第10話

『Rady』『G O』


のエフェクトの後にバトルが開始される。

「始まっちゃいましたね・・・八重櫻さん大丈夫なのでしょうか・・?」


「んーまあそうだねぇ。上手くはないけど社会人だしね。覚悟を持って仕事をやってる人間だから

俺らみたいに遊戯としてのゲームをやっているのか、仕事として責任を持ってやってるかじゃ意味がとんでもなく違う。それに八重さんと今日一緒にプレイしてみて不快とかわからないとか一方的なことはなかっただろ?」


「そうですね・・!本当に分かりやすくて、朗らかな方だったのでこちらからもわからないことを伺っても一個一個丁寧に教えて頂けてこれから必要なことも教えて頂けたので本当に勉強になったし、よし!この目標まで頑張っていこう!って気持ちにもなりました。でもそれが何の関係が・・?」


「全て丁寧に教えれるってことは知識が全部知っていて対応ができるってことなんだぜ。ジョブ全ての特徴とスキル構成、キャラクリのメリットデメリット、スキルの攻撃範囲、スキルの発生速度等々・・格ゲーは俺も噛んだことはあるだが、古い頃のは良くやったけど新しいのはやめちまったのよ。理由は簡単で、格ゲーのコツってのは対戦キャラの性能を良く知るってことなんだわ。知ってないと対策も対応もできないし、逆を言うと知られていたら対応も対策もされてしまうからな。んで新しいのはD L C

でいくらでもキャラ増えるだろ・・・キャラ追っかけて全部覚えてなんてやってたらH O Tができなくなっちまう!って思ってなぁ」


「そんなに奥が深いんですね・・・確かに今日教えて頂いた事も私のキャラだけでもかなりの量がありましたし、一つのキャラだけでも相当な情報量があります。それを熟知するのは本当に大変なんですね・・」


「そうそう。そんな莫大な情報量を仕事として新規のプレイヤーの為にしっかりと対応できるように熟知してる、ある意味本当の意味でのプロゲーマ−かもしれないなぁ!ほらみてみな。奴さん当たらないってめちゃくちゃ焦ってやがるぜ」


バトルが始まりして程なく八重櫻からの攻撃はせず、一方的に受ける形が続いていた。S PやM Pの制限がバトル中は無くなる為いくらでもスキルが打てる状況になっており、ひっきりなしにスキルを連発している。


「クソ!なんで当たらない!影迅して背後に回ってもかわされる!遠距離の月輪も避けられる!スキルコンボの朧蓮空も全部一個一個パリィされる!チートじゃねーのか!!ふざけんな!!!」


「はいはいすぐチートすぐチート。チートってチートツールを使って運営に損害を与える場合だから公式が使ったらチートって言わないんだけどねぇ・・すぐ自分の理解が及ばないと考えを放棄してチートっていうのはどうかと思いますがねぇ。まあこの場合は純粋な知識と経験の差ですよ。」



「はぁ?!俺だってここまで育てるのにかなりの時間かけてやってるんだぞ!」


「確かに慣れない対人とは言えスキル回しと用途が目的を持って使用しているのが分かります。あと繋ぎも焦って連打とか遅れたりせず、スムーズに操作を入れれてるし、キャラのモーションをしっかりと把握しているのが見て取れるので、ちゃんとプレイしているのが良く分かります。素直に感服しますよ。」


「なら当たれよ!褒めてるのにすいすい避けやがってクソが!」


(といいつつ、やっぱり対人ゲーム慣れしてないから結局焦ってワンパターンになってきてるんだよなぁ。わかるわー、対C P U相手なら緊張しないけど対人になると駆け引きが生まれるから空気に呑まれるとこうなるんだよなぁ。しかしゲーム自体は報告通りにしっかりやってるねぇ。ちゃんと通常攻撃入れてモーションキャンセルのように繋いでるし、受け手に回らないっていうゲームのコツをしっかりと組んでる。まあでもPv Eに慣れすぎてる感じで駆け引きがないのが露骨かなぁ。例えるなら10連コンボの練習をしっかりやってる感じか。もっと自由でいいのにねぇ、勿体無い。というかこの子をしっかりと育ててない親が悪い。)




まるで自分のことの客観的に見るように冷静に徐々にワンパターンになってきた攻撃の合間を縫って攻撃に反転した。スキルを連続して打った際の硬直までは消えていたわけではない為モーションの硬直を狙った形になる。振り切った状態から掬われる形に攻撃が入り加賀見の体が浮く。


「があつ」


「っと綺麗に浮いたからここから可能性を示そう。少年よ。」


浮いた状態から左右の連打、距離を詰めて膝を当てる更に空中の状態をキープし、そこから再度の左右の殴打を流れるように繋いでいく。




「わぁー!凄いですねこのゲームこんな映画のワンシーンみたいなことができるんですねぇ・・・かっこ良いなぁ・・・私もこのキャラが育てたらできますでしょうか?って楓さんどうされました?微動だにしてませんが・・・何かまたあったんですか?」


「っは!すまんすまん・・・あまりの衝撃で・・まず俺が知ってるH O Tの歴史であんな動きができてたのはP Vの動画でキャプターで作られたものだけだ・・つまり今後はこの動きができるように・・いやでもおかしいだろ・・M M Oで格ゲーの物理演算処理が・・いやでもサーバーがあの周囲だけ・・・?

いや観測班からそんな確認は・・・」


フィリアは独りの世界に入ってしまった楓に戸惑い、自分が何か変なことを言ってしまったのかと不安げになってしまっている。格闘ゲームとM M Oではそもそもゲームの作りから違う。基本的にゲームの処理として物体と物体が重なる場合の処理は非常に重く、当たっているようで少し浮かせているということが多い。もしくは隠してしまっている場合も多々ある。格闘ゲームの様に空間が限定されている場合と広大なフィールドで操作するゲームとでは内容が全く違うのである。だがこの日この時その常識を覆す事が起きた。M M Oのフィールド内で格闘ゲームと遜色のない動作ができる様になった。それはつまりほぼ現実に近い状況にまで進んできた証でもある。


「ただのオンラインゲームに浮かせてからのコンボとかすげーだろ?っと言ってもコンボロック中だから身動きできないだろうけどこれが最後だ。スキル回しは勿論大事だけど、スキルだけ打ってればいいゲームじゃないのよ。本質はユーザーがいかに擬似体験をするかだから。さてそれじゃあな。」


『一重乾坤』


最後に鋭い蹴りのような速度で脚を伸ばし落下してくる加賀美のお腹に脚を当て、腰に手を当てるモーション入れた後八重桜の背後に紅枝垂れ桜の艶やかな桜のエフェクトが広がり、繰り出した脚の先から一陣の光が加賀美を通り抜けその加賀美の背中に桜色の派手なエフェクトが発生し、H Pゲージが0となった。

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