(2)

「あ……あの……そのティラノサウルスと……何が……有ったの?」

 あたしは、ウチの新しい住み込みのバイトと称する……角竜にそう聞いた。

「敵だ。俺様が倒すべき敵だ……」

 ちょ……ちょっと待って……。

 スーちゃんは、あのサイズでも、一応、肉食恐竜だから……えっと……。

「あ……あの……」

「何だ?」

「そ……そのティラノサウルスに、家族でも食べられたとか……?」

「違う」

 へっ?

「俺様は中生代で地上最強の恐竜を目指していた」

 な……なに……を言ってるの?

「その為に……まず、町内最強の恐竜と言われた奴を倒そうとした」

「町内?」

「……ああ、町内と言っても、恐竜にとっての町内は、人間の基準より遥かに広いがな」

 えっと……そんな事は訊いてないけど……。

「どれ位?」

「阿蘇山の周囲の草原全部ぐらいの広さが、恐竜の感覚では『1つの町内』だ」

「あ……そ……」

「しかし、俺様は用心深い。あの凶暴な怪物に下手に挑むのが無謀なのも判っていた」

「あ……あ……えっと、そんなに恐い相手だったの?」

「ああ……。だから、俺様は、スーが普段やっているトレーニングを観察し、その真似をした」

「へっ?」

「みろ……」

 そう言って、その角竜は体の向きを変え……。

「これが、俺様が厳しいトレーニングをやった結果、受けた傷だ」

 た……たしかに……いくつもの……あれ? この傷跡って……噛み跡?

「それなのに……奴は……強くなった俺様に恐れをなして逃げた。この時代にな……」

 え? 待って、スーちゃん、この角竜さんが苦手……やった……ひょっとして……。

 手を切れる。

 この子を巧く使えば……あの自称「獣脚類の妖怪」とおさらば出来る。

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