長袖シャツに黒いジーンズとローファーだ。父親や母親と一緒にハンマーやバールなどで温泉小の窓を割り、二人の机に赤いペンキをつけた20人の小学生もいる。
「入院している間桃や直美、東京の小学校で同級生だった20人の腕を椅子でたたき泣かせたことを考え室内で涙が出ていました。
私とひかりの実家は寿司屋さんで、マグロの握りやアワビ、炙りサーモンなどを食べに毎日40人のお客さんが来ていました。今年の6月に閉まってお父さんが貯めていてくれた100万円も使い切り、彫刻刀や鉛筆、靴なども買えなくなりました。
学校の授業も少なくなり、自宅で賢人や夕陽にクッションや筆箱などを投げて泣かせ、お母さんたちにも『家で過ごすのなんて嫌!』と怒鳴っていました。
温泉小の3年1組や同級生だったみんなに嫌な気持ちをさせたこと、後悔しています。ごめんなさい」ひなたとひかりは直美や桃、20人の男女に頭を下げた。
ひなたの弟賢人とひかりの妹夕陽も教室に入って来て、「お姉ちゃんに居間で怒鳴られた時、怖かった」と泣き出す。
「賢人、夕陽。ごめん」ひなたとひかりは泣きながら弟や妹と抱き合い、紺と白の半袖シャツを着た短髪の男子から渡された2枚のタオルで顔を拭く。
インコのタルトとメンフクロウのムートを両肩に乗せた鷹野が教室に入って来て、ムートが足に持った黄色いチョークで『いじめについて』と黒板に書く。
「タルトとムート⁉」驚く小学生たちに「わたくしは寺でヘビの源次郎さんと一緒に、スマートフォンやパソコンを使ったいじめについて話しているんです。暴言で、命を絶ってしまう子もいます。
わたくしの前の飼い主で北海道に住んでいた小5の男子も、3年前に3人の同級生から『川にでも落ちろよ』『階段から飛び降りてみろ』と書いたラインを送られ続け『ごめんタルト。俺、もう生きたくない』とわたくしに言い、家族旅行で行った釧路湿原で死んだんです。
男子の両親や妹と別れて田原家に来てから4週間、わたくしは何も考えることができずにいました。
3年前、帰宅すると居間で漢字や九九の勉強、英単語の暗記などを毎日一緒にしていた子が『つらい』と言えずに死んでしまった。
音楽好きな子で、自宅の2階にあったカラオケ部屋で洋画や日本のアニメの曲をわたくしと一緒に熱唱していました。当時小2だった妹は10歳になり、ドラマーとして活動しながら読書好きな同級生の男子と付き合っています」
小学生たちは泣きながら鷹野から渡されたベーグルを食べ終え、タルトのほおや羽をなでた。40枚のタオルは涙でぐしょ濡れになっていた。
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