第4話 全能神、幼女だらけの孤児院に行く
「ここです。私の家」
とサリィナが言う。
そこは大きな教会だった。
それにしては……。
「ボロボロですよね……。こんな所ですいません」
壁は剥がれ、あちこちに穴が開いている。
大聖堂には甲冑に身を包んだ少年の像が祀られていた。
毎日磨かれているのだろう。家屋の痛みとは裏腹に妙に綺麗だ。
あれは、多分俺だな……。
教会の横には更にボロボロな宿舎があった。
門前の壁には看板が掛けられているのだが、苔まみれで文字がはっきりと見えにくい。
そこには、
【サリィナの孤児院】
と書かれていた。
「一応、孤児院の経営をしているんです」
「一応?」
「収入源がないんです。だから経営というのは難しくて」
「ほぉ……。それは大変だな。国からの援助は出ないのかい?」
「ええ。民間経営ですから。孤児から貰うわけにはいきませんからね。お金を払ってくれる人はいないんですよ」
じゃあ、実質、奉仕活動じゃないか。
「あはは。湿っぽい話になってしまいましたね。忘れてください。急いで料理を作りますのでゆっくりしててくださいね」
優しい子なんだなぁ……。
そこには20人の子供がいた。
サリィナより背の小さな女の子ばかりだ。
「男の人だぁあああ!!」
「わぁああ! サリィナお姉ちゃんが彼氏を連れて来たわよーー!!」
「彼氏、彼氏ーー!!」
サリィナは真っ赤な顔になって怒った。
「か、彼氏じゃありません!! 命の恩人です!!」
うーーむ。
みんな小さいな。
10歳未満といったところか。
残念ながら俺にはロリ属性はないんだよな。
さしずめ全員孤児なのだろう。
「「「 じぃーーーーーーー 」」」
と、全員が俺を睨みつける。
なんだかアウェイだな。
子供となんか遊んだことはないが……。
「よし、一緒に遊ぶか」
幼女らは更に目を細めた。
「何して遊ぶの?」
しばらくして、サリィナが俺を呼んだ。
「シンジさん。料理の用意ができま……」
「「「 アハハハ! お兄ちゃんもっともっとぉおお!! 」」」
幼女らは宙に浮いていた。
お手玉のようにクルクルと回転する。
全能力を使えば幼女らを宙に浮かすことは造作もないんだ。
サリィナは眉を上げた。
「凄い……。もう仲良くなってる」
コミュ症の俺が、こんなに人馴れしているのは全能神の力があるからだ。
圧倒的力は、安定した自信に繋がり人を惹きつける。最高と言わざるを得んな。
食堂で、サリィナの料理を食べることになった。
幼女らは俺の隣りの席をめぐって喧嘩をしたのだが、俺が仲裁に入ってなんとか治めることに成功した。
いい匂いだ。
テーブルにはシチューとパンが並ぶ。
俺が創った天界では豪華な食事を食べていたからな。
それに比べたら貧相な料理だが、子供たちの反応を見る限り、相当な昼飯なのだろう。
幼女らの目はキラキラと輝いている。今にもヨダレが溢れそうだ。
以前は味覚がなかったからな。いくら豪華な食事でも気分しか満喫できなかった。
今日からはリアルな食事が食えるぞ。
ふふふ。さて、どんな味だ?
シチューを掬って口に入れる。
「おお! 美味い!」
キノコと鶏肉、他にもたくさんの野菜の旨味が詰まっているぞ。
スープのベースは牛乳だろうか? クリームが濃い。
現実世界でも食べたことがないほど美味いな。
この黒いパンはどうだろう?
「か、硬い……」
フランスパンみたいに硬いな。
味は悪くないが、安いパンって感じだ。
と、周りを見ると、みんなは手を組んで黙祷していた。
サリィナの言葉が響く。
「全能神ゼクスアラードの加護の元。この食材を与えてくれたことに感謝いたします」
いや。
その全能神はここにいるんだってば。
祈りの言葉が終わると、幼女らはワイワイと楽しそうに食事を始めた。
俺の隣りにいる幼女が耳元で囁く。
「お兄ちゃん、お祈りが終わる前に食べちゃったでしょ? そういうのダメなんだよ。クスクス」
やれやれだな。
食事が終わると、子供たちは遊び始めた。
基本は勉強をしているようで、今はお昼休みらしい。
「ジジ、ルル! そこは床が抜けているから遊んじゃダメよ!」
と、サリィナが注意する。
孤児院はボロボロだからな。
「どこで寝泊まりしてるんだ?」
「孤児院は最近雨漏りが酷くて……。教会の大聖堂でみんなで雑魚寝をしています」
ほぉ。
それは難儀だな。
「よし。直してやろう」
サリィナは大喜び。
急いでハンマーと釘を持ってきた。
「女の私では中々難しくて困っていたのです」
「ああ。そういうのいらないよ」
「え? しかし、雨漏りはこれで直すのでは?」
俺はみんなを孤児院から出した。
「何するのお兄ちゃん?」
幼女たちが首を傾げる。
「見てのお楽しみさ」
俺が両手を上げると、孤児院は光に包まれた。
木材を分解して再構築してやろう。
「
孤児院はバラバラになったかと思うと、瞬く間に綺麗な建物へと生まれ変わった。
「「「 うわぁあああ!! お兄ちゃん凄い!! 」」」
幼女たちは大はしゃぎ。
さっき、サリィナが床が抜けると言っていた場所で飛び跳ねて喜ぶ。
全てが、丈夫で綺麗な状態になっているのだ。
「お姉ちゃん! 部屋が沢山あるよ!」
「この部屋、綺麗なベッドがある!」
それに、ただ改築するだけじゃ面白味がないからな。
増築もして部屋を増やした。30人分くらい部屋を増やしたからな。彼女らが一人部屋にしたっていいんだ。
「す、凄い……」
と、サリィナは汗を垂らす。
「あ、ありがとうございます! こ、こんなことやっていただけるなんて、なんてお礼を言ったらいいか」
「え? ああ、別にそんな大したことじゃないよ」
「本当にありがとうございます!」
「ああ、食事のお礼だから気にしないでくれ」
「お礼が凄過ぎます!!」
ふむ。
喜んでくれて何よりだ……。
って、あれ?
眠い。
猛烈に眠いぞ。
急に睡魔が襲って来た。
「サリィ……ナ……」
「え、あ。ちょっとエエトさん!?」
ドサ……。
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