目指すは横海 1
町へと戻った四季は町の人たちに柳が退くことを約束したのを伝えた。町の人たちは安堵し四季にお礼をいって言っていく。
「気にしなくていいんですよ。それに人と戦えて経験値も詰めたし」
「君のおかげで今日からは罪悪感に苛まれず眠れそうだ。あとは向こうの町にいままでのことを謝罪しなければ」
「きっと許してくれますよ」
「簡単なことじゃないさ。あれだけ苦しい生活をさせてしまったのだから」
「向こうの町長さんがいってました。彼らには彼らの守るものがある。どうか責めないであげてくれって」
「そ、そうなのか……。我々は本当にひどいことをしてしまった。これからは共に支え合いあんなやつらがきても立ち向かえるよう強くならなければな」
そこに吉太がやってきて頭を下げた。
「四季ちゃん、謝っても許されることではないけど、昨晩は銃を撃ってしまって本当に申し訳ない!!」
「当たんなかったんですから気にしないでくださいよ」
「それだけじゃない。俺は四季ちゃんが少しでも心変わりしねぇかと食べ物に睡眠薬を混ぜた。夜になれば移動はできないと思ったんだ。それに、獣のお金を三万札ほど抜いてしまった……」
「だからあんなに眠かったんですね。てっきり知らない間に疲れがたまってたのかと思いました。……ってまだ三万札もあったんですか!!! 私は八万札でも十分ですから自由に使っちゃってください」
ほかの人々も武器を向けたことや松田組と戦わせてしまったことを謝罪した。
それぞれがもっていた罪悪感を四季ら天真爛漫な笑顔で許し再び黄海へ向かった。
「これで列車に乗るお金は困らないなぁ~。それにしてもあとどれくらいでつくんだろう」
町長からは道沿い行けばあと二日で到着できると言われたが、四季は少しでも早く到着したいと思い森を突っ切ろうとした。
しかし……。
「迷ったぁぁーーー!!!」
森は奥に行けば行くほど複雑で空もよく見えず方向感覚が狂ってしまう。土地勘もない四季はいま自分がどのあたりにいるかさえわからなかった。
「参ったなぁ。川でも見つければ楽なんだけど」
その時、どこからともなく聞いたことのない音が聞こえる。絶え間なく連続的に鳴る硬質な音と周囲に広がる野太い音。
耳を研ぎ澄ませ方向を確認すると四季は走った。音の正体がなんなのかはわからなかったが迷った以上なんでもいいから場所の手がかりをつかみたかった。
森を抜け開けた場所に出ると、そこには金属で作られた一直線の道が続いていた。
「なにこれ? 橋でもないよね。いったいなんなんだろう」
すると、金属の道にそってあの硬質な音と野太い音が近づいてきた。四季は始めてみるその存在に驚いた。
「は、速い! 馬なんかより全然。もしかしてあれが列車か!!」
四季はたまたま偶然にも線路をみつけだした。本来この近くに駅はないため線路に近づくのは油断した獣ぐらいだが、これを好機と捉え列車へと飛び乗る。
想像を越える速さに戸惑うが、風を斬るように走る列車に興奮を覚えた。
「よーし、このまま黄海までいくぞー!」
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