第10話 スミレの洗脳工作
「おい小春、何でついてくんだよ。お前んち逆方向だろう。つーかお迎えの車どうしたんだ?」
「いいのいいの。気にしないで、おばさまから夕食のお誘いがあったから、今日はおばさま自らお料理してくださるそうで私楽しみ。だから一緒に帰りましょ。」
「お前なぁ、毎週日曜日は何で俺んちで飯食うんだよ。」
「だって将勝君のカレーって美味しいもん、毎日でも食べられるよ。」
デス・スコーピオ戦は予想よりも早く片付き、帰投した時は未だ午後3時前であった。 勤務日誌と引継簿にサインをして帰ろうとしたところ小雪がいそいそと付いてきたのだ。
スミレは休みで朝から家にいる。日曜に家にいたのは何年ぶりであろう。
「ねぇ、卒業したらどうする? 大学は?」
「いいや、何も考えてねぇ。」
「ねぇ、だったらそのままうちの大学に進学して、そのあと畑中に就職しちゃえば。パパに頼んであげるから。」
「お前の情けにすがれってか?見くびるな。オメェごときに人生決められてたまるか!なめた口きくと承知しねぇぞ!」
将勝は声を荒げる。
「ごめんね。そんなつもりじゃないの。ただ、私は‥」
「俺はお前の風下に立つつもりはねぇ、言葉に気をつけろ。」
普段から言葉遣いは雑だが、ここまで憤慨したのは初めてである。
プライドを傷つけたらしく、小春は己が浅はかを悔いた。自然と涙が滲む。
「チッ泣くなよ、行くぞ。」
スミレの料理は久しぶりである。
金目鯛の煮つけに筑前煮、肉じゃが、だし巻き、炊き込みご飯とハマグリのすまし汁。昭和感溢れる献立である。
どれも将勝の好物であった。
「小春ちゃんのお口に合うか心配だわ。」
「とっても美味しいです。私早くにママを亡くしていますから母の味って知らないんです。感激です。」
小春の正直な感想である。
午後7時30分、二人はソファでぐったりとしている。
傍らに防毒マスクをかぶったスミレが立っていた。
2人とも薄目を開けているが何も見えてはいない。口角の筋肉が強張り笑ったような顔になっている。
ジョッターが亜鉛化窒素をベースに開発した特殊ガスの影響だ。主に要人拉致の時に使用する。無色透明で無臭のガスで即効性がある反面、血中からの排出が早く持続性は一時間程度だ。
真っ先に小春のスカートをまくりショーツを脱がした。淡い茂みはVラインに沿って手入れされている。陰核がやや肥大傾向にある。
医療用クスコを慎重に挿入してゆっくり広げるとかなりの抵抗が認められた。おそらく男性経験は無いかあったとしても少ない。
開口部からファイバースコープを入れるとPC画面上にはサーモンピンクの世界が広がった。
中隔処女膜が完全な形で維持されていて男性経験は無い。処女である。陰核がやや大きいのは先天的なものか自慰行為による発達と推測する。
綿棒で内壁の粘膜若干量を丁寧に採取しDNA資料として保全しておく。
ゆくゆくはこの奥に将勝の因子を着床させる予定だ。孫を育む大切な子袋、将勝に次いで2番目の防護対象に認定した。
本来であれば採血や詳細なスキャニングをしたいところであるが今日は時間がない。
ここからが本番である。小春の服を元通りに戻し、口元に吸入器を当てる。
微弱な覚醒ガスを送り込むと同時に、ジョッター開発の洗脳用ガスを嗅がせる。
米CIAが尋問の時に使うベンゾジアゼピン系の薬剤を独自に改良したものだ。
「小春ちゃん、きこえる?返事して」
「‥‥うっ、き、聞こえます。」
「私は誰?」
「おばさま、将勝君のおばさま」
「将勝のこと、好き?」
「‥大好き」
「将勝のお嫁さんになってくれる?」
「よろこんで」
「なら、ちゃんとさせてあげられる?」
「はい、私の
「将勝が求めたら、いつでも応えられる?」
「お任せください」
「毎週日曜、私がオトコの扱いを教えてあげる。ついてこれる?」
「頑張ります」
「早速、来週日曜の夜に将勝としてもらうわ」
「ふつつかな嫁ですがお願いします」
小春はかなり乗り気で洗脳の必要もないほどである。かえって抑制させた方がいいくらいだ。
続いて将勝の洗脳に取り掛かる
「おきて起きなさい。将勝」
「ん、もうちょっと寝かせて」
「わかった、寝てていいわよ。そのままでいいから、私の声は聞こえる?」
「…ん、聞こえる」
「私は誰?」
「かあちゃん」
「あなたは誰?」
「俺?俺は俺」
「いくつになったの?」
「17」
「そう、もう一人前ね。あなたは一人前の男」
「うん、俺は一人前のおとこだ」
「一人前の男は何でも出来なくてはならない。そうよね」
「うん、俺は何でもできる」
「じゃあ、女の子としたことある?」
「‥‥ない」
スミレは安堵しつつも切なかった。息子は未だ女を知らない。
「そう、したことないの。ではまだ一人前ではないわね。したい?」
「うん、したい。俺はしたい。」
「誰としたい?」
「‥‥ママンダー、あの人としたい。」
たまらなかった。最高の技術を有しながらも将勝にだけはそれを行使できない自分を呪う。血さえつながっていなければ一晩中何度でも失神させるまで、いや意識を奪ってもなお絶頂を味あわせ徹底的に女を教えてあげられるのに。
「それはダメ、その女だけはダメ、わかった?」
「…わかった。」
「小春ちゃんは、好き?」
「微妙、でも頼りにしている。」
「小春ちゃんとならできる?」
「小春が嫌じゃなければできると思う」
「じゃあ、小春ちゃんとしなさい。そして一人前になるの。あなたの相手は小春ちゃん。わかった?」
「うん、小春とする。」
「じゃあ来週の日曜日の夜は小春ちゃんとするのよ。かあちゃんが付いてやり方を教えてあげるから、わかった?頑張ろうね」
「わかった。俺がんばる」
あとひとつ将勝から聞き出したいことがある。しかし、それを知るともう後戻りはできない。
「ママンダーに会ったことはある?」
「ある」
「どこで?」
「いろいろなところ、遊園地とか採掘場とか」
「いつあったの?」
「毎週日曜日」
「‥‥あなたはホッパー?」
「うん、俺はジャスティス・ホッパー」
「ホッパーはもっと大人のはずよ。」
「うん、先代ホッパーは俺が生まれる前に死んだ。キサラギ‥‥ダイゴとかゴローとかいう人、ホッパー開発者だけどよくは知らない」
愕然とする。
将勝がホッパーであることは薄々勘付いていたが、まさかあの変態サディストの正体が愛する如月大吾郎とは露にも思わなかった。
あの優しくて穏やかな大吾郎が非人道的な性的拷問を楽しんでいたとは、捻じれた経緯はあったにせよ将勝は愛した男との間にできた子であるのは間違いなかった。
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