第11話 全能神、家来を得る

 俺が正体を明かしたことで、海城たちは驚愕していた。


「ゼクスアラードはこの世界を創った全能神だ! どうしてここにいるんだよ! それに全能神である証拠はあるのか!?」


 証拠ねぇ。


「今までの力を見てて、証拠は必要か?」


「う……! し、しかし証拠がないと信用なんてできん!!」


 やれやれ。

 少し力を見せてやるか。





「じゃあ、ほい!」





 俺が手刀で空を斬ると、その真空波が海城の体を切り裂いた。

 上半身はちぎれ、地面に落ちる。



「ぎゃああああああッ!! 俺の体がぁああああああ!!」



 すぐに回復してやるよ。


全能法オーリック 再生リカバー


 海城の体は光に包まれて元に戻っていた。


「か、回復した!?」


「な。わかったろ?」


「な!? なんだったんだ今の? デッド判定を受けなかったぞ?」


「判定を受ける前に、一回殺して回復させたんだよ」


「殺すな!」


「そうでもしないと信じないだろ」


「そ、それにしてはおかしくないか? このゲームはレーティング規制が12歳以上なんだ。あんな残虐な表現はできないはずだが?」


「神だからな」


 僧侶レレイーラは汗を垂らす。


「そ、それに回復速度も異常に早かったわよ。最上位の回復魔法ギガライフでもそんなに早く回復できないもの……」


「俺が使うのは魔法じゃないんだ。 全能法オーリックといって神の使う魔法みたいなもんだな」


「「「 ………… 」」」


 3人は考え込んだ。

 

「で、でもよぉ。お前が全能神としてだな。どうして俺のパーティーに入ったんだよ?」


 そうなんだよな。

 その理由が必要なんだ。


 一応、適当だが考えておいた。


「選ばれたのさ」


「え、選ばれたぁ?」


「魔法剣士カイのパーティーは全能神に選ばれたのさ」


 そういうことにしておこう。


「な、なんで?」


「素質があるからさ。この世界で頂点に君臨するな」

 

 ま、そんなもんは1ミリも存在しない。

 お前らにあるのは人を虐めた罪だけさ。


「うは! じゃあ、全能神が俺の仲間かよ!! こりゃいいや!!」


 いや。

 実質、お前たちは俺の家来だ。

 虐められた分はキッチリ支払ってもらう。

 アイゴットアフターの世界で利用してやるよ。

 

「じゃあ、魔王に会うってのは、俺に魔王を倒させて英雄にするのが目的かよ!?」


「そうだな」


 そういうことにしておこう。

 

「ヒャッホーー! 最高だぜぇええ!!」


「ただし、条件がある」


「条件?」


「俺の正体を誰かに喋ったり、全能神だとバレるような行動を取った場合……」


「と、取った場合なんだよ?」


 俺は凄まじい殺気を放った。






「命はないぞ」





 海城たちは凍りついた。

 さっきの一撃が効いているのだろう。

 瞬時に再生リカバーしなければデッド判定は確実である。


 追い討ちをかけるように念を押す。


「勿論、リスタートしてもすぐに殺しにいくからな」


「そ、そんな不正が許されるのかよ!!」


「許されるから全能神なんだ」


「うう……」


 そうそう。

 これも対策しておかないとな。


「ログアウト後の暴露も禁止する」


「どういうことだ?」


「ログアウト後にネットや口頭で俺の正体を公表することを禁じる」


「どうしてそんなことまでできんだよ!」


「それができるから全能神なんだよ。海城」


「な!? どうして俺の本名を知ってるんだ!?」


「お前だけじゃないぞ。郷田。玲本。3人の個人情報は全て押さえている。どんな高校に通い、どんな人間なのかもな」


「なんで私の名前まで知ってんのよ!?」 「俺の名前もどうして?」


「登録情報を読み取るなんて全能神にとって造作もないことなんだ」


「「「 ………… 」」」


「お前たちが秘密をバラせば俺もお前たちの秘密をバラす。3人の個人情報は全世界に拡散されることだろう」


「「「 ううう…… 」」」


 3人は汗を飛散させていた。

 海城は反撃をするように言った。


「シンジって名前……。日本人か?」


 おっと。

 正体を探りにきたか。

 こいつらは、俺の本名である小田の名前しか知らないはずだからな。

 シンジから人物の特定はできないだろうが、そこはとぼけておくか。


「シンジって日本人の名前なのかい?」


「…………」


「まぁ、不審なのはわかるよ。ならどうだろうか。互いの秘密は共有したまま、ここで別れるというのは?」


「別れる?」


「別に他の人間を英雄にしたっていいんだ。俺のは英雄を作ることだからな」


「任務だと……? あんた運営側の人間か??」


 ある程度、人物像を臭わせておく。

 これで仲間になる安心感が得られるはずだ。


「俺の正体は言えない。全能神がこのゲームに存在していることが知れたら大変だからな」


「なら、どうして英雄を作りたいんだ? あんたに得はあるのか?」


「あるさ。理由は言えないがね」


 お前たちを利用するのが目的なんだ。


「どうする? 俺を仲間にするのが嫌ならここで別れるが?」


「うーーん……」


 海城のことだ。

 自分の利益を第一に考えるだろう。


「断る理由……。ないよな。秘密さえ守ってりゃ、このゲームで一番になれるんだからさ」


「じゃあ、旅は続行でいいか?」


「ああ! 魔王城に行こうぜ! シンジ!」


 さん付け?


「呼び方が変わったが?」


「え? だって、あんた年上だろ? 社会人なんだからさ」


 ほぉ。そうきたか。


「よろしくねシンジさん」

「よろしくお願いしますシンジさん」


 やれやれ。

 学校では、俺のことを、気持ち悪い認定していたのにな。

 そんな奴らに、さん付けで呼ばれるようになるとは予想外だ。


「このゲームって海外のメーカーだからさ。シンジさんて外人の可能性あんだよな。ゲーム内じゃ言語統一だからわかんないけどよ。ハハハ」

「アラブとかインドでシンジーとかありそうよね。キャハハ」

「シンって名前なら中国もあり得るな」


 ふふふ。

 まぁいいか。


 家来3人ゲットだ。


 俺たちは空を飛び、魔王城へと向かった。

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