最終話 全能神、魔神と戦う

「ヴィシュヌさん、逃げましょうってぇええ!! 魔神ウーノなんて勝てませんよぉおお!!」


 やれやれ。

 海城がうっとおしいな。

 こんな奴は放っておいて、今直ぐにでも俺が出て行きたいところなんだがな。

 

 しかし、上空で戦えば大勢の人間に見られてしまう。

 俺の存在がバレるのはまずいんだ。


 俺は心の声を奴に飛ばした。


『おい、カイ。聞こえるか?』


「は? この声はシンジさんっすか!?」


『きょろきょろするな。心の声で話している』


『心の声!? もしかしてテレフォンパシーってやつですか!?』


『それを言うならテレパシーだ』


『ああ、それっす!』


『お前がウーノを倒せ』


『いや、無理無理。さっきの攻撃見たっしょ!? 一撃でレレイーラとゴォスがデッド判定を受けたんすよ! 勝てるわけないですって!』


『安心しろ。カイ1人なら操作は楽だ。奴の攻撃は当たらない』


『あ! じゃあ、俺は攻撃に徹すればいいんですかね?』


『そういうことだ』


『うは! 俄然やる気が出て来ました!! 絶対負けない戦いならば楽勝っす』


 海城は剣を抜き魔神ウーノに斬りかかった。


「おりゃあああああ!! この魔法剣士カイ様の一撃を喰らいやがれぇえええええ!!」


カンカンカン!


 と、ウーノは人差し指で受け太刀してしまう。

 

 すげぇな、あの魔神。

 俺の大好きな漫画にこんなシーンがあったっけ。


「目障りだ。蠅め」


 ウーノが手を翳すと暗黒の波動がカイを襲った。


「ひぃいいいッ!!」


 おっと、そうはいくか!

 

 俺は即座に海城の体を移動させた。


「ほぉ……。動きは妙に速いな」


 俺が操っているからな。


「この剣士は俺が相手をする。お前たちはヴィシュヌを殺せ」


 ウーノの指示で108体の魔族たちがヴィシュヌを襲う。


 その力は魔神ほどではないが、相当に強かった。

 彼女は魔族の攻撃に苦戦しているようだ。


 早くウーノを倒してしまおう。


『ひぃええええええ! シンジさん大変っすぅうううう!!』


 なんなんだよ。

 まったく。


『どうした?』


『俺の鑑定眼でウーノのステータスを見たんっす!!』


『ほぉ。だから?』


『絶対、勝てませんってぇええええええ!!』


 やれやれ。

 どれ、奴の力がどれほどのものか見てやろうか。




名 前 ウーノ


種 別 魔神


レベル 87


体 力 9000


攻撃力 7000


敏 捷 4000


知 力 6000


防御力 8680


魔 力 5000



 


 なるほど。

 確かに強いな。

 この強さではヴィシュヌでも勝てまい。


『道理で攻撃が通じないはずです!! 俺の攻撃力は520っすよ!! こんなの勝てっこないですよ!! 逃げましょうぅううう!!』


 やれやれ。

 

『安心しろって。お前はただ全身の力を抜いて、俺に委ねてくれればいいんだよ』


『無理です無理無理!! 殺されてしまいますってぇえええ!!』


『ジタバタするな。操作の邪魔だ』



ドォオオオンッ!!



 と、ウーノの肘が海城の顔面にヒットする。

 その衝撃で100メートル以上吹っ飛ばされた。


「ほげらぁ……」


 ほらぁ、言わんこっちゃない。


 海城の顔面は、破壊されて骨が粉砕しているようである。

 

 やれやれ。

 早く治してやらんとデッド判定を受けてしまうな。


再生リカバー!』

 

 海城の顔面は瞬時に再生。

 しかし、さっきの一撃で気を失ったようだ。


 丁度いい。

 眠ったままの方が操作がしやすいな。


 俺は海城を猛スピードで移動させて、ウーノの前へと対峙させた。


「き、貴様……。眠っているのか?」


 さぁ、バトル再開だぞ。

 さしずめ、さっきのはラウンド1。

 こっからはラウンド2だ。

 

ブゥウウウウウウンッ!!


 海城の斬撃がウーノを襲う。


「う! なんだ、この速さ!?」


サクンッ!!


 と、チーズのように切れたのは、ウーノの人差し指である。


「んぐッ! さっきと威力がまるで違う!!」


ブゥウウウウウウンッ!!

