目指すは横海 2
貨物室から客車へと移動し適当に空いている椅子に座って外の景色を眺めた。ふかふかの座席でゆっくり休みつつ、周りの乗客を眺めてみると、綺麗なドレスやスーツ、上物の着物や袴を着た人などが座っていた。
「こりゃあ快適だね~」
別の車両から車掌がやってくると常客の下に向かい切符を確認して回った。一方、四季はそんなことも露知らず眠りこけていた。
「お嬢ちゃん、ちょっといいかな?」
「……ん。なんですか?」
「切符を見せてくれるかな」
「切符ってなんですか」
「君、切符を買わずにどうやって乗ったんだい?」
「たまたま走ってるのを見かけたんですよ。それでひょいって飛んで」
半ば信じられないといった風な表情を見せる車掌であったが、駅で少女の姿がなかったことから嘘ではないのだろうと思いつつ、車掌は厳しい口調でいった。
「君、それだと無賃乗車だよ」
「それってどうなるんですか?」
「例え子どもと言えど牢屋行きだ」
「ええーー!! それは困りますよ。どうすればいいんですかっ」
「お金があるならここで切符を買うこともできるよ」
「なーんだ。だったら大丈夫。お金ならここに」
そういい獣を倒したお金を出そうとするがどこにもなかった。
「も、もしかして落としたかも……」
「そんな嘘はいいから。黄海についたら君を警察につき出すから」
「そんなぁ~……」
四季は手首をロープで拘束されると不貞腐れた表情で車掌に連れていかれる。
しかし、車両は突如緊急停止した。
車掌は慌てて先頭車両へと向かう。乗客は何があったのかと思い窓を開けて前方をみると、そこには武装した男たちが立っていた。
「おい、あれってもしかして山賊か?」
「うそ……こんなタイミングで来るなんて」
「神様、無事にこの窮地を脱げ出せますように……」
四季も拘束された手でなんとか窓を開けていかつい男たちの姿を確認した。
「あの人たちが列車を止めたのか。まったく、迷惑な人たちだなぁ」
男たちは次々と車両の中へ入っていき前から順番に乗客の持ち物を奪っていった。
「おい女、その布に包まれたのはなんだ」
「こ、これでだけはどうか取らないでください。大切なものなんです」
「いいから寄越せ!」
女性の乗客がもっていたら布で包まれたの細長い棒状のものを奪うと、紐をほどき中を確認した。そこには立派な刀が一振。
「上物じゃねぇか。それにまだ使われてねぇ。これは俺がもらってやる。団長である俺様が使うのにふさわしい」
「そ、そんな……」
女性は泣き崩れた。
「待ちなよ! お姉さん困ってんじゃん」
「なんだぁ? ……ってなんでお前手を縛られてんだ?」
「無賃乗車で捕まったから!」
「堂々と言うことかよッ! 俺らと大してかわんねぇじゃねぇか」
「違うよ。私は間違えただけだし! お金は持ってたし! 落としたけど……」
「あ? もしかしてあの八万札はお前のか」
「もってるの!? 返してっ」
「返す分けねぇだろ。俺らは山賊だぞ」
「この人でなしっ!」
四季と話してるとペースが乱れると感じた団長は刀を抜き鞘を投げ捨てると四季へ向けた。
「ちょうどいいところに斬りやすそうなガキがいるし、試しに斬ってみるかな~」
刀の刀身をみた瞬間、四季はあまりの美しさと殺しに対して純粋なまでに研ぎ澄まされた刃に言葉を失った。
黙っている四季を斬ろうとした途端、電車は急発進をする。山賊の下っ腹を外へ落とし運転手が独断で発進させたのだ。
山賊団の団長はよろめきながらも刀を振るうが、方向が定まっていない状態で四季を斬りつけることはできない。しかし、確かになにかを斬ったような音がする。
前を見てみるとそこには拘束していたロープが切れ、自由の身になっている四季がいた。
「拘束を解いてくれたのはありがとね。でも、人のものを盗んで横柄な態度をとってるのは許せないよ!」
座席に置いていた木刀を取り団長へと向ける。
「こんなことがまかり通る世の中だってんなら、私が世直ししてあげる!」
「ガキの癖にへらず口を。お前ら! やっちまえ!!」
すでに山賊の一部は屋根づたいに貨物室も占拠していたことから、後ろからも山賊たちが現れる。
挟み撃ちの状態の中、山賊たちは小回りのきくナイフやリボルバー銃を取り出し四季を睨む。
「この状況で生きて帰れると思うなよ」
「帰る場所はない。私はどこまでも進むだけだ!」
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