第一章:「良い子のみんな♪ この恐竜さんと遊ぼ〜ね〜♡」から始まる東京焦土作戦

(1)

威力は先方が持てばよい。

自らの威力が自らの国を滅ぼすなり。

これ兵法の極意なり。

山口貴由「覚悟のススメ」より


 夢だ……。

 夢だと信じたい。

 突如として現われた「スーちゃん」を名乗る自称「中生代から来た獣脚類の妖」に、どう考えても魔法少女じゃない魔法少女にされて数ヶ月。

 最初にスーちゃんが「妖怪」と名乗った時、普通は「妖精」だろうと思った。あの、ちょっと恐めの顔のティラノサウスルみたいな姿(ぬいぐるみサイズだけど)だとしても。

 しかし、スーちゃんのせいで起きた事態は……あの子は「妖怪」でも生温なまぬるい。

 厄病神だ。魔神だ。悪鬼だ。

 あの日、起きた事は……夢だと信じたい。

 けど、あの日、政府要人に加えて天○○下まで行方不明になったのは……事実だ。

 あれが夢じゃないなら、みんな、あたしが殺した。

 ネット上には、スーちゃんが「ガジくん」と呼んだ、あのマヌケな顔の恐竜が新宿の町を疾走する動画がUPされては……すぐに削除されている……らしい。

 何故か、あの日から、東京あたりでは謎の死が相次いでいるらしい。

 ただ、あたしは殺した覚えが無い。

 東京の人口は、ほんの数ヶ月で万単位で減ったそうだ……あくまで噂だけど。

 何が、起きてるか判らないけど、あの日からスーちゃんは姿を現わしていない。

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