ビーヘイバー SNSいじめと連れ去り事件

porksoup (ポークスープ)

1話 いじめをする小中学生、高校生と毒バチ


 2022年9月1日、鎌倉市にある温泉小学校3年1組の教室では黒髪を肩まで伸ばし、黄色と紫の半袖シャツに黒いタイツの佐田ひなたと松谷ひかりが大声で笑いながら同級生で8歳の田畑桃に彫刻刀を投げていた。教室の床には折れた彫刻刀の刃が飛び散り、「やめてひかりちゃん、ひなたちゃん!」と桃が泣いている。

 「やめてって言ってるじゃん‼」「佐田、松谷!彫刻刀買い換えられないだろ‼」と緑色のTシャツに紺のジーンズを着た桃の幼なじみで図書委員の田原直美や同級生の男子に言われても二人は彫刻刀を投げるのをやめず、桃のリュックサックに傷をつける。

 直美が彫刻刀を拾って机の上に置くと、ひかりが直美を床に押し倒した。「田原!」男子が駆け寄り、扉の近くにある椅子に直美を座らせる。

 教室の窓から40匹の女王バチが入って来て、彫刻刀の形になりひなたとひかりの腕に8センチの針を刺す。「ごめんなさい!ごめんなさぁい‼」と泣きながら絶叫し、二人は失神。

 5年生の教室では有川浩著『図書館戦争1』(角川文庫)を読む佐原博人に同級生の篠田純一と金木美奈がラインで暴言を送り続けていたが、博人はスマートフォンを見ることなく無言で昇降口に向かった。


 

 保健室の前にはいじめをし毒バチに腕を刺された1年生から6年生までの男女40人が倒れていた。

 保健教師たちが倉庫から出したゼリー飲料の段ボール箱を開け、保冷剤入りのタオルを小学生たちの首に当てる。

 「ゼリー飲料が足りねえ!あと何箱残ってる⁉」体育教師の鷹野陽二が30代の女性教師に聞く。「2箱!保冷剤も溶けてきています!」と女性教師。鷹野は冷や汗をかいている小学生たちの顔をタオルで拭きながら、ゼリー飲料を飲ませた。


 

「直美ちゃん。ひざから血が出てるよ」桃は直美のひざにばんそうこうを貼る。「ありがとう」直美は椅子から立ち上がり、桃と一緒にスニーカーに履き替えて体育館前の階段に座る。

 「田原」不安そうな男子に「だいじょぶだいじょぶ」と言いながら笑みを見せる直美。音楽室と職員室から、黒い短髪で紺のシャツと黒のズボンを着た教師で28歳の亮介と、背中まである茶色い髪を輪ゴムで結んだ『リート新聞』発行者で24歳の妻美月が出て来て娘に駆け寄る。



 「直美‼」「ひかりに押し倒されて転びそうになったけど、手ついたから」二人は大きく息を吐き出しながら、氷入りの緑茶を娘に渡す。

 「源泉中学校や銭湯高校でも、いじめをした1年生から3年生までの男女40人が下痢や頭痛で座り込み、熱で早退した人もいるらしい」と亮介。

 「職員室の入り口に『リート新聞』貼ってたら、保健室の前に40人の小学生が倒れてた。怖すぎ」美月が水で濡らした赤いタオルを首にかけながら、息を吐き出した。

 


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