(4)

「あ……ありがとう……って、横ッ‼」

「ふみゅみゅ〜ッ‼」

 顔は怖いけど、気は弱いらしい恐竜が、あたしを背中に乗せて逃げてくれた。

 でも……。

 スピードは、この顔は怖いけど気が弱い恐竜の方が上。

 小回りが効くのは、チビ恐竜たちの方。

 そして、ここは曲りくねった山道。

 あたしを乗せてる恐竜は、カーブを曲りそこねて転倒しかけ……チビ恐竜は、ジャンプしてあたしを狙うけど、外れて……デカい木に激突……と思いきや、足でその木を蹴って方向転換。

 揺れる。揺れる。揺れる。

 舌噛みそうになる。

 何だよ、この世にも馬鹿馬鹿しいカーチェイスならぬ恐竜チェイス。

 決めた。

 もし、万が一、女優になっても(なりたいと思った事は無いけど)ワイルド・スピードにだけは出演しないッ‼

 そして……。

 やった……。

 山道を抜けて……阿蘇山の周りの草原……草原……。

 ♪どたどたどたどたどたぁぁぁぁぁぁッ‼ って感じのバカデカくて、妙にリズミカルな足音が……あたしを乗せてる恐竜以外にももう2つ?

 2つ?

 あああああ……。

「大丈夫ねッ⁉」

 片方は……一番顔を見たくない恐竜……。

 な……何で、スーちゃんがここに居……?

「ふみゅふみゅ〜♥」

 あたしを乗せてる恐竜は、喜びの声をあげて、スーちゃんに駆け寄る。

 しまった、あの阿呆恐竜の知り合いって事は、スーちゃんの知り合いでも……。

 ああああ……でも、多分、今、スーちゃんに変身してるのは、ずっと友達だと勘違いしてた、あの@#$%レ○プ魔の真子ちゃんだ……。

 嫌だ。嫌だ。嫌だ。

 もう、あんなの嫌だ。

 せめて、レ○プなら、人間に理解可能なレ○プで勘弁して……。

「ふみゅ〜♥ ふみゅ〜♥」

 そこに、あたしを乗せてる恐竜に似てるけど、ビミョ〜に違う鳴き声が……。

 な……なんで?

 そこには……体の模様やタテガミの色は、あたしを乗せてる恐竜にそっくりだけど……眠そうなのか泣きそうなのか判んない感じの顔の恐竜が……もう1匹……。

 って、やめろ。

 やめて。

 やめて下さい。

 吐く。

 吐く。

 吐く。

 揺れ過ぎて吐く。

 だから……何で……背中に人を乗せたまま仲間とじゃれ合うんじゃねえ、この阿呆恐竜2号ッ‼

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