ブゥウウウウウウンッ!!

ブゥウウウウウウンッ!!


 ウーノは必死で避け始めた。

 

「クッ! は、速い!!」


 たまらなくなった奴は槍で受け太刀をした。


ガキィイイイイインッ!!


「ぬぐぅうううッ! す、す、凄まじい力だ!!」


 ふふふ。

 まだまだこんなもんじゃないぞ。


 そりゃそりゃそりゃあ。


ガキィイン!

ガキィイン!

ガキィイン!


「ぬぐぅッ!! い、一撃が重い!!」


 格ゲーはあんまり得意じゃなかったけど、そんな感じだな。

 プレイキャラが海城ってのが、なんか嫌だけどな。ははは。


 ↓↙︎←パンチで波●拳だ。

 ←↓↙︎パンチで昇竜●!!


 ほりゃ!


カキィイイイイイイイイインッ!!


 と甲高い接触音とともに、ウーノの槍は天高く飛ばされた。


「お、俺の槍がぁあああ!?」


 さぁて、フィナーレだ。


 海城は大きく剣を振りかぶった。


「お、お前……。一体、何者だ?」


 俺か?


 俺は、






 全能神、ゼクスアラードだ。






ザクゥゥウウウウウウウンッ!!




 魔神ウーノは真っ二つ。

 正中線から二つに分かれて消滅した。


 さて、あとは雑魚だけだな。


 海城を巧みに操作して108体の魔族をぶった斬る。


ザクザクザクゥウウウウウウンッ!!


 瞬く間に消滅した。


「あは! 流石はゼクス様です!!」


 俺は気を失ったままの海城を、そのまま王都の中央広場へと着陸させた。


 上空の戦いを見ていた者たちは海城の元へと集まった。






「カイさん。起きなさい」


バチンバチン!


 と、ヴィシュヌが海城の頬を思い切りビンタする。

 その頬は真っ赤に腫れ上がっていた。


「ほえ? あ、あれ? 俺どうしてここに?」


「あなたは気を失っていたのです」


「あ、そうだ! 俺は魔神の一撃を喰らって……。痛てて……。だから頬がこんなに痛いのか!」


 それはヴィシュヌのビンタのせいだ。


 みんなは海城を絶賛した。


「うぉおお!! 魔法剣士カイが王都ロントモアーズを救ってくれたぞぉおおお!!」

「うわぁああああ!! 魔法剣士カイは英雄だぁああああ!!」

「無敵の魔法剣士! ありがとう!」

「ありがとうございます!!」


 やれやれ。

 少し癪だが良しとするか。


「ぎゃはは! 俺様、やっちゃったかな? 気を失いながらも魔神を倒しちゃったってことだよね。だはは。この賞賛はたまんねぇな!」


 と、その時である。

 群衆の中の子供が、上空に光る物を見つけた。


「ママ。あれなぁに?」


 俺も上空を眺める。


 なんだろう?

 こっちに近づいて来るようだが……?


 それは、さきの戦いで、俺が海城を操って吹っ飛ばした魔神ウーノの槍だった。


 いかん!

 こっちに向かって飛んでくる!


「みんな逃げろ!!」


 と、俺は思わず大声を出した。


 気がついていないのは浮かれ気分の海城だけである。


「ギャハハ。もっと賞賛しろっての。俺は英雄だぞ」


 槍は、海城の頭上から一直線に貫いた。



ザクン……!!




「ぐはっ……。な、なに……? ごれ?」


 

 即座に【Dead】表示が出たかと思うとアナウンスが流れる。



『即死ダメージを受けたので強制ログアウトを執行します』



 やれやれ。

 ま、こいつにはこういうオチがお似合いだな。

 おかげで俺が目立たなくて済んだよ。






 そんなこんなで、全能神の快適な生活は続くのであった。

 

 魔王グフターを消滅させる方法は、楽しみながら模索するとしようか。




 快晴の空を見上げる。


 ふふふ。

 ここは俺の世界。


 俺は全能神、ゼクスアラードだ。



 おしまい。


────────


ここまで読んでいただきありがとうございます。

面白ければ星の評価をしていただけると幸いです。


また、次の作品でお会いしましょう。

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全能神の俺、1億年眠ってました〜神々の戦いが終結したら、いつの間にか人類が誕生して俺を崇めているようです。V Rゲームが現実になったようなので、そのまま頂点に君臨させていただきます〜 神伊 咲児 @hukudahappy

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