10話 緑色のリボンと悪意の広がり


 タルトは『紫いもタルト』のライブハウス屋上の階段に座っている直人の肩をくちばしでつつく。

 「俺が7歳の時、両親があおり運転を起こして当時14歳だった女の子の腕を骨折させ、今も刑務所にいる」と言って直人はため息をつく。

 タルトは直人の肩に止まり「1年後、あなたは21歳のイギリス人女性と相思相愛!」と言って緑色のリボンを渡す。直人は満面の笑みを見せ、「ありがとう」とタルトの羽をなでてからリボンをズボンのポケットに入れ、鎌倉駅西口にある本屋へと向かった。



 ―――午後3時。タルトは境内に入って木の椅子に止まり、太い尾と体、青色の両目を持ち賽銭箱の上に座っている無毒のヘビ、源次郎と一緒にSNSを使ったいじめや事件について話していた。


 「スマートフォンを持ち、教師に気づかれないよういじめをする子が増えているんですね」「ああ。小学生が授業用の大型スマートフォンで起こしたいじめに、中学生や高校生が誘拐されたり死んだ事件も多い。ナイフやペットボトルを凶器にする奴もな」

 


 「SNSやインターネットに送られた暴言は、広がり消えなくなる」タルトが和室で僧の男性と一緒にいちご大福を食べる小中学生と高校生を見ながら小声で言う。

 「3年1組の市原美子、木原森子、梅田聡子、青木坂子は同級生の海子を大声で笑いながら蹴っている。4人は大阪の小学校でもいじめをし、『梅田の最悪な小学生たち』と呼ばれる。

 銭湯高校マラソン部で17歳の本間麗子も『小6の時に4人から蹴られ、マラソン部に入るまで人と会うのを怖く感じていた』と俺に言った」

 

 『ビーヘイバー』で黒柴のようかんに気持ちを吐露した佑樹が、まな板の上に置いたニンジンやベーコンを切ってオムライスとカレーライスを作っている。

 「佑樹は父親や10歳の妹と別居し、源泉中の漢字暗記大会に参加しながら『子ども食堂 キンモクセイ』で賢や亮介と一緒にカブのスープやしらすご飯なども作っている。賢も驚くくらい、料理が上手だ」

 満面の笑みを浮かべる佑樹を見たタルトは源次郎と僧の男性に一礼し、田原家へと戻った。



 「おかえりタルト」直美と美月が小皿にナイフで切ったイチゴのショートケーキを乗せ、「10月10日、誕生日おめでとう」と亮介に笑みを見せる。「ありがとう。俺は今日で29。直美も12月25日で9歳だ」

 「ケーキにドラムと『紫いもタルト』の5人が描かれてる!」「ははは」亮介はスマートフォンで写真を撮ってから、ショートケーキを食べ終えた。


 

 「ロンドンで時計職人として働いてみないか?ルークさんの祖父から、『店内に置かれている時計の修理をしてほしい』と電話がかかってきた」

 本屋で会った秋次郎に、直人は「ありがとうございます‼」と言いロンドンに向かった。




 


 


 

 

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