(2)

 あれ? 何で、こんな所に居るんだろ?

 また、記憶が飛んでる。

 最後の記憶は……夕食の後で勉強をしようとして……。

「暑いッ‼」

 ちびすけさんの声。

「……ふ……ふみゅ〜……」

「ふみゅ……ふみゅ〜……」

 ちびすけさんが……迷彩模様の恐竜2人(?)組に挟まれて寝ている。

 確かに暑いだろうけど……。

「あ……あの……、その2人(?)、何て言ってるの?」

「夜中、1人じゃ寝られないとさ……」

「何で?」

「まぁ……人間だと幼稚園児ぐらいの齢……だと思うから……仕方ないが……」

「でも……ちびすけさんより……」

 あの角竜さんは体が小さい事を気にしてるから、気を付けるのだ。あの角竜さんの種族の基準では、無茶苦茶強いのに無茶苦茶体が小さいのだ。

 あ……ありがとう。気を付けるよ。

 って、今の声、何?

「でも……何が怖いの? 人間の齢に当てはめたら子供でも、そこまで体が大きかったら……トラックがぶつかって来ても平気じゃない?」

 迷彩模様の肉食恐竜2人(?)は首を横に振る。

「え? そう云うのが怖いんじゃないの? お化けとか?」

 またしても、首を横に振る2人(?)。

「その『お化け』と云う概念は……俺達恐竜は、この時代に来て初めて知った。その『お化け』とやらが実在したとしても、俺達恐竜には認識出来ないし、『お化け』の方も、俺達恐竜には何の影響も与えられないようだ」

「じゃ……何?」

 ガサっ……。

 その時、背後で音がした。

「あっ……ちょうど出て来た……。いや……もう始まってたのか……」

「な……何が……」

 ふり向いた時……。

「うわあああああッ⁉」

 そこに居たのは……。

 ……ゴキブリ。

 ただし……家に出るヤツの3倍ぐらいの大きさの……。

 こ……こ……これは……恐竜でも怖いかも……。

 で……でも……。

「なっ……何で……こんなのがッ⁉」

「これも、この時代に来てから知った概念だが……『指数関数』と云うのを知ってるか?」

「い……一応……学校で習った」

「何かの量の増え方のルールは、ずっと同じなのに、そのルールを知らない奴からすると、最初はゆっくりと増えてたのに、ある時から突然、一気にとんでもない勢いで増え出したように見える……そんな感じで良かったかな?」

「え……えっと……多分……」

「そろそろ来る……いや、もう来てるかも知れない……その『一気にとんでもない勢いで増え出したように見える時』が……」

「えっと……何が、とんでもない勢いで増え出すの?」

「人間の文明が自然に与える影響だ……」

「へっ?」

「悪いな……お前達人間の事は結構好きだったんだが……もう、俺達でもどうする事も出来ない」

 だ……だから……何が?

 悲しいけど、人間さんたちは、もうすぐ居なくなるのだ。ガジくんに体を貸してくれてる人間さんが、お婆ちゃんどころかおばちゃんになる前に、この世界は人間さんが生きてけない惑星ほしになるのだ。もう、どうしようもないのだ。ガジくん、とっても悲しいのだ。でも、ガジくんたちは人間さんたちの事を忘れないのだ。

 だから、誰の声だよ?

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