陰陽道は、古代の中国で生まれた自然哲学思想、陰陽五行思想を起源として日本で独自の発展を遂げた呪術や占術の技術体系だ。

つまり中国拳法（カンフー）の影響を受けている。

今では陽気の活人拳を光明拳（ライトマーシャルアーツ）と言い、陰気の殺人拳を暗黒拳（ダークマーシャルアーツ）と言う。

かつて平安時代、光明拳（ライトマーシャルアーツ）の達人、安倍晴明（あべのせいめい）と暗黒拳（ダークマーシャルアーツ）の達人、蘆屋道満（あしやどうまん）による武術的な抗争が繰り広げられたと言う。

聖なる白炎が平安京郊外に野原を焦がしながら、邪悪な黒氷がそれを凍結させる。

彼等の式神（しきがみ）はあくまで技の補助、技の強化、あるいはもう一つの拳でしかない。

「「急急如律令（きゅうきゅうにょりつりょう）」」

急急如律令、中国の漢代の公文書に、本文を書いた後に、「この主旨を心得て、急々に、律令のごとくに行なえ」という意で書き添えた語。後に転じて、道家や陰陽家のまじないのことばとなり、また、悪魔はすみやかに立ち去れの意で祈祷僧がまじないのことばの末に用いた。二人は同時に唱えた。

「十二天将（じゅうにてんしょう）・十二ヶ月無病息災（じゅうにかげつむびょうそくさい）」

安倍晴明が高らかに歌い上げるように唱える、十二神将、青龍・朱雀・白虎・玄武・勾陳・六合・騰蛇・天后・貴人・大陰・大裳・天空のことで、一説では十二支に対応するとも言われている。つまりは昔の刻限、十二支で子（ね）の刻（とき）等とも言われる二十四時間に対応、呼応する。一日の全ての時間。

刹那（せつな）や須臾（しゅゆ）すら見逃さない。

三千世界のあらゆる術を常時、無効化。

それは自分自身のものさえ含まれる。

あらゆる術なき徒手空拳（ステゴロ）を強制させる。

「明晴倍安（いめいせのべあ）」

蘆屋道満（あしやどうまん）は奇怪に彼の名を呼ぶ、仏教の邪法、真言を逆さに読むことで正法を歪め、呪詛へと変ずる逆真言（ぎゃくしんごん）、彼は森羅万象（しんらばんしょう）悉（ことごと）く、数多（あまた）の全（すべ）ての名前、真名（まな）を逆（さか）さ読みするだけで同様の効果を発揮する。

クトゥルフ神話の「イアイア」にしても、それは愛（あい）の逆さ読みという究極の呪詛だ。

「尊男戔素（おのさす）」

それは日本の風神、素戔嗚尊（すさのお）の逆さ読み、それにより言霊の陰陽反転の作用、男神ならば女神、女神ならば男神の性質に裏返る、それによって狂乱する女性性（ヒステリック）な暴風が発生する、土煙、視界がとことん遮られる。

無効化は肉体、自己の世界と三千世界の隙間、狭間、外魂纏（エーテル）体の部分限定である。

「祆（けん）教裏理（うらことわり）・邪悪龍王超越厄災（アジ・ダハーカちょうえつやくさい）」

唐代三夷教は、中国の唐の時代において、一時唐王朝によって保護され、隆盛した西方起源の三つの宗教、祆（けん）教ゾロアスター教、景教、ネストリウス派キリスト教、摩尼（マニ）教をいう。

遣唐使ですら伝えない百害あって一利なしの部分の秘密の禁術が、蘆屋道満によって日本に不法に伝来し唱えられる。

千の魔法、つまり千の呪術を使う魔物の力。

ゾロアスター教は陰陽道の理に通ずる善悪二元論の光と闇の流転があり、悪しき陰陽師の暗黒拳のための術の転用が可能だった。

「死（し）ねぇええええええっ！」

死ね、生きろの逆さ読みにして最大の呪詛、今日では反偽薬（ノーシーボ）効果という言葉に対する恐怖刺激、例えばこの薬は無意味、ワクチンは意味がないと言えば実際に効果が無くなるというお話である。耳から入ったネガティブな反応により薬効は毒に転ずるのだ。

「俺はまだまだ生（い）きる！」

対する安倍晴明は対義語を堂々と言う。

自己強化、それは意味のない薬でも思い込みで意味を為す偽薬（プラシーボ）効果とも言う。

拳と拳が交差する（クロスカウンター）。

それは勢いの良いパンチに合わせて、同時に、こちらも勢いの良いパンチに合わせる。

後手、後の先をした方が威力倍増する。

倒れたのは蘆屋道満、地面に倒れ伏した。

そして、話は現代に戻る。

戻るの対義語、進む、愛知県豊橋市南栄町にある神社進雄神社（すさのおじんじゃ）というのがある、明治41年1908年、第15師団の設置にあたり境内地はその用地として買収される。ために字東浦7番地に遷祀（せんし）。また、大正8年1919年には火薬庫築造による危険の回避に迫られ、南栄町、この頃は栄町と呼称していた模様と地元集落の北山との談合の結果、現在地に遷座し奉ることになった。昭和40年1965年、南栄町公民館の収益を主財源として羽田八幡宮の旧拝殿を移築、それを機に栄生町・東栄町・新空池町・曙町が氏子として加入したが、後に曙町は脱退。また昭和60年1985年学区変更により南栄町より分離した新草間町が加入したが、平成13年に脱退し、現在は四町の氏神として多くの人々の崇敬を聚めている。また、豊川進雄神社、文武天皇の治世である大宝元年701年、豊川の西岸に牛頭天王を祀って雨乞いの祭祀を行ったことが当社の創始であると伝えられる。村上天皇の治世である天徳元年957年に現在地に遷宮した。治承4年1180年には、平維盛に仕える平忠度が参拝して戦勝祈願を行った。嘉禎4年1238年には、征夷大将軍の藤原頼経が上洛の際に参拝してヒノキを献じたと伝えられる。貞治2年1363年には、満良親王が参拝した。慶長元年1596年、領主の池田輝政によって刀一口と馬鞍一対が献納され、家臣の堀尾孫介が社殿を造営した。寛永7年1630年、領主の水野佐渡守忠直によって刀一口が献納され、正保2年1645年、領主の小笠原忠知によって青銅製六角形釣燈籠が奉納された。正保2年1645年には、春日局が参拝した。享保20年1735年、領主の大岡忠相によって刀一口が献納され、元文5年1740年には釣燈籠一対が寄進された。明治期以前は豊川牛頭天王と呼ばれていたが、神仏分離によって進雄神社に改称された。1923年大正12年には元宮が本社に合祀され、豊川進雄神社に改称された。1965年昭和40年には愛知県神社庁が指定する四級社に昇格した。2016年平成28年には樹齢250年を超えるとされるシイの神木を保存する作業が完了した。ともある。

という縁起の良い進雄（すさのお）の進（すすむ）。

と、いう事を緋走との待ち合わせ前に思い出していたのは暗黒拳の名手、暗黒院邪暗（あんこくいんじゃくら）。

六つの異名、髑髏壊し（スカルブレイカー）、蛸使い、知られざる闇（アンノウンダーク）、暗黒神楽（あんこくかぐら）、厄災の化身、先喰烏（せんじきがらす）を持つ、名前、真名の他、異名を持つほど、その者の存在価値が高まり、それは畏（おそれ）という呪術的な効果を発生させる。

流血刀（ブラッディブレード）と言われる緋走、彼の異名はそれのみで今、研ぎ澄まされている。

「隣にいるよ★」

それ（メッセージ）は裏社会の中国産の裏神秘（アンダーオカルト）の業界御用達専用アプリ、陰湿（いんしつ）のチャットである。表向きの某SNSのスタンプ機能の多くが使えないのが玉に瑕なぐらいで他はそれ同様だ。

ただ、気配を消すなどでは裏の常識過ぎて異名になるにはかなりの熟練度が必要である。

「‥‥‥今、それ意味あるか？」

暗黒院邪暗は占いについても造詣（ぞうけい）が深い。

実在する西洋の名門占星術師（アストロロジャー）のタクシス家はかつて郵便事業を掌握する一大企業であり、彼等に人探しを尋ねれば次の日、次の月その人がどこにいるか把握できる至上の探偵であり、同時に世界最大の諜報（スパイ）である。

それと同等、同レベルの事を彼は出来る。

「ちぇっ、驚くかと思ったのに」

緋走の稚気をものともしない。

それどころか彼に忠告さえ始めた。

「お前の愚行は全て俺は把握している、ちなみにお前がやらかし過ぎて中国黒社会の大首魁（ダークエンペラー）、魔亡無（まぼうむ）の直系の末裔、魔死零（ましれい）に目をつけられて、今日以降お前は死にかける、三大魔人（ダークトリニティ）、イタリアの悪い魔女（ダークウィッチ）、暗黒母体（ダークバース）、ガブリエッラ・マレフィキウム、ロシアの残虐で狂暴な冷徹で冷酷で冷笑する殺し屋、重力因子の支配者（グラビティマスター）、ジェストーコスチ、アフリカ出身の黒人傭兵、撲殺王（バイオレンスキング）、デュウェルに狙われてる、気をつけろよ、お前はまだ弱いから」

酷く恐れ多い名前の刺客として国際色豊かな仰々しい三人の暗殺手の名前が挙げれられた。緋走の顔に蒼白の二文字は無かった。

「あっそ」

そんな一言で終わった。

悪い魔女（ダークウィッチ）の黒魔術とは忍者の闇遁と似通い、その逆、良い魔女（ライトウィッチ）の白魔術は忍者の光遁と似通うらしい。たまに二つとも一緒くたにされる。

魔女は全員悪魔崇拝者（サタニスト）とは忍者が全員暗黒拳の使い手（ダークアーツマイスター）と呼ばれるようなものだ。

二人はゲームセンターに向かった。

格闘ゲーム、BURAIBLUE（ブライブルー）と呼ばれる人気物、暗黒院邪暗はカブキ=モトツキを使い、緋走はクライミ=オニツジを使う。

一方的に思えた試合運びなど存在しない。

暗黒院邪暗が呆気なく二連勝した。

「お前は直情径行（ちょくじょうけいこう）なんだよ、虚実、牽制技、回避、防御を増やし、引くことを覚えろ、ガードする場面をもっと増やしていけ、ゲームのキャラは不死身でないしな」

そんな耳の痛い忠告をまたした。

「‥‥‥アイツ、よく死なねぇよな」

遠巻きに見ていた不良（チンピラ）が言う。

彼は緋走が小言を言われ、自分のリズム、ペースを崩されるのを嫌う、単なるリスペストのない罵詈雑言、忠告など言語道断であるのを知っている。彼は子供扱いされるのを嫌っている。親子関係ですら彼はまともに施行する事が出来ないほど歪な人格を有している、同時に違う親子関係を築きたいパラドックスな人格を有しているのを知っている。

「まぁ‥‥‥俺は義理でも嫌だなぁ」

そこにいた不良（チンピラ）の隣の不良（チンピラ）が言う。