2話 秋花と強一、大貴


 ―――同日、午後2時。銭湯高校の放送室では胸元に水色の桶が描かれた白いブレザーを着た放送部の三橋大貴と、幼なじみでマラソン部3年の17歳高見強一が校内放送をしている。

 『暑くなってきました。熱中症にならないよう、水分と塩を取りましょう』『家の鍵やノートなどの忘れ物が多くなっています。リュックサックや肩掛けカバンに入れて帰宅してください』


 校門を出ようとした時、胸元に青色の手ぬぐいが描かれた紺のブレザーを着た女子中学生が校庭内に倒れているのが見えた。

 「熱中症か」強一は野球部の男子高校生たちに「2年生の教室、使っていいか?」と聞く。「はい。空いてます」

 「ありがとう」強一は大貴と一緒に2年生の教室に入り、失神している女子中学生の首に保冷剤入りのタオルを当て黒板の前に置かれている椅子に横たえた。


 ―――2時間後。女子中学生が目を開け、椅子から体を起こす。「俺は銭湯高校マラソン部の高見強一」「強一の幼なじみで放送部の三橋大貴」

 二人が言うと、女子中学生は「源泉中マラソン部で14歳の清水秋花です」と自己紹介した。「小町通りマラソン大会に向けて走ってました」

 強一はため息をつき、「熱中症になる人が多い。倒れるなよ」と言いながら秋花に自動販売機で買った清涼飲料水を渡す。

 「はい。ありがとうございます」秋花は清涼飲料水を飲み終え、二人に頭を下げた。

 

 

 源泉中の放送室では緑色の目に金の短髪のイギリス人男性が男子中学生たちに「僕はルーク・ビッグベン。放送をしたいんだけど、いい?」と聞いている。

「はい」「ありがとう」女子中学生が赤面する中ルークはマイクの前に立ち、放送を始めた。


 『こんにちは。僕は元寿司職人のイギリス人男性ルーク・ビッグベン。コロナが世界に広がった後、子どもを殴り蹴る親やSNSでのいじめなどが多いと感じている。

 今日の午後5時から、源泉中から歩いて15分の砂浜で『ビーヘイバー』をやる。

遅れないように!』放送を終えたルークは中学生たちに一礼し、砂浜に向かった。


 ―――午後5時。砂浜には亮介や美月、背中まである茶髪をネモフィラの髪留めで結んだ源泉中の女性教師でロンドン生まれのキャスィー・ブルーフラワーや、梅干し入りのさぬきうどんが好物で183センチ、青い目のアメリカ人男性アーノルドたち40人の男女がいた。秋花とメスの黒柴ようかんを連れた強一、秋花の弟で温泉小6年生の勇人たちの姿もある。


 ルークと、緑のしおりの形の髪留めで茶髪を結んだイギリス人女性が40人の前に歩いてくると、40匹の女王バチとオスバチが羽音を立てながら飛んで来てボールの形になった。長机の上にはトマトや豆腐、メモ帳やノートなどが置かれ、紺や赤など40個のテントが並んでいる。


 



 

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