3話 スマホ・パソコン禁止の4週間『ビーヘイバー』
「『ビーヘイバー』に来てくれてありがとうございます。僕はロンドン生まれで元すし職人のルーク・ビッグベンです。茶髪の女性は僕の幼なじみでアイリーン」アイリーンは「はじめまして」と40人に笑みを見せた。
ルークは長机の前に立ち、「『ビーヘイバー』ではスマートフォン・パソコン、ラインやツイッターなども4週間使えません。
参加者は9月30日まで全員テントや砂浜内で過ごし、飲酒や他者を殴るのは禁止。ハチたちに腕を刺された後に起こる下痢や頭痛、腕の腫れは悔いるまで治りません。
ご両親や祖父母、兄や姉には僕や秋次郎さんたちが『4週間、どう過ごしているか』を書いた便箋を送ります」
スマートフォン・パソコンを使っていじめをしたことがある小中学生、高校生は4週間学校に来られなくなり、源泉中カウンセラーの滝温水先生に気持ちを話してもらいます。
長机の前に置かれているトマトや豆腐などは料理の時にお使いください。朝7時から夜10時まで、銭湯に入ることができます」と言った。
「長机に置かれている、扇や風鈴が描かれたメモ帳は?」質問したのは秋花だ。「事件が起きた時の連絡用にお使いください。僕がメモを読んだ後、公衆電話で鎌倉警察署に電話します」
それでは、4週間スマートフォン・パソコン禁止の『ビーヘイバー』開始」
―――夜8時。銭湯から出た亮介は上下紺の寝間着に着替え、テント内で小説を読んでいた。
直美と美月の寝息を聞きながら、机の上に百貨店の6階で開かれていた『ロンドン三日月展』で買った銀色の三日月の髪留めと『美月へ。今日で25歳になるから、これを贈る』とボールペンで書いた紺の便箋を置く。
メスのインコ、タルトが亮介の肩に止まりあくびをする。亮介はタルトの羽を人差し指でなでてから布団に入り寝た。
―――朝6時。田原家の紺のテントからドラムの音が響き、胸元に『drummer』と黒い糸で描かれた水色の半袖シャツにベージュのズボン姿の亮介が起き出してきた。
「タルト!ようかんや強一たちが驚いてるだろ‼」「わたくしが起こさなければ、7時まで寝てるんですから」タルトは亮介の肩に止まりながら言った。
亮介は美月、直美と一緒に鶏の丸焼きを作り始める。ビニール手袋をつけ鶏のお腹を洗う直美に、男子大学生5人が「ああ―――‼」と絶叫し地面に座り込む。
「おはようございます。ソーセージパン焼いたんですけど、食べますか?」黒い短髪で緑のパーカーに紺のジーンズを着た青木清太が、参加者たちにソーセージパンを渡す。
皮まで火を通しコショウを振った丸焼きを食べていた亮介たちもパンをかじり、清太に満面の笑みを見せる。「ありがとうございます」清太は嬉しそうに言い、保冷剤入りのタオルを首に当てた。
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