(3)
「やめろ〜、何する、この誘拐犯っ‼」
「うるさい、誰が誘拐犯だッ‼」
「大体、いい齢して、何だよ、そのコスプレ? あんたらは、SNSで『俺って何事も冷静で論理的に見られる頭いい現実主義者だ』って言いたくて迂闊に『ナチスは良い事もやった筈だ。どんな事でも是是非非で判断すべき』とか呟いて専門家にボコボコにされるみじめで頭の悪い大人になりたい阿呆の集団かッ? あんたらみたいなのが居るせいで『現実主義者』って単語の意味が『自分が頭がいいと思い込んでる阿呆』に変り始めてんだぞ、責任取れッ‼」
「そう云う1〜2ヶ月で忘れ去られるような時事ネタはやめろッ‼」
「何、言ってる? 阿呆は台所のゴキブリみたいに、どんだけ根絶しても少し経ったら、また出現するから『SNS上の阿呆に関する時事ネタ』の方が賞味期限が長いんだッ‼」
あたしが目を覚ますと……そこは車の中。
どうもネット上で「誘拐犯御用達」扱いされてるバンじゃなくて……何だ、この妙に座りごごちが良い座席?
ひょっとして……?
って……。
パトカーらしいサイレンの音。
「おい、何で……もう見付かった?」
「ねえ……馬鹿な事訊くけど……」
「何だ?」
「この車、目立つ車とかじゃないよね? すごい高級車とか……」
あたしを誘拐した変態どもは……顎カックン。
図星だったようだ。
「おい、スピード上げろッ‼」
「そう言われても、もうすぐカーブ……」
「いいから上げろ」
「嫌です」
「ならば……」
え……。
何か、嫌な予感が……。
「見たか、私の必殺技は催眠……」
車がカーブでスピードを上げたら、どうなるかは車の免許を持ってないあたしでも知ってる。
そう言や、夏休み前の理科の期末テストで出たネタだった。
どごおんッ‼
カーブを曲りそこねてあたし達の乗ってた車は派手に横転。
「いててて……」
運良く、あたしと誘拐犯どもは無事。
何とか車から這い出して……。
誘拐犯どものリーダーは迫り来るパトカーに立ちはだかり……。
「馬鹿め。我が催眠能力に敵など無い」
そう言ってパトカーに向けて手をかざし……。
え……えっと……。
「すいませんね、ウチのリーダー、チート能力に頼りきりになってる内に……すっかり、阿呆になったんです……」
「魔法少女になる前は……すごく頭が良かったのに……何で、こうなったんだろ?」
誘拐犯の生き残り2名が、そう解説。
どうやら、パトカーに乗ってた警官に催眠をかけたようだけど……車はすぐに止まれない。
誘拐犯のリーダーらしい馬鹿は……パトカーに轢き殺された。
ついでに……阿呆を轢き殺して急停車したパトカーの窓ガラスは……内側から真っ赤に染まっていた。
どうやら、パトカーに乗ってた警官の皆さんも無事じゃないっぽい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます