(3)

 なんちゅ〜夢だ。

 現実じゃないよな……。

 もし現実だったとしても……幸か不幸かウチの牧場じゃなかった。

 朝になって目が覚めた後……食欲が無い。

「おい、優希、朝飯は良かとか?」

「いならい」

 お父さんに、そう答えて、あたしは自転車に乗る。

「おはよ〜ございます」

「あ、おはよ〜ございます」

 途中で、お父さんの牧場で働いてるベトナム人のユンさんと出会でくわし、挨拶。

 一番近い公立図書館で夏休みの宿題をやるつもりだけど、この時期は開館三〇分前に並ばないと読書室の席が取れない。

「あ〜、優希ちゃん、お早う〜」

 そろそろ町中に入るあたりで、後ろの方から声。

「おはよ〜」

 声の主は、同級生の菊池真子まこちゃん。

「今日も図書館?」

「うん?」

「悪かけど、今日は勉強は無しにしてもらえんね?」

 だが……。

 今は夏休みだ。

 天気予報では真夏日だそうだ。

 でも……寒けがした。

 いや……「寒け」なんて言葉は……生易なまやさしい。

 その小学校高学年ぐらいの女の子の声に聞こえるインチキ九州弁で、あたしの背筋は一瞬にして凍り付いた。

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