第11話

「はい終了。もう厳粛モードだからこちら側の一方的な話になってしまうんだが。まあ聞いてくれ。

君が置かれている環境はあらかじめプレイヤーとしてのモラルが欠如していると運営が判断したタイミングで素行は調査され、君の実際の家庭問題まで聞き及ぶことになっている。この事をきっかけに我々運営は君の家庭、学校まで君の事をしっかりと個人として評価するように話をするよ。ここまでキャラを育ててやったことは褒められたことではないけど、俺が出張るまでとなった。それは君の純粋な力だ。ベクトルを折角だから変えてほしい。諸説ある中で俺らのご先祖様の侍を表す士っていう言葉は日々の十の所作を一に帰結する精神という逸話がある。一つ技能を磨いて育て自分のモノにする為には日々その技能の為に、食べる事寝る事、活動している最中でも意識して研鑽しなければ成し得ないという事だと思う。ただ現実でそんなことしたらもし、合わなかったらその費やした時間も資金も無駄になる。そうなった後の修正は本当に容易ではないんだ。だからこそ、このゲームから少しでも自分がやりたいこと好きなこと、なんでもいいからやってみて見つけてくれ。俺たち運営は全ユーザーの現実的な幸せを願っている。大人のうるさい説教かもしれないが、少しでも君の心に残ってくれることを願うよ。加賀美くん達者でな。」


空間が解除されると同時に加賀美のキャラも消え、八重桜のみが残されフィリア達の元へゆっくりと向かってくる。


「お疲れ様です。おや、さすが楓さん情報が早いですねぇ!」


「うちの花見場所で実際に遭遇した連中がいたからねぇ、絶妙なM P Kカマされたって笑ってたけどちょっとやり過ぎてたから俺らが出張って来ようかって丁度話があったのと俺らが動きそうなら運営もはえーだろなぁとは思ってたのよ!ってそれよりなんだよ八重さん今の!!!検証班の分析で格ゲーみたいなことだけじゃなくてハンドサインまでやってただろおおお!?」


「ッハッハッハ良く観てますねぇ!さすが桜花狂乱の方々・・・詳しくは言えませんが楽しいことになるとは思いますよ。心待ちにアップデートをお待ちくださいませ。まああの日あの時私と戦ってくれてればもっと早く情報は出せてたんですけどねえええええ!!!!」


「何いいいいいいいいい!?そんな大事な事があのバトルの後に待ってたのかよ!言ってくれよ!」


「言えるわけないでしょ!!!というかお陰で私の長期休暇延期(自己都合予定)になってしまったのでやるせないもどかしさを共有しようじゃないですかハハハハハハ」


「なん・・・だと!ってか敢えて見せやがったな!!!ちくしょおおおおおお次のアプデが気になり過ぎて仕方ねーじゃねえかああああ」


「さてさてフィリア様この度は運営の騒動に巻き込んでしまい大変申し訳ございませんでした。」


綺麗な直角90度の謝罪を意味する深いお辞儀と本当に申し訳なさそうに謝りフィリアの顔色を伺うがフィリアはあっけらかんとしており逆に良いものを見れて良かった様子をしている。


「いえ!色々勉強になりましたし、逆にすごいゲームなんだなってわかる事ができていい機会になったと思います!友達とも話の種にもなりますし、本当に気しないでください。」


「なんと・・・本当にありがとうございます。」

ホッとしたような表情をしたのは束の間で悪い考えが思いつく歴戦のプレイヤーが悪魔の囁きをフィリアに呟く。


「嬢ちゃん!こういう時は迷惑だったって騒ぐんだよ!そしたら運営からガッポガッポもらえるぜぇ」


「ええ!?そんな・・・ええ??」


「コラァ!楓さんダメでしょう!運営を強請るのは良くないですよ!いいですか、フィリアさんこういう方々にはなってはいけませんからね!毎回毎回不具合やバグを報告するのは非常に助かるものの最近ではネタにして運営から物を強請るようになったらダメですからね!」


「んんん?ゲームに貢献して全てのプレイヤーの環境に貢献してるんだぜ?あれくらい良いだろうよ!ってか辰代のおっさんがそもそも初めに言ってただろぉ・・運営の視点とプレイヤーの視点両方からかんせされるゲームを目指すって、その気づきを与えたプレイヤーには当然な報酬を与えるってよ!だから嬢ちゃん貰える権利はあるんだからしっかりもらっておきなってかどうせ渡すんだろ。」


辰代自体が常に本業での仕事でも常にユーザーのフィードバックに重きを持ち自分が作る中で実際にユーザーが使う場合の齟齬を埋めることに重きを持ってきたことが会社の最大の発展へと繋がっており、何より秦代自体が『鬼才』に該当する人格の為一般人の感覚が理解できず心象の差を理解した上での行動であった。ただ全て一人でやるのではなく常に周囲の人を巻き込みより良いものを目指した結果でもある。

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