謎を追いかけて 1
原から話を聞いた四季はその事実はに驚いた。
「じゃあ、いまのあなたはいったい何なんですか」
「代わりに原になった存在だ」
「人間がそんなことやっていいんですか」
「奴らはやった。俺はそれをみた。その事実は確実にあるんだ」
「薫さんは知ってるんですか」
「まだ知らない。いつか打ち明けなければと思っているが、勇気が出せなかった」
原から聞いた事実を確かめるためには松田組の本部へと侵入するほかなかった。だが、そうなれば確実に戦うことになる。
支部を倒した四季だったが本部となれば人数も実力も支部以上。単騎での侵入は無謀ではあったが四季はそれ以外に方法が思い付かない。
「その人、どこにいるかわかりますか」
「松田組本部地下にある部屋に一人でいるはずだ」
「なぜそんな場所に」
「まだ調整ができていないのだろう」
「わかりました。私が行ってきます」
そういうと四季はすぐに本部へと向かった。普通なら内部には入る方法を聞いたりするところだが、四季はそれよりも体が先に動いてしまった。
松田組本部は和を基調とした広い屋敷。外壁を一周するのにも十分ぐらいかかりそうなほどの敷地面積で道からは中が一切見えない。
四季は近くの木に登り中を観察する。小柄なお陰で屋敷の庭園で警備巡回をしている者には気づかれなかったが侵入するのは至難の技。
「やっぱ監視がいるかぁ。こっから無理かな」
馬車を移動し壁をよじ登り顔だけ覗かせるとそこは裏口で木製の大きな倉庫などがある。
視界には人の姿はなく、物音もしないことから四季はここから敷地内へと侵入し裏口の扉を開けた。
内部構造がまったくわからない中、勘を頼りに進んでいるとスーツを着た男たちが廊下を歩いてきた。
咄嗟に角に隠れ耳を澄ませる。
「結局両方とも処分してしまうんですかね」
「さぁな、原のほうは維持するのに気術師がいるからコストがかかる。
「でも、戦国刀をもってるのにどうやって処分を」
「組長がなんとかするだろうよ。あの人も戦国刀の所持者で達人だ。それに何かあれば人数で押しきれる」
「確実に死人がでますよ……」
「日向の道を外れたもんが死を恐れてんじゃねぇよ。日陰で生きると決めたからには、明日死んでも悔いが残らねぇようにしとけ」
「は、はい!」
四季はほんの少しだけ心がざわついた。
以前、四季は松田組の支部を単独で制圧した。町を支配する行為は決して許されないことであり、こんなことをする松田組を野放しにしておけないと思っていた。
だが、先の男の言葉は四季の想像していた松田組の姿と解離していた。信念がこもった言葉。日陰を選択せざるを得なかったような雰囲気。生きると決めた場所で全力を尽くそうとする姿勢。
敵でありながらその男の言葉には重みがあったのだ。
広い屋敷であったが中にいる人間は屋敷広さから想像するほどはいなかった。二階、三階があるため人数が分散していたのだ。
自然で培った獣に気づかれず音を極限まで殺し歩く方法が役に立ち、一階で移動はそこまで苦労はしないものの、地下への入り口が見つからず四季は困っていた。
すると、一人の男がお盆に食事をのせ部屋に入っていく。少しして出ていき四季は中の音を聞きに行くが一切おとが聞こえない。
恐る恐る開けてみるとそこは特段変哲もない和室であったが先ほどの男がもってきた食事はなかった。
何かあると察した四季は部屋中をくまなく探すと一ヶ所だけ畳がずれているのを発見。畳をあげてみるとそこには地下へ続く階段があった。
石造りの壁に手を付きながら蝋燭の明かり照らす階段をおりていくと、そこには厳重な牢屋があり、スーツの男が背を向けて座っていた。
「誰だ……」
四季は音を殺してやってきたのにもかかわらず男に気づかれていた。
「あなた、源原さんですね」
「……子どもがこんなとこになんのようだ。組長の子か?」
「私は源原さんがいや、源剴さんが無実の罪で捕まっているのを助けるためにここまできました。いろいろと考えましたけどあなたならすべて説明がつきます」
振り向いた男の顔は四季が戦った源原と同じ顔。
「双子の兄、あなたなら原さん、もとい剴さんに罪を被せることができる」
今まで原と名乗っていた男は双子の弟の剴。ここにいるのが双子の兄である本物の源原だった存。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます