第7話 全能神、ギルドに登録する

 俺はギルドで登録することになった。


 このギルドは、おそらくアイゴットの新作、アイゴットアフターの世界観で構成されているはずだ。


 さっき、周囲にいるみんなの情報を解析させてもらったからな。

 それを参考にして情報登録をしようか。


 他の者のレベルはほとんど30以下だった。

 どうやら、このゲームのカンストレベルは99が最高のようだ。


 そんな俺はレベル877。前作のアイゴットはカンストレベルが999なんだ。

 やり込み1500時間は伊達じゃない。

 こんな俺がギルドで登録したらたちまち大問題だろう。


 今は人間の素振りをしているからな。あまり目立つのは避けよう。

 このステータスはまずいよな。




名 前 ゼクスアラード。


種 別 全能神


レベル 877


体 力 92430


攻撃力 76422


敏 捷 48900


知 力 64800


防御力 87410


全能力 1000/1h






 そうなると、偽装が必要か。

 変装用の 全能法オーリックを使おうか。


  表面変化サーフィス


 俺のステータスはレベル15の賢者になった。





名 前 シンジ


職 業 賢者


レベル 15


体 力 90


攻撃力 70


敏 捷 30


知 力 348


防御力 20


魔力量 100





 

 レベルはギルド内での平均的なステータスに変更した。

 これなら問題ないだろう。 


 ギルドで受付をする。


「レベル15の賢者。シンジさんを登録しました」


 と、受付嬢が笑顔で答えた。

 

 俺の情報が掲示板に貼られると、みんなは興味深々である。

 いつの間にか俺の周りには人だかりができていた。


「なぁ、俺らのパーティーに入らないか?」

「私のパーティーに入りなよ」

「僕の仲間にならないか?」


 これなら沢山情報が手に入りそうだ。


「俺は魔王に会いたいんだ。居場所を知っているパーティーに入るよ」


 そう言うと、みんなはそそくさと離れて行った。

 1人の冒険者が唾を吐くように言う。


「デッドを知らない初心者かよ」


 デッドとはなんだろう?


「なぁ、それどう言う意味だ?」


「あんたよくそれでレベル15まで上がったな。1度もデッドしたことがないんだな」


「だから、どういう意味なんだって?」


「さっきのタンザットを見ただろう? 即死ダメージを受けたらデッドするんだ。強制退場だよ」


「またログインし直せばいいじゃないか」


「始まりの塔からになるんだぞ。そんなことも知らないのかよ」


 始まりの塔……。

 そこがアイゴットアフターのスタート地点なのかな?


「しかも、取得したアイテムと金はゼロになるんだ。どれだけレアなアイテムを持っていてもゼロになるんだからな」


 ああ、それは嫌だな。


「だから魔王になんか会いに行くのは無謀なんだよ」


「そんなに魔王は強いのか?」


「レベル30は必要さ。とても俺たちじゃ無理だよ。魔王城に行く前にデッドされておしまいさ」


 そう言って男は去って行った。


 やれやれ

 暗礁に乗り上げたな。

 デッドを恐れて魔王に挑む者はいないのか。


「ハハハーー! 魔王と会いたいとは笑わせる!!」 


 それは酒場の中央の席に座っているパーティーだった。

 豪華な装備を見に纏い、いかにも強そうな雰囲気である。


 赤毛の男はニヤニヤと笑いながら俺を蔑んだ目で見ていた。


 こいつなら知ってそうだ。


「魔王に会いたいんだ。会う方法がわかるなら教えてくれ」


「フン……。お前はバカか? タンザットを偶然倒した程度でいい気になるなよ。魔王の力は恐ろしいのだ」


「おお、知っているのか!」


 だったら話は早い。


「俺を仲間に入れてくれ」


「ハハハ! レベル15が何を強気に言っているんだ。俺を誰だと思っている!?」


 そう言われても初対面だしな。

 ステータスはどれほどなんだ?




名 前 カイ


職 業 魔法剣士


レベル 33


体 力 380


攻撃力 520


敏 捷 460


知 力 580


防御力 120


魔 力 400





 ほぉ。

 結構強いんだな。


「魔法剣士のカイか」


「ふん。どうやら俺の顔を見て気がついたようだな。俺はこの界隈では最強さ。そんな俺でも魔王はまだ倒せていないんだぞ」


「挑戦はしたのか?」


「魔王城まではな。しかし、周囲はAランクの魔物がウジャウジャいる。とても中までは入れないさ」

  

「居場所さえわかれば十分さ。仲間にしてくれ」


「フン! 口の利き方に気をつけろよ。貴様レベルで俺のパーティーに入れると思うな」


 やれやれ。

 レベル30くらいにしておけば良かったな。

 今から変更するわけにもいかないしな。


 カイトはニヤニヤと笑った。


「とはいえ。さきほど、タンザットをデッドした力は中々だったな。チャンスをやろう」


「へぇ……。気前がいいんだな」




〜〜カイ視点〜〜


 この野郎。

 妙に自信があるな。

 あのタンザットを吹っ飛ばした力は不気味だぜ。

 

 レベル15の賢者であんなパワーがあるものなのか?


 なんにせよ、強そうな新人はここいらでわからせる必要がある。

 この王都ロントモアーズでは俺様がナンバーワンなんだよ。


 圧倒的にぶちのめしてやりたいが、レベルの差がありすぎるからな。

 正当な戦いでは単なる弱い者イジメになってしまうだろう。


 それでは俺の武勇伝が広まらない。

 ここは一つ、公平を装うのが重要だ。


「腕相撲で勝負。というのはどうだ?」


 俺の提案に、シンジは眉を上げた。


「勝ったら仲間にしてくれるのか?」


 チッ!

 自信満々かよ。


「ああ。勝ったらな……」


「わかった。じゃあ、やろう」


 ったく。

 この野郎の妙な自信は一々腹が立つな。


 ギルド情報ではレベルの開示しかないからな。

 一体どれほどのステータスなんだ?


 このゲームは固有スキルがない限り相手のステータスは見れない。

 しかし、俺は持っているんだよな。

 相手のステータスを見ることができる鑑定眼のスキルをな。ククク。


 どぉれ。

 お前のステータスがどれほどのものかよぉく見てやる。




名 前 シンジ


職 業 賢者


レベル 15


体 力 90


攻撃力 70


敏 捷 30


知 力 348


防御力 20


魔力量 100




 プフーー!

 激弱じゃねぇか!


 本当にレベル15の賢者だな。


 力は攻撃力に依存するから、俺の勝利は圧倒的だぞ。


 奴の自信は無知から来るものだったのか!

 単なるバカだ!

 タンザットを倒したのは単なる偶然か。


 俺の攻撃力は520。

 奴の攻撃力は、たったの70だ。


 ククク。

 腕相撲であれ、即死ダメージを与えればデッド確定なんだよ。


 地獄に送ってやるよシンジィイイイ。

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