(7)

 ところで、ここ、どこなのだ?

 おい、阿呆恐竜、いつの間に、あたしの体を乗っ取った?

 人間さんが、何か、速く走りたがってたので、変身したのだ。

 余計な御世話だッ‼

 でも、理由はよくわかんないけど、あの時、人間さんは、あの場所から逃げ出したがっていたのだ。

 まぁ……たしかに……。

 ところで、おなかすいたのだ。ガジくんは、食いしん坊なのだ。

 もうだ、助けて。

 何から助けて欲しいか、ガジくんには、よくわかんないのだ。でも、1つだけわかってる事が有るのだ。この辺りには、助けてくれそうな人間さんも恐竜さんも居ないのだ。

 くそ……。

 あ……お肉の匂いなのだ。すごく、いい香りなのだ。

 おい、お肉の匂いって……これ……焼肉の匂いだぞ……。何で、こんな所から焼肉の匂いが……?

 ともかく行ってみるのだ。おなかがすいてるのだ。

 何か変だぞ。行くな行くな行くな。

 でも、このままでは、おなかがすいたままなのだ。

 え? ここ……キャンプ場? って……あ〜駄目ッ‼

 お肉、見付けたのだ。食べるのだ。

 おい、これ、どう考えても、キャンプに来てる人が焼いてる肉……。

 その人間さんには、後でごめんなさいすればいいのだ。ガジくんは、おなかがすいて仕方ないのだ。

 だから……やめろって……。

 がじがじがじ。むしゃむしゃむしゃ。

 ああ……あ……やっちゃった。

「ぎゃお〜ッ‼」

 その時、怒りの咆哮と共に……あたしの首筋に何かが噛み付き……。

 鳥? いや……翼っぽいモノは有るけど……飛べるようには見えない。

 それに、鳥にしては……足がやたらと太い。

 しかもデカい。ガジくんよりは小さいけど……人間が襲われたら……。

 そうだ……鳥のように……薄水色のニワトリのヒヨコみたいに見えるけど……図体はデカくて、口の中には牙が何本も有る。

 幸か不幸か、ガジくんの皮膚がやたらと頑丈なんで傷は付かなかったけど……。

 あ、そっか、人間さんのお肉じゃなくて、キミのお肉だったのか、なのだ。

 ごめんなさい、なのだ。

 ゴドォッ‼

 けど……その……鳥の雛みたいだけど鳥の雛じゃないナニかは……牙が通じないと判ったらしく、今度は体当り。

 何か、ややこしい事になった。逃げよう。

 と思ったら、また、体当り。

 更に体当り。

 逃げても体当り。

 ガジくん、悲しいのだ。友達を怒らせてしまったのだ。

 おい、知ってる相手か?

 ガジくんの友達なのだ。まだ、子供だから、姿がちょっと違うけど、ガジくんやスーお姉ちゃんの仲間なのだ。

 えっ?

 あの子は……ガジくんの友達の「凶暴6姉弟」の1恐竜ひとりのアサギちゃんなのだ。

 え?

 6姉弟って何? 他にも居るの?

 と思った途端に、両脇腹に何かが同時に激突し……。

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