(4)

 ちょっと待って、何か変だ。

「ねえ、1つ訊いていい? 何で、あたし達が乗ってた車の方が派手に引っくり返たのに、パトカーの中の警官は死んじゃって、あたし達は無事なの?」

「え……」

「えっと……そりゃあ……」

 阿呆どもの生き残り2名は……逆に「この阿呆に、どう説明すりゃいいか?」って表情かおで、あたしの方を見て……。

 見て……。

 あれ?

「ぎゃお♪」

「ぎゃお♪」

「ぎゃお♪」

「ぎゃお♪」

「ぎゃお♪」

「ぎゃお♪」

 今、何が起きた?

 ここ、どこだ?

 目の前では……ひよこっぽい姿だけど、口の中にはゴツくて頑丈そうな牙が何本も生えてる、大型犬ぐらいのサイズの……外見はそっくりだけど色違いの羽毛恐竜6匹がバーベキューをやっていて……。

 いや、ちょっと……何焼いてんの?

 えっと……それに……何……これ?

 

 変だ……。

 おかしい……。

 今、チビ恐竜たちが焼いてるのが……あたしを誘拐した阿呆どもの成れの果てなら……そもそも、あいつらは何で、あたしを誘拐したんだ?

「ぎゃおっ?」

「あ……いや、あたしは……いいです……。いらないです……」

 チビ恐竜に差し出された……こんがりと焼けたモノを断わる。

「ぎゃお……」

「おい……」

 その時、今度は、聞き覚えがちゃんとある声が……。

 ウチの牧場のバイト長の角竜の「ちびすけ」さんだ……。

「あ……どうも……」

「この前、お前が勝手に食った、あいつらの肉の代りを見付けてきたようだな」

「えっ? どう云う事?」

「ああ、あいつらと俺は知り合いでな……。共に世界最強の恐竜の座を目指していた」

 いや……そう云う事じゃなくて……。

 あたしが、あの子たちの肉を……勝手に食べた?

 記憶にないよ。

「まぁ、無事でよかった。お父さんが心配してるぞ。俺の背中に乗れ。家に帰ろう」

「……は……はい……」

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