第5話 全能神は呪われていました
俺は気がつくとベッドで寝ていた。
大勢の幼女らが俺を取り囲む。
「あ! お兄ちゃんの目が覚めた。お姉ちゃーーん!」
1億年も寝て、更に寝てしまうなんてどういうことだ?
「1時間くらい寝てたよ」
と女児が言う。
ふむ。
1時間の睡魔か。
どうもおかしいな。
手の平を見ると稲妻の痣が光っていた。
この真っ黒い痣は魔神シバを倒した時に受けた闇の力だ。
もしかしてこの影響か?
「ステータスオープン」
その言葉に連動して、俺のステータスが空中に浮かび上がる。
何かおかしな所はないか?
名 前 ゼクスアラード。
種 別 全能神
レベル 877
体 力 92430
攻撃力 76422
敏 捷 48900
知 力 64800
防御力 87410
全能力 1000/1h
全能力が随分と低い。
以前は6万を超えていたはずだ。
この横の1hとはなんだ?
「「「 お兄ちゃん大丈夫? 」」」
と、幼女らがキラキラした目で俺を見つめていた。
この状況で考察するのは難しいな。
よし。
俺は手に力を集中させて、周囲の塵を集めた。
「
それは小鳥の姿となって空を飛んだ。
「「「 うわぁ! 鳥だぁああ!! 」」」
「ほら。飛んで行くから捕まえてみなよ」
「「「 わは! 待て待てーー!! 」」」
子供たちは小鳥を追いかけて部屋を出て行った。
なるほど。
これで理解できた。
全能力 990/1h
力が10減っているな。
つまり、1hは1時間。
1時間に1000の全能力しか使えないんだ。
俺がサリィナと出会ってから、オークを倒し、自分の服を作り、子供たちと遊んだ。
その時は眠くならなかったから、まだ全能力はあったんだ。
孤児院を造り直した直後に眠気がきた。
つまり、消費の大きな
やれやれ。
魔神の呪いか……。
シバの奴め、大きな土産を作ってくれたもんだな。
「お兄ちゃん。サリィナお姉ちゃんは街に買い物に行ってるみたいだよ。しばらく帰って来ないんだって」
そうか、なら天空を見てみよう。
天界に行けば何かわかるかもしれない。
俺は窓から空に向かって飛んだ。
ギュウウウウウウウウウウウンッ!!
「うわ! お兄ちゃんが空飛んだ!!」
「うはぁああ!! 凄い凄い!!」
瞬く間に雲の上へと到達する。
「何もない……。天界が消えている」
1億年の間に大きく変わってしまったな。
俺の時代には、俺が創った天界と、魔神シバが創った魔界があったんだ。
「魔界すらないということは……」
神々の戦いは終結したのか……。
この世が闇に覆われていないところを見ると、やはり、俺の軍勢が勝ったのだろう。
それは間違いないが、俺の体の呪いといい、人間の存在といい、わからないことが多すぎるな。
こうなれば、地上をもう少し探るしかないか。
孤児院に戻ろう。
戻るやいなや、俺は女児たちにもみくちゃにされた。
孤児院を直し、空を飛んだ俺のことを、凄い人、だと思っているらしい。
「「「 お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん! 」」」
しばらくすると、サリィナが街から帰ってきた。
「一体、なんの騒ぎ……でぇえええッ!?」
そこには可愛い服を着た幼女たちがいた。
「そ、その可愛い服はどうしたの!?」
「「「 お兄ちゃんに作ってもらったのーー! 」」」
「シンジさんは病み上がりなんです!! 無茶させちゃいけません!!」
「気にするなよ」
服くらいの
「なんなら君の服も作ってあげようか?」
「わ、私は結構です。そんなことより、シンジさんの体は大丈夫なんですか!?」
「ああ、ちょっと孤児院を造り直した時にな。力を使いすぎたようだ」
「無理させてしまって申し訳ありません!」
「いや、気にしないでくれ」
これはあくまでも一時的なものにすぎんからな。
シバの呪いを解けば、以前の全能力に戻るんだ。
それに1時間休憩すれば1000に回復するようだしな。
しばらくは、使える全能力を調整しながら生活するとしようか。
「シンジさんは名のある賢者なのでしょうか?」
賢者といえば、様々なゲームに出てくる職業だな。
攻撃魔法と回復魔法を使う、基本スペックの高い職業だ。
しかし、このアイゴットの世界観にそんな職業は存在しない。
そもそも魔法なんて存在しないからな。
俺が使っているのは全能力を元とした
「オークを倒した魔法といい、この教会を造り直した魔法といい、凄い賢者なのは直ぐにわかりました」
「俺は……。そんなんじゃないんだけどな」
「でも、凄い魔法を使っていましたよ?」
「あれは
「おーりっく? 聞いたことのない力ですね?」
やはりか。
1億年後の世界に
なぜだか魔法が根付いているんだ。
魔神シバの力が魔力。その加護を受けるのが魔法だ。
俺の力は、全能力。その加護を受けるのが
これがアイゴット独自の世界観なんだよな。
そのオーラは白だ。
対する魔法は外部の力。魔神シバから魔法が受け継がれていく。
オーラは黒。
しかし、こんな話を人間が理解できるとも思えんな。
「実は隠していたけど賢者なんだ。俺」
そういうことにしておこう。
「子供たちの服も魔法で作ったんですね!」
「ま、まぁね」
「そうですか。本当に凄い魔法ですね!」
不思議だな。魔法がある世界……。
そういえば、オークがいたな。魔族は魔神の子供たちだ。
どうにも解せん。
オークは魔王がいると言っていたな。
確か、魔王グフター。
そいつに会えば何かわかるかもしれない。
「なぁ、魔王グフターに会うにはどうしたらいいのかな?」
「ま、魔王に会いたいのですか? お、恐ろしいです。どこにいるかもわかりませんよ」
「そうか……。何か手がかりがあればいいんだがな」
「冒険者ギルドに行けば、そう言った情報は得られるかもしれませんね」
「ギルドがあるのか!」
ファンタジーゲームと同じ世界観だな。
ギルドには冒険者が大勢いる。
これは情報の宝庫だな。
「今日はもう遅いですし。明日、街に行かれてはどうでしょうか? 今日は泊まっていってください」
「ああ。そうさせてもらうよ」
「「「 お兄ちゃんと一緒に寝るーーーー! 」」」
明日はギルド。楽しみだな。
「あ、そうだ」
と、俺はサリィナの服を
レースやリボンをあしらう、ミニスカートの女の子らしい服である。
「こ、これは……!?」
「嫌だった? 似合いそうな服を作ってみたんだけど」
ニーハイとミニスカート。
完全に俺の好みだけどな。
ボロボロの服よりこっちの方がいいんだ。
「で、でも……。こんな可愛い服……」
「嫌かい?」
「そんなことありません。ただ、申し訳なくて……」
「泊めてもらうしね。そのお礼だよ」
「お礼が過ぎます!!」
「気に入ってくれたなら良かったよ。それで街に行こう」
「で、では遠慮なくいただきますね。ありがとうございます! 明日が楽しみです!」
サリィナはそう言って鏡の前に立った。
「ねぇねぇ、お兄ちゃん。サリィナお姉ちゃん、ずっと鏡の前で服を見てるよ。あんなお姉ちゃん見るの初めて」
ふふふ。
「そっとしておいてあげよう」
彼女は角度を変えて、何度も自分の姿を確かめるのだった。
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