エピローグ

 週明け月曜日の学校は大騒ぎだった。



 あの後彼女は何の奇跡もなく、死んだ。


 そうして帰宅すれば理於も甘も無事だった。びしょ濡れの格好について色々と言われたが、その日は何もする気力が起きずに泥のように眠った。


 日曜日の昼過ぎに目覚めて、ふと小屋に戻ると、彼女は土の中に居た。そうだ、俺が埋めた。


 そしてふと思う。彼女の存在は、よくあるアニメみたいに概念ごとなくなってしまうのか、と。そうでなければ彼女は失踪したことになってしまう。


 ただ、彼女の言うことには、それで学校側が嬉々とするかもしれない、ってことだ。今考えても胸糞悪いが、おそらくはうまく回るんだろう。


 普段ならこんな事をして、正気でいられない。なのに今正気でいられたのは、彼女の死体がとても綺麗だったからだ。



 登校して早々にやけに騒がしいなと思っていたら、予想外に噂が飛び交っていた。


「ね、椎倉時雨って消えたの? やっぱり都市伝説とか、幽霊だったんじゃない?」


「ちょっとやめてよ!! めっちゃ怖い、本当に無理だったの私〜!!」


 あちらこちらでそんな話が聞こえてくる。何で今になってそんな話になったのか。それは朝礼で担任が言い放った言葉。


「えー、椎倉時雨さんは行方不明になりました。この件は学校で調査中なので、他言無用です。以上」


「……おい、それだけかよ」


 思わずぼそっと呟いてしまうが、例によって誰も気がつかない。


 彼女は確かに認識されていた。そして、登校してこないことを見て、誰かが”駆除した”とでも思っているのかもしれない。


 腸が煮えくり返る、かと思いきや内心は冷静だった。窓から見える景色は、1週間前のまま。彼女が来てからの1週間は俺の中で最も濃密な1週間だった。


 休み時間、俺はそっと後ろの席に中庭に生えていた花を添えた。きっと今年度が終わるまで、この机は埃を被り続けるんだろう。それなら、その度に俺が掃除をすればいい。今度は誰からも何も言われないんだ。


「……夢、みたいだったな」


 いや、夢じゃない。覚えてるんだ。約束しただろ。


「ねね、フミヤンフミヤン」


 と、十郎に声を掛けられる。振り向いて表情を見ると、あの時のような怯えた顔ではなく、いつも通りオタオタしい十郎そのものだった。


「ん? あぁ、レイサたんだろ、今日見るよ」


「よっしゃ! 頼むよ? また今週の展開が最高だったんだから!」


「あ、そういや十郎」


「それで、ボスが出てきた瞬間……って、どしたん?」


「……刀鍛冶が出てくるようなアニメってなかったっけか」


「え、刀鍛冶? どしたの急に」


「いや……まあちょっと、今のうちに来世に備えようかと思って、さ」


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