魔法少女☆優希♡レジイナ♪
@HasumiChouji
新宿御苑大虐殺
「えっ? これが、あたし?」
今、居るのは、どことも判らない都会の町中。
あたしはビルの窓ガラスに写った自分の姿を見る。
イメージカラーは赤とピンクの中間ぐらいの色。所々に白のストライプ入り。
瞳は片方が茶色で、もう片方が緑。
髪は金髪。
ありがちだ。
ただ一点を除いては、ありがちだ。
ありがち過ぎる。
安いオタク向けのテンプレ通りだ。
子供だましを最も嫌うのは子供だなんて良く聞くけど……こんなオタクだましのテンプレ満載の代物にオタクが騙されるなら、全世界のオタクを頭から食……うわあああ……あたし、何考えてんだ?
「行くで、ガジくん。
あたしに魔法の力をくれた妖
「し……新宿? ここ東京?」
「そうやけど……詳しい話は後。とっとと
い……いや……待って……。
周りに居る数知れない人達は、当然、騒いでいるが……言われてみれば……しゃべり方が「東京弁」に聞こえる。
本当に……あたしは変身した途端に、九州の阿蘇から東京の新宿にワープしたのかも……。
「ボ〜っとしとらんで、行くで、ガジくん」
「あと『ガジくん』って何? あたしの名前は優希……」
「あんたの、
「ちょ……ちょっと待ってよ……」
あたしは、豹柄に赤い鬣、ちょっと恐そうな顔の宙に浮いてるティラノサウルスのぬいぐるみ
「ああああ……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
あたしが道路を駆けると……次々と、
「謝るのは後でも出来るけん、まずは、今、やらんといかん事をせんと」
「そう言っても……」
一応、スーちゃんと意志疎通は出来てる。
しかし、あたしの口から出るのは……どこかマヌケだけど、周囲のビルの窓ガラスを震わせるほどのバカデカい咆哮。
もちろん、人間の言葉には聞こえない。
「ゴチャゴチャ言わんで、ウチに付いて来て」
「わかったよ」
走った。
走った。
走った。
赤とピンクの間ぐらいの色の体に白い虎縞。
頭のてっぺんから尻尾の先にかけて、モヒカン状の金色の鬣。
ひょっとしたら「可愛い」と思う人も居るかも知れない、マヌケでとぼけた感じの顔には巨大な口。
その口の中にはやたらと頑丈そうな、これまた大きな歯。
下顎も……太い骨も簡単に噛み砕けそうなほどにゴツい。
無意識の内に尻尾を振っている事に気付く……。多分、全力疾走している時にバランスを取る為だろう。
手は小く退化している上に指が2本しか無いので、何の役にも立たないだろうけど……その代り足はブッ
どうやら、東京の新宿らしい町中を、一匹の恐竜が疾走していた。
無数の人達に大迷惑をかけながら。
そして……最大の問題は……。
何で?
何で?
何でなんだよ? 何で、ここだけ「魔法少女」もののテンプレをガン無視してんだよ?
その恐竜は、魔法で変身したあたしだったのだ。
「なっ……なんだ、あれは? ほ……本部……警備本部、応答願います」
辿り着いた場所に居たのは、何人もの警官。
「は……発砲許可を……えっ? そ……それが……」
何かが変だ。
あたしは警官の内の何人かに対して強烈な殺意を感じ……。
「う……うわあああ……」
ぶちゅッ……。
その内1人を思わず踏み潰し……。
警官の首から下はミンチ。
生首だけが転がり……な……なんだよ、これ……。
「判ったやろ……こいつらは人間を支配しようとしとる邪悪な蛇人間どもやッ‼」
スーちゃんがそう叫んだ。
たしかに警官の生首は……鱗だらけで、人間と蛇を混ぜ合せたようなモノに変っていた。
「行くで、
「本日は、お日柄も良く、政府関係者および天○○下に御臨席いただき、誠に有り難く存じます。我々、魔法界と日本国との友好条約の調印式を、これより執り行いたいと思います。我々の魔法技術は人間界諸国の内、日本にのみ提供いたします。これで日本は再び先進国となるでしょう。条件はただ1つ。日本国臣民の皆さんが我々を上位存在と認める事のみです。これによる日本国臣民の皆さんの生活への悪影響は一切無い事を誓い……ん? おや?」
何かのイベントらしかった。
ステージとズラっと並んだ椅子。しかし、居るのは、黒っぽい背広のおじさんばかり。
椅子に座ってたおじさん達の何人かが突然、変身。
「ふざけんじゃねえ、何が『魔法界』だ。んなモノ存在しねえだろう」
えっと……河童? いや……亀人間?
