9話 鎌倉市DJポリスとシロワニ高校の男女
10月11日、午後3時。鎌倉警察署には胸元に水色の手ぬぐいが描かれたベージュの制服を着た鎌倉市DJポリスの男性10人が集まっていた。強一や亮介、大木静人もいる。
「鎌倉駅内で帰宅中の女性が刺されそうになったり、小中学生や高校生が殴られ転倒する事件などが多発している。見かけたら相手の肩をたたいて呼びかけてくれ」秋次郎の肩に止まったメスのコミミズク、クローディアが首を回しながらあくびをした。
―――午後4時。強一と亮介は鎌倉駅内で、未開封のビールの缶を片手に持ち女子高校生に近づく50代男性に気づく。
『お客様、ビールはご自宅でお飲みください。激怒した女王バチに腕を刺されます‼』亮介が男性に向かって呼びかけると冷や汗をかきながら絶叫し、傘を倒しながら駅から出て行った。
亮介が傘立てに傘を入れ終えると、路線図の前にいる4人の男子中学生たちを30代の男が殴ろうとしているのが見えた。
強一が男に近づき、『お客様』と怒りのこもった低い声で呼びかける。男は激高し強一に殴りかかろうとするが、10匹のオスバチに腕を刺され失神。19歳の男性警察官に手錠をかけられ、鎌倉警察署へと送られた。
鎌倉警察署では胸元に巨体を持ちゆっくり泳ぐサメ、シロワニが描かれた薄い緑色の制服を着た短髪の男女20人が、机の上に置かれている20台のスマートフォンに送られた『梅って日本人?漢字が書けないなんて』『英単語の暗記ができる女子、蹴っ飛ばしてやる』などのラインをメモ帳や手帳に書き残していた。
「『梅』って温泉小の6年生だよね。お父さんがアメリカ人で、元バスケットボール選手の」
「さぬきうどんとサーモンの炙り寿司が好きな人な。梅は漢字テストで50点取って、同級生の男子5人に蹴られてた」紫や緑、金箔つきの短髪の高校生たちは小声で話しながら、スマートフォンをハンマーで割る。
―――午後6時。300のラインをメモ帳や手帳に書き残し、スマートフォンを割り終えた高校生たちは伸びをする。
亮介と強一が秋次郎に一礼し「中学生たちは帰宅しました」と言った時、静人が室内に駆け込んで来た。
「三橋大貴がナイフを持った男から帰宅中の20代女性を逃がし、腕に切り傷を負いました」
「……‼」絶句する強一と亮介、高校生たち。腕に包帯を巻かれた大貴が入って来て、静人と秋次郎に笑みを見せ失神した。強一は亮介と一緒に、大貴をソファーに横たえる。
背中まである茶髪にスーツ姿の24歳の女性が、鎌倉警察署に駆け込んで来た。「ごめんなさい」と大貴に謝る女性に、静人が「落ち着け」と耳全体に響く低い声で言った。
顔を赤くした後、嬉しそうな笑みを見せ一礼して帰って行く女性に「お気をつけて」と地声に戻った静人が手を振った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます