謎を追いかけて 2

 少し怪しい雰囲気のある本当の源原だったが、四季の姿をしばらく見つめるとゆっくり柵の方までやってきて言った。


「剴は牢屋か?」

「はい」

「そうか」


 弟のことを心配しているのか、原は神妙な表情を浮かべた。


「弟からどれだけ話を聞いてるんだ?」

「双子であること。剴さんが原さんの代わりに動いていること。そして、原さんは一度亡くなっていると」


 源原は町が支配された時に亡くなっていた。正確には支部を襲った時に殺されたのだ。剴と原は二人で支部へと侵入し、盗んだ武器と元々得意だった体術で次々と組員を倒していった。

 しかし、弾丸で貫かれた原は死亡し、最終的に剴が家長を倒したのだ。

 その後、類いまれな体術、武器の扱いを組長が好意的に受け取り、剴自身も町の支配を止めるため交換条件として松田組の組員になることになった。


「俺は気術により蘇生された」

「気術……」

「ほかの国で魔法と呼ばれているものだ。死なない組員を作る計画の一つに組み込まれた俺は、自由を奪われここに囚われている」

「薫さんとはいつ結婚したんですか」

「正式に結婚をしたわけではない。そういう実質そういうような状態というだけだ」


 剴はいずれこの松田組の支配を止めるため、原を外に出すために組員として活動していたと、原は語った、


「兄弟の絆がとても強いのですね」

「……そうだな。なぁ、ここから出してくれないか?」

「あなたは少なくとも一度はここを出ているはず。なんでぬけださなかったんですか」

「俺はこの中にいる限り力を抑えこまれて目的を果たす時は基本的に術者が近くで俺をコントロールしている。扉が開けば少しでも力がでるが、食事はそこの小さな開閉できる柵で渡されて術者がいないときは開けることはない」


 柵の下には一部だけ自由に開閉できる場所がある。食事はここから渡されていた。

 この牢屋の柵が結界の役割を果たしており、中にいる原の力を封じ込めていたのだ。それも気術で蘇生されたことにより術者の結界は本人にはどうすることもできない。


「……わかりました。鍵を壊しますので」


 四季の中に残る一抹の不安。その正体がなんなのかわからないまま、木刀を振り南京錠を破壊した。

 南京錠が破壊され、衝撃でゆっくりと扉が開く。その時、四季の頭の中を嫌な予感がめぐった。


(まって、指輪の話出てない。そもそも原さんを名乗る必要性。それは薫さんを悲しませないため。でも、結婚に至るまでの関係を築いたのはどっち? もし、原さんが亡くなり、剴さんが原さんの振りをしたあとに結婚したのなら、原さんはどう思う……。それに、なぜこんなことで閉じ込められてるの……)


 剴と一戦交え、牢屋にいる時にさえも薫に真実を打ち明けなければと発言していた姿には真実味があった。

 しかし、剴からは一度も薫の名が出てきていない。ここから出たいという執念にも似た何かを感じた。

 四季は急いで扉を閉めようとしたが時すでに遅く、原は開い扉の隙間から飛び出し四季に襲いかかった。


 木刀で伸ばす手を弾くが一切怯まず前進してくる。


「痛みなんかないのさ!!」

「あなた、一体なんのために外へ!」

「自由と復讐だ!!」


 気術の影響か原は人間の力を逸脱した脚力や腕力持っていた。

 四季は思い出した。剴がまだ調整できてないのだろうと言っていたことを。

 剴は自身が原に成り代わっていることや双子であること、死者を復活させる術者の話をしていたが、肝心なことを言っていなかった。

 この二人の現在の関係性だ。

 

(もしかして剴さんはこの人を野に放たないために監視をしていたのかもしれない。でも、なんで剴さんに罪を擦り付けるような真似を。ありえるとすれば、原さんの復讐は剴さんに向けられたもの)


 四季は階段を上がり急いで戻ると、騒音を聞きつけ組員たちが走ってくる音が聞こえた。


 八方塞がりの中、四季の体は突如天井へと吸い寄せられるように持ち上がる。

 天井裏の暗い隙間に連れていかれその招待を確認すると、そこにはみたことのあるシノビがいた。


「心配しないで。敵じゃないよ」

「河上さんのところにいた子?」

「そうだよん。あ、ちょっと静かにしといて。組員と原が衝突するから」


 通路では激しいもの音や声が聞こえる。


「雑魚がッ! 俺が奪った戦国刀はどごだ!!」


 戦国刀という聞きなれない言葉に疑問を抱きつつも四季は声を殺してじっとした。

 ほどなくして通路の音は静まり別の場所で激しい音が聞こえる。その間に二人は外へと出て窮地を脱した。


「ありがとう。ちょっとやばかったよ」

「いいってことよん。それにしてもすんごいことしてるよね。一人で松田組に入るなんてさ」 

「解決したいことがあってね」

「ふ~ん。でも、ちょいと厄介なことになるかもよ。あいつが戦国刀をもったら手がつけられないかも」

「その戦国刀ってなんなの」

「それはね、戦国時代の武将たちの魂が宿るといわれてるすごい刀だよ」


 にわかに信じがたいことだった。

 しかし、もしそれが本当で刀自体に何かしらの価値があるのなら、刀をもった男を殺す理由になる。

 知っていることが繋がり、伏せられたことが徐々に明らかになりつつあった。

 

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