師を求めて 1
東戸行きの列車は多くの客を乗せて進んだ。
「その竹中ってのは強いのか?」
「よく知らないの。私を助けてくれた人が勧めてくれてさ」
「助けてくれた人は強いんだろ。なんでそいつに師匠を頼まなかったんだ?」
「頼んだけど断られたの。私はサムライ、その人はランサーだから」
「まぁ、確かに畑違いじゃ無理か」
突如、列車が停止した。乗客は窓を開けて外を眺めるとざわめき始める。四季はその様子を見て小さく言葉を漏らした。
「これってまさかまた……」
「またなんだよ」
「まぁ、見てて。たぶん前の車両から武器もった人来るから」
四季はげんなりと、ジェットは不思議そうに前の車両へと続く扉を見ていると、ほどなくして力強く開いた。
無精髭に小汚ない服を身に纏い狭い場所でも扱いやすいサイズのナイフをもって言った。
「この列車は俺らが占拠した。すべて俺らのものだ!」
四季の予想通り以前同様山賊がやってきた。とはいえ山賊もいろんな地域で集団があるのだが、山賊と四季は目が合うとお互いに驚いた。
「お前この前の!!」
「前に痛め付けた人じゃん!!」
「知ってるのか?」
「横海に向かう列車を襲ってきたんだよ。性懲りもなくまた来たんだね。また放り出してあげる」
「ちゃんと対策はしてるんだ!」
山賊の団長は煙幕玉を床へ投げ車両内を煙で充満させた。
「ったく。小賢しいな」
「なんも見えないよ」
「――やべ! 俺も見えねぇ!!」
「……あいつ馬鹿かよ」
「山賊だからね」
「あ、あいつら~! お前ら、全員集まれ!」
山賊の団長はそれぞれの車両に侵入した一味を全員四季たちのいる車両へと集めた。ただでさえ窓が開いているのに前後の扉が開いたことで煙は外へと抜けていき、徐々に視界が鮮明になっていく。
しかし、団長は煙が晴れたあとに広がる光景に驚いた。
「うっそだろ! まだ数秒しか経ってないんだぞ」
すでにそこには四季とジェットの二人に倒された部下の姿があった。
「この程度で人を襲おうなんてやっぱ馬鹿だろ。それにこんな狭いところじゃ人数もいかせねぇし」
「山賊だからね」
「このやろう……! これを見てもまだ同じことが言えるか!」
リボルバー銃を二丁取り出し四季たちへ向けた。前回涼真にやられたのをしっかり反省し準備してきていた。部下たちがやられ射線を気にせずに済む。
団長において二人を何も気にせず撃つ絶好のチャンスだった。
「この距離なら木刀も拳も当てられんだろう。少しでも間合いを積めてきたら撃つぞ」
すでに引き金に指をかけており撃つ覚悟をした瞳をしている。脅しでないことは二人とも理解していた。
そんな中、四季は急にその場で素振りを始めた。
「お、お前なにやってんだ」
「間合いを積めなきゃ撃たないんでしょ。だったら試したいことあったんだよ……ねっ!!」
素振りの勢いを利用し全力で木刀を投げた。一直線に飛ぶ木刀は団長の思考を鈍らせる。木刀を避けるか真っ先に撃つべきか。達人の領域ならこんなことは考えるまでもないが、素人が銃を握っただけの団長では完全に体が硬直し、眉間に木刀の先端が直撃。
「ま、またかよ……」
「列車止めた癖にこんなにあっさりやられんのかよ」
「山賊だからね」
乗客も手伝い山賊を全員外へ追い出すとれっしゃはなにごともなかったかのような走り出した。
「まさか木刀を投げつけるとはな」
「涼真さんが言ってたの。この木刀は職人が作ったものだからそう簡単には折れないって。だから試してみたくなって」
「折れたらどうすんだよ」
「そん時はまたお仕事して買うしかないね」
呑気に話ながら東戸までの時間を潰していた。
――――
とあるサムライが山小屋に刀を携えてやってきた。その男の名は竹中半十郎。そう、これから四季たちが向かう道場の師範である。
整った顔立ちにしっかりと整えられた髪。袴はまるで新品のごとく手入れが行き届いている。そんな風体でこんな山小屋にいるのは随分と異質であったが、竹中はある男に会いに来ていた。
「竹中剣術道場の師範、竹中半十郎です。手合わせをお願いします」
引戸がゆっくりと開き現れたのは気だるげな表情を浮かべる長髪のサムライ。大きなあくびをすると頭をかきつつ言った。
「またやられに来たのか」
「次こそは負けません。刀を新しくしてきましたから」
「刀どうこうで変わる話じゃないだろう」
その瞬間、すでに背後に回っていた竹中は男に対し全力で刀を振るう。当たれば確実に殺せる本物の刀で。
しかし、男は軽く避けゆったりと外へ歩くと新しいおもちゃを見つけた子どものような笑顔を見せる。
「
「現代を生きるサムライとして伝説の人斬りと戦えるのは光栄なことです。でも、今日こそ私が勝ちます。――河上さんも全力でお願いします!」
河上と呼ばれる男はゆっくりと刀を抜き片手で構える。
「
二人の刀がぶつかりあう。
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