「スーちゃん、何だよ、あれ? 蛇人間以外にも何か居るの?」
「そりゃ、色々と。ともかく、どいつもこいつも人間を支配しようとしとるロクデナシどもやけん、皆殺しにするで」
「残念だったな。
「何言ってやがる。俺達こそ、平清盛の時代からのこの国の真の支配者だ。てめえらみたいなポッと出の
「お……おい……待て……あれ……」
亀人間集団を飛び越え、あたしはステージ上に着地。
さも当然のように急拵えらしいステージは大破。
そして、ステージ上に居た人達は、蟻地獄に落ちた蟻のようにステージが壊れるのに巻き込まれていき。
さっき警官を殺した時に感じた殺意が……正確には、何倍も強い殺意が、あたしの体を支配していた。
あたしの足は、その殺意が一番強く向けられた相手を噛み殺し……あ?……え?……ちょ……ちょっと待って、今、あたしが上半身と下半身を強制的にお別れさせた人って、確か……。
「えっ?」
「な……」
「そ……そんな……」
「どうなって……」
何故かあたしは……その人の上半身をステージの下に捨てた……。
そして、ステージ上から地面に落ちた時には……その人の頭は……人間のモノではなくワニの首に変っていた。
「がじっ♪」
何故か脳天気な声を上げて、あたしが体を一回転させた途端、無数の破片と化した「さっきまでステージだった物」は近くに居た人達に次々と突き刺さり……うわああああッ‼
ああああ……あたし、何やってんだぁぁぁぁッッッッ‼
ひょっとしたら、この人(?)達の中にも、いい人も居たのかも知れない。
でも……1分後には、蛇人間と亀人間と何の罪も無いまま巻き込まれた警官と自衛隊員と普通の人間だったらしいおじさん達の死体が辺りに転がっていた。
銃弾が何発も発射されたけど……半分以上は外れて流れ弾になり、死体を増やすのに貢献した。
そして、今のあたしの皮膚と筋肉には、対人間用の銃弾など通じなかった。
ちょっと運動したから……お腹すいたな……。
あ……ちょうど、ここにお肉が沢山……あああああッ‼ 今、あたし、何を考えてたッ⁉
「君達はマヌケかね? この国の王の一族が我々と同じレプタリアンだと千年近くも気が付かなかったのか?」
「てめえらこそ、阿呆か? その呪的条約は人間相手を想定して作ったモノだろ? もし、相手が俺達と同じレプタリアンだった場合、何が起きる?」
「い……いや……ちょっと待て、今、確認する……。ん? あ……。しまった、マズい」
次の瞬間、あたしが着地した事による地響き。
あたしの全身の筋肉を総動員した尻尾の薙ぎ払いは、最後まで生き残っていた蛇人間と亀人間のリーダー格らしいおじさん達を一瞬にして絶命させ……ついでに、もし、あのまま調印が行なわれていた場合、蛇人間達にとって、どんなマズい事が起きたのかは永遠の謎になった。
「ねえ……スーちゃん、実は、この爬虫類人間の方が普通の人間より数が多いなんてオチは無いよね?」
「そん時は、そん時になって考えりゃええ‼ 当面は、人間界に潜む悪のレプタリアン達を殺して殺して殺しまくるで‼」
「嫌って言ったら?」
「人間に戻れんでも良かとなら……好きにせんね」
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