第5話 前へ進もうとするぼっち達
街に戻りクエストの報告を終えた頃には日も沈みかけ、オレンジ色の光が疲れをじんわり癒してくれる。
俺たちはギルドで夕飯を食べながら明日の赤竜討伐について話し合う。
「お姉さん! ウィスキーをジョッキで。あと草食竜のステーキをプロテインソースで頼む」
「わたしはミートパスタを5皿。モモちゃんは?」
「ポテチ!」
給仕のお姉さんはモモの頭を軽く撫でてから厨房へ向かっていった。
料理を待ちながら俺は赤竜攻略のコツをアンナに説明する。
「閃光花火を使って目を晦ませれば地上に降りてくる。何度も通用する方法じゃないから、効いてくれるうちに協力して利点を潰す。お前は翼を重点的に狙ってくれ。俺は閃光花火で妨害し、隙あらば頭を殴って昏倒させる」
「赤竜の翼ってすごく固くなかった?」
「だからこその銃槍だ。突き入れてド龍撃砲でぶっ壊してやれ」
「わかった。地上に降りてきたらド龍撃砲ね?」
「ぶっ放す前に周りをよく見てくれよ?」
「おk じゃごはん食べましょ」
料理が届いた途端に話を打ち切るアンナ。 こいつほんとにわかってんのかな? 心配になってきた。
まあ、赤竜ぐらい軽く狩れなきゃ上級者なんて名乗れないし、失敗したらまた挑めばいい。俺も話を切り上げ、食事を楽しむ事にした。
夕刻。
「ねえミューリ。これからずっとアンナさんと組むの?」
食事を終え帰宅し自宅でくつろいでいると頭の上からモモが声をかける。
「ああ。初日からとんでもない目にあわされたけど、それはアンナもお互い様だ。
何より、俺たちには仲間と連携する技術が全然足りていないってわかったよ。
俺もアンナも、もっと成長しなくちゃな」
「アンナさんも結構周り見ないもんね。ぷぷ……ぶっ飛んでくミューリ思い出した!
ピャアウ!って!! なにあの悲鳴!! ぷぴぴぴ!」
「うるせえよ。まあお前もアンナと自由に会話できるし、これからは退屈しないで付いて来れんだろ?」
「うん。ありがとねミューリ」
モモの頭を撫でながら微笑むミューリ。モモも嬉しそうにピュイピュイとさえずりながら目を閉じる。 今宵は風が心地よく、ソファーでくつろぐ柔らかさが彼らをいつしか眠りへと―――
「ミューリ!!!!!」
導かれなかった。
ダイレクトで無断侵入してきたアンナへミューリが悪態をつく。
「クエストは明日だぞ? とうとう時間もわかんねえほど頭仕上がっちまったのか?」
「泊めて!」
「は?」
「わたしの家に黒い悪魔が出たの!あんなとこじゃ眠れないの!」
「お前頭だけじゃなくて私生活も残念な奴だったんだな……」
床に座り込んで泣き出してしまったアンナの肩へモモが飛び乗り
また怪しい会話をしようとする。
「フラグも立てずに侵入とな!? グッドでおじゃるよアンナ殿。では麻呂が同衾へ導く奥義をさずけ…痛いんだってやめてってば!!」
俺はアンナの耳元でささやくモモを鷲掴みし逆さまにする。
「はい麻呂ごっこおしまい。今日はモモもアンナと一緒に2階で寝てくれ。
俺はソファーで寝る。おやすみ」
「「えぇ……」」
こいつらが揃うと朝まで騒ぎかねないので俺の方から寝てしまうことにする。
モモとアンナは渋々2階へと上がって行く。
騒がしかったが良い一日だった。ミューリは微笑し、眠りについた。
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