謎多き男、坂本涼真 3
港に行くとすでに木製の武器をもった大人が集まっていた。
「みんな大人ですけど私出ちゃっていいんですか?」
「強けりゃ誰でもでていのさ。賞金は一万五千札。申し分ないだろ」
「東戸まで行ける上に宿をとって食事もできますねっ。よーし、がんばるぞ!」
参加者の中で唯一の子どもである四季はかなり目立っており、周りからひそひそと言葉が飛び交っていた。
「あの子戦えるのかしら」
「あんなちっこいのまでいんのかよ」
「ったくよ~。戦いづれぇな」
そんな周りのことを気にせず四季は素振りをはじめた。すると、さっきまで舐めていた大人たちは表情を一変させる。
木刀を振る度に強烈な風を斬る音、隙のない立ち姿、余裕綽々な表情。ウォームアップで飛んだりは寝たりすればその軽々とした身のこなしは誰の目から見ても只者ではないとわかる。
それぞれがウォームアップを始めたり知り合いと話している中、そこに一際目立つ存在がやって来た。頭はオールバック、サングラスをかけたスーツの男だ。。
到底戦うとは思えない革靴に武器をもたずウォームアップさえしない。力自慢の大人たちはその男を見て苦い表情を浮かべた。
「あの人も参加者でしょうか?」
「松田組の人間だな。まさかここに来るとは」
「あれって松田組なんですね」
「知ってるのか」
「支部を倒しましたから」
「えっ!?」
涼真の驚く声に周りは振り向いた。涼真は四季を連れて集団から離れるとその審議を確かめる。
四季は町で起きたことを話し支部の戸賀や柳を倒したことを伝えた。
「その二人の名を知っているか」
柳や戸賀は田舎町に配属されていたため決して有名ではない。例え松田組を知っていてもそんな下っぱまで知るはずがないと考え四季の倒したという言葉を信じた。
何より、四季の実力なら支部程度落とすなど造作もない。
すると、スーツの男が二人に近づいた。
「ちょいといいかな? 支部を倒したとか何とか聞こえたけど本当か?」
「私が――」
意気揚々と四季が言おうとするのを口を手で塞ぎ止めると涼真は答えた。
「渋柿を盗む小僧を倒したって話だ」
「じゃあ、なんでわざわざ離れて話してんだ」
「まだまだこいつも子どもさ。そんなこと公でいったら周りから変な目で見られるだろ」
「……そうか。急に話しかけて悪かったな。気にしないでくれ」
「そっちこそ気にしなさんな」
男が去っていくと四季は口を塞ぐ手を強引に外した。
「ぶはーー! 殺す気ですかっ!」
「悪い、つい力が入った」
「なんで倒したこといっちゃいけないんですか?」
「黄海は松田組の本部がある。もし四季が下っぱとは言え支部を倒したとわかったら向こうが血眼で殺しに来るぞ」
「確かに」
納得すると同時に柳から言わないでくれと言われたの思い出した。
「そういえば口止めされてたんだった」
「まぁ、何にしても言わないことに越したことはない。口を滑らせないようにな」
「わかりました!」
そうこうしていると戦いが始まった。戦いは勝ち抜き戦で最初の二人を以外は順番は決められていない。自身が勝てると思ったタイミンクで参加し勝ち続けるだけ。
穏便な力比べのため殺傷能力のある武器は禁止。相手の腹部、胸部、背部、頭部に武器または武器の攻撃が当てることで勝利する。腕、肩、脚などに判定をつけてないのは拳で戦う者への配慮である。
戦う範囲は決められていないがあまりにも遠くに言った場合初期位置からの再開になる。
最初の対戦は槍使いの男出川とと鞭使いの女笹野。審判の掛け声で戦いが始まり二人は思い思いに武器を振るう。
鞭の変則な動きはこの戦いにおいて有利ではあるが、同時に槍の防御は刀以上の範囲であるため簡単には当てさせない。
「四季、あの二人をどう思う?」
「私よりは弱いですね」
「結構言うじゃないか」
「私はいっぱい修行をしましたから」
「じゃあ、どっちが勝つかわかるか」
「う~ん。僅差で槍の人だと思います」
「どうしてだ」
「鞭の速さが一定なんですよ。変則的でも目が慣れれば大した問題ではないですし、あと二歩近づけば飛び込んで槍の先端を当てられます。鞭は防御できないのであの女性はそれでやられるでしょうね」
涼真も四季とまったく同じことを考えていた。洗練された鞭使いならまだしもここにいるのは常人よりも扱いが上手い程度の存在。
鞭自体は変則的でも素早いが所有者自身の体の身のこなしは差ほどでもなかった。
程なくして四季が言った通り出川が攻め、それに対応できなかった笹野は槍の先端が腹部にかすり敗北する。
「あ、もしかして鞭の人わざとそう動いてたのか」
「どういうことだ?」
そのあとに出てきたのは木刀をもった
「あの人にたぶん目配せしてました。おそらく知り合いなんじゃないんでしょうか」
四季の考えは笹野が出川の体力を減らし相方に繋げたということだ。
事実、出川はそれなりに消耗しておりすぐ相部が勝利した。
四季の観察力の高さに涼真は小さくにやけ考えを巡らせる。
(やはりこの子は只者じゃない。松田組の支部を倒したのもそうだがこの観察力。使えるかもしれん)
涼真の思惑が四季の存在により強固なものへと変わっていった。
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