02 逆光の樹影
この世界は肉の躰を持った人間が多いようで少ない。
気がつくと、機械の躰が歩いている姿を見かける。
AIが中に入っている、と
「……最初、君もそういう存在かと思った」
だがAIにしては何も知らなすぎる、と言った。
「AIだからこそ、何も知らないのでは?」
「プリセット、という言葉を知っているかい? いや愚問か……」
初期設定で、AIにはある程度の知識なり原理なりが入っている。
だがリノウには入っておらず、たとえば
食欲なども、少なくとも装うことはなく、ただ水だけは摂取する必要があるみたいだった。
だが排泄はしなくてもいいようだった。
「……分からない」
「どこかに本体があるんじゃないか」
リノウがある程度「自立」すると、さっさとフラットを譲り、新たな
*
……その
「いずれにせよ、政府には適当に話をつけてある。というか、逆にそういうのがいないか、いたら何とかしろと言われた」
だが、雰囲気から察するに、何らかの借り、あるいは貸しがあると思う。
思うだけで、言わないが。
「この前のトレンチコートのように、
DR.Itsuki
そういうネームタグを付けた老人の像が一瞬、滑った。
一瞬だけで、どうということはない。
リノウは無駄口を叩かない。
新たな「対象」、迷彩服の視覚的情報が現れ、リノウはその老人のことを忘れた。そう、思っていただけかもしれないが。
*
リノウにはそれはないが、トレンチコートといい、迷彩服といい、なぜリアルの衣服を着用するのかが分からない。
「あるいは、ワタシは
しかし、
手を変化させたブレード。
これを、色々な形に変化させてみる。
槍。
斧。
鎌。
ふと気づいてみると、あの老人に変化させていた。
誰かに似ている。
たとえば。
「終わったのか、リノウ」
振り返ると、
時間は白昼であり、
やはり、似ている。
誰に、とは言わない。
洒落にもならない。
手はとっくに、手に戻っている。
「戻り」は速く、生身の人間には、見えやしない。
「…………」
もしかして、
気がつくとスキャンと検索を重ねている。
逆光の
政府の首脳陣の、その老人。
『
その、老人。
老人は若い頃から青史に名を残す天才として知れ渡っていた。
だから十代の時点での動画あるいは静止画が残されていて……それが
「行こう、リノウ」
「……ええ」
今日はシガーを咥えているらしく、逆光の中、煙で
もっとも、読めたとしても、それが真情に基づくかどうかは、
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