第九十三話:KAWAIIは作れる!
足取りが重い……
ギルドでの登録が終わった私はルーシィさんとチェスカに付き添われて武器屋に向かっている。
私が前に課題としていた”いい加減、武器を手に入れる”問題を解消するため。
課題が解消されるかもしれないのに何故に足取りが重いのかというと……
そう、先程のギルド内での出来事である。
◆
”
確かに、あの時は頭で考えるよりも先に身体が動いた事は認めましょう。
誰も間に割って入ってくれなかったとしたら、あの男の息の根が仮に止まったとしても多分殴り続けてたと思います。
でもね……
どの小説の主人公にもこんな物騒な名前つかないわよぉ……
しかも私、女の子なんですけど……。女の子につけていい名前じゃない。ゼッタイに!
項垂れている私にルーシィさんとチェスカさんが慈愛に満ちた目で、優しく私の肩をなでる。
「”
…………は?
なんですか、急に…… 商品の販売促進に使用されていそうな謳い文句はどこから来たんですか……。
”可愛いを作る”事が私への慰めになったとしても”
「付けられてしまった烙印はどうにもできないから、もっと可愛くして印象を変えようっていう話なの」
もういっそのこと開き直って可愛いを作れたら周りの人達も
「うーん、そんなもんですかね?」
なんか思考が楽観的過ぎる気がしないでもないんだけど……。
「最初は思い付きでいいんだよ。試しにやってみてダメだったら他の手を考えればいいじゃない?」
一理ある。周りの人たちに何が有効で有効じゃないかを色々試しながら周囲の反応を確認するしかないか。
「そうですよね…… 表面上でも可愛く見せれば狂犬なんて呼ばれなくなりますよね」
私は別に”可愛い”、”可愛い”を連呼して欲しい訳じゃない。ただ少なくとも
「その意気よ! マルミーヌちゃん」
ルーシィさんとチェスカさんは二人揃って私に笑顔でサムズアップする。
精神的に落ち着いてきた。二人がいてくれて良かったと思った。
「実は欲しいものがあるので買い物に行きたいのですが、お二人におススメのお店を教えて欲しいんです」
「おお、いいね。何が欲しいの?」
「武器です」
二人は目をぱちくりさせながら私に再確認を求めていた。
「ごめん、聞き間違いかもしれないからもう一度お願い」
「武器です」
「なんで…… 武器……?」
「私ずっと素手だったじゃないですか…… それによる反省点も見えましたので」
そう、私の課題は武器が無い事と、遠距離攻撃が無い事。
その問題点を解消する為に、武器屋には行かないといけないと思っていた。
「
二人は思っていたのと全然違うと少々…… いえ、全く乗り気ではない様子。
でも私は今の所、武器以外に欲しいものがピンと来ていない。
勿論、狂犬という言葉を排除する為に着飾る必要があるなら吝かではないけど、それで動きにくくなってしまったら本末転倒になってしまう。
「案外あるかもしれませんよ、
「ふむふむ、最近顔を出していなかったからいい機会かもしれない。行ってみようか…… 武器屋」
王都以来、武器屋に顔を出した事が無かった私は嬉しくなって、早速立ち上がる。
冒険者が多い街だし、当然武器屋も相応に品質や数に優れているのではないかと期待している。
三人で武器屋に行こうかという時にやたら視線を感じるので、そちらを振り向くと……
先程、私に絡んできた男と同じタイミングで私の事を見ながらニヤニヤしていた連中だった。
私と目が合うなり逸らして仲間内で何かを話をしている。
『バカ、
『あの惨劇を見ただろ……。トニーと同じ目に遭いたくないなら、あまり近づくなって』
『目を合わせただけでやられるぞ』
心が折れそうです……。
◆
というわけで今に至るわけである。
よーし、行きましょうと言って入口に向かう度に凹む事を言う人の声が続出してたので、ショックを受けてフラフラしながらギルドを出たわけです。
全員顔は覚えたから、覚悟しておきなさい。
「なんでトニーさんと喧嘩する事になったの?」
ルーシィさんに経緯を話す事になった。
私の身なりにケチをつけて煽り始めた事。ここまでは別にどうでも良かった。
でも…… 家族や大切な人の事を侮辱されたので、口に出した事の責任を取らせただけと話をした。
「マルミーヌちゃんは家族と仲がいいんだね……」
「はい、両親は親バカですし、兄はシスコンですし…… 疲れる事も多々ありますけど、愛されてる実感は毎日感じてます」
ルーシィさんの表情は少々険しい。
「そう…… 羨ましいな、私も…… いい加減……」
「ルーシィ……」
チェスカさんが珍しく心配そうな表情でルーシィさんを見ている。
ご家族と何かあったのかしら……。
しかし、それ以上にチェスカさんが他人を心配する事があるんだなって吃驚した。
そんな話をしていたら目的地である武器屋が見えて来た。
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