5話『紫いもタルト』の5人と、亮介の読み聞かせ


 ―――9月30日。ルークが「おはようございます。20人の小中学生と高校生のスマートフォンから同級生や教師、先輩たちへの暴言を書いたラインが見つかり、鎌倉警察署の秋次郎さんがシロワニ高校の男女と一緒にメモ帳に書き残しています。

 また、テント内で隠れて飲酒をした30~50代の男女10人がハチに腕を刺され失職、秋次郎さんと男性警察官たちに逮捕されました」と言ってビニール袋に入れた発泡酒やワインのビン10本を参加者たちに見せる。

 「カメラ持った男性と『新聞発行者』って名札を胸元につけた女性が、ハチに腕を刺された後に失神して秋次郎さんに手錠かけられてたな」

 源泉中カウンセラーの滝温水が言うと、子役で11歳の石松拓也が「僕の父親千太郎と、母親トミコです」とため息をつきながら答えた。

 参加者たちはテントや長机、鍋などをルークやアイリーンと一緒に片付け終え、トマトやカブなどをもらって帰宅した。

 


 亮介と美月、直美とタルトは玄関前の『田原家』と書かれた2階建ての一軒家の居間へと入る。

 「ただいま」「おかえり」茶色い髪を首の後ろで結んだ23歳の夏木明人、黒い短髪で『子ども食堂 キンモクセイ』や和食店で和食を作る倉田賢、文房具店店員で22歳の島原勇樹、銭湯高校に通う18歳の田原真が笑みを見せる。

 亮介と4人はロックバンド『紫いもタルト』のメンバーで、温泉小や源泉中、『子ども食堂 キンモクセイ』などでライブをしながら過ごしている。

 (亮介はドラマーとヴォーカル、賢はギター、明人はドラマー、勇樹はペインター(絵を描く人)、真はソウワー(服を縫う人)だ)。

 

 「亮介。美月に銀色の三日月の髪留めは渡したか?」「ああ」賢が美月の実家で作られているホウレンソウや煮たカブを食べながら亮介の肩をポンとたたいた。


 「9月28日の午後8時ごろ、鎌倉駅で『足元に気をつけて帰宅してください』と呼びかけていた鎌倉警察署のDJポリスで銭湯高校の大木静人先生が発泡酒を飲み酔った40代の男に腰を殴られて転倒し、腕に軽傷を負った。

 男はオスバチに腕を刺され逮捕されたが鎌倉駅内の券売機3台にひびが入り、駅員やきっぷを買って通学している小中学生、高校生たちが困っている」賢はアユの塩焼きと豚汁を食べながらため息をついた。

 


 入浴を終え寝間着を着た亮介は寝室で『雷、風、影、川の名を持つ猫の一族とリーダーの猫の名に『スター』がつく』エリン・ハンター著『ウォーリアーズⅣ 6 最後の希望』(高林由香子訳、小峰書店)を読み『聡明だが主人公の甥の白猫を憎む』『他の猫を殺してでも森を自分のものにしようとする』2匹のオス猫を熱演。

 薄い緑色の寝間着を着た直美は父の読み聞かせに満面の笑みを浮かべ、あくびをしながら寝た。



 